師匠との囲碁対局。    14,08,10

   6月以来2か月ぶりに師匠との対局をした。私も師匠も他に相手がいないので腕を撫し
  て対局を待ち望んでいるのだが、何せご夫婦が高齢なので毎月やろうと決めていても、
  なかなか決めたようにはいかないのがじれったい。対局をして夕食を共にして歓談する
  のが楽しみで、毎月お互いの家を訪問しようと決めているのだが、この所拙宅にお呼び
  して歓待することが多い。昼過ぎに私が車で逗子のお宅にご夫婦を迎えに行き、帰りは
  タクシーでお帰り頂いている。

   手合いは私の常先(常に先番)。常先になってからこれまで1勝1敗と伯仲している。
  しかも1局目が私の1目勝ちで2局目が2目敗けだから全くの五分といっていい。

   ”碁仇は 憎さも憎し 懐かしし” とは落語の”笠碁”にも登場する古川柳だが、あちら
  はヘボ碁、私と師匠は一応の打ち手なのでヘボ碁ではないが、1日千秋の思いで対局
  を心待ちにする気持ちはヘボ碁の碁仇と全く変わりはない。

   囲碁はやったことのある人でないとその魅力は判らない。そして年齢が相応になれば
  なるほど、そして上手は上手なりに、ヘボはヘボなりにその魔力に取りつかれる。

   囲碁の好きな人は認知症になりにくいとか、仮に認知症になっても囲碁だけは打てる、
  とよく聞くが真偽の程は医者に確かめてはいない。多分私も孤独死が近づいた時にな
  っても囲碁の本や新聞の囲碁欄やテレビの囲碁番組を独りで見続けることだろう。
  そしてあれこれ次の一手を考えながら夢うつつの中で臨終を迎えたらこんな幸せはな
  かろうと思うのである。

   さて92翁との先番3局目の対戦だが、終始私の有利な形勢のまま中・終盤に突入し、
  最後に私に緩着がでて形勢俄かに混沌となり、終局して数えてみたら結局ジゴ(引き分
  け)となった。これで常先で1勝1敗1ジゴの全くのイーブンとなった。3時間半の熱戦を
  終えて心地よい疲れをビールで癒し、私の手製のトンカツと米ナスの田楽味噌和えを
  美味い美味いとペロリと完食された。囲碁の冴えもさることながら、92翁の旺盛な食欲
  にはいつも驚かされる。

   92歳の誕生祝に、小松秀樹9段監修の「至高の決断」という囲碁の本を贈呈したら、
  大変喜ばれて、「まだ92歳だからこれから猛勉強して1目は強くなるよ!」 と本を愛お
  しげに抱えて帰宅された。また、テレビのCS番組の”囲碁チャンネル”に興味を持って
  私が後日スカパーテレビの契約のお手伝いをすることになった。

   老いてますます囲碁の上達に意欲を見せる92翁である。