久し振りの囲碁対局。  12,11,27

    近頃の生活パターンはゴルフはめっきり激減したが趣味の釣りを少々と、家庭内で
   ちまちました雑事をしたり、興に任せて何か料理してみたり、毎週遊びに来る孫の成
   長に目を細めたり、もっぱら家庭内中心の生活になっている。

    たまに会社時代のイベントがあって参加可否の出欠通知が来るが、昔話や近況を
   話したり聞くことに少々嫌悪感があるのと、煩わしい人間関係を避けたい気持ちから、
   ほとんど欠席の返事を出している。昔、若い時に小中学校の同窓会に、いつも「何を
   いまさら・・」との思いから欠席の返事を出していた時とまるで同じ心境である。

    今は退任した10年前から新しくできた友人たちと「肩書無用」の屈託のない話をし
   たり、あちこち歩き回るほうが何とも楽しい。昔ある人に「新しい友が1人出来ると、
   古い友を1人失っている。人間なんて所詮そんなものだよ。」と聞かされたことがある
   が、私にとってもどうも真実らしい。それでも何年経っても交友が続いているのが真
   の友なのかもしれない。

    友というにはふさわしくないが逗子に住んでいる家内の伯父のKさん(90翁)は50
   年以上も前から続いている囲碁の好敵手(?)で、お互いに相手の力量を熟知して
   いるからいつも熱戦となるが、囲碁の品格が素晴らしいので、対局後も実に爽やか
   な気分になる得難い人生の大先輩だ。対局後の余韻冷めやらぬ熱燗一本も、欠か
   せぬ我々の恒例の作法となっている。

    昨日御夫婦と令嬢2人を我が家にお招きして食事を共にしたが、我々は別室にし
   つらえた対局場で今年2度目の対局をした。ご高齢とはいえ7段の実力者だし対局
   態度が凛としているので自然にこちらも威儀を正すことになる。

   手合いは私の定先。3番手直りが決め事だが、50年来私が白石を持ったためしは
   ない。しかし今日は特別な意味のある日で、今日勝てば待望久しい互先に昇格して
   私が白石を持つことが出来る。つまり昇段試験のようなものである。

    局面は思いがけず序盤から有利に展開してついに2時間後幸運にも私の勝利に
   終わった。待望久しい互先への昇格が決まった。ご高齢とあってさすがに往年の冴
   えが見られなかったのが淋しいが、まだまだ鋭い着手と大局観は衰えを知らない。

   来年4月には御年91歳になられるが、いつまでもご壮健で囲碁のご指導と豊かな
   人生観をお聞かせ頂き、局後の熱燗を酌み交わして頂きたいとお願い申し上げた。
   年明けには逗子にお邪魔して待望の互先対局をすることに決まった。楽しみである。

    来宅の土産に最近脱稿したというご尊父の「洗心余滴」と題する遺稿集の第2分
   冊第1集と第2集の2冊を頂いた。以前、第1分冊「ざれごと」と題した遺稿集を頂き、
   熟読してその知識力と記憶力、加えて筆力に驚嘆したが、その続編となる80歳か
   ら90歳までの99章に及ぶ随筆集で、当時の日本医事新報に連載されて好評だっ
   たものの復刻版である。

    古今東西の豊富な話題満載で、漢文の素養がないと理解できない所が多々あっ
   て読み解くのに苦労をするが、これでまた夜の読書の楽しみが増えたというものだ。
   この遺稿集「洗心余滴」の読後感は後日紹介することにしよう。