久しぶりの囲碁3連投。       11,10,12

    めっきり囲碁の実戦対局が減少していてテレビや新聞で鑑賞するのが最近の囲碁との触れ合いだが、
   最近立て続けに3日間連続して囲碁の対局をする機会が訪れた。逗子に住む90歳の義理の叔父との
   今年2度目の対局、平塚1000面打ち大会に参加したプロ棋士との指導対局、伊豆長岡に1泊ゴルフ
   に出かけた夜の仲間との親睦囲碁、の3局である。

     @90翁との対局。

    逗子に住む叔父のKさん宅を訪問して囲碁を打つ楽しみは4つある。ひとつは、Kさんはアマ6段の強
   豪で老いたりといえども私より数段上の実力は衰えを知らない。加えて棋風は品格があって春風駘蕩、
   決して棋理に反した品のない着手などは打たない正統派なので勝っても負けても清々しい気分になる。

    第2は所有しておられる家宝の碁盤と碁石が実に素晴らしい逸品で、この盤面に向かって正座すると
   自然に気持ちが引き締まり、碁盤に恥じない碁を打とうと自然に思うのか雑念を払って対局できること。

    第3にお互いに一応の高段者なので互先の好敵手などはめったにいないし、対局者に恵まれない最
   近の二人なので、お会いして腕を競うのを楽しみにしていること。第4は対局後の楽しい感想戦と日本
   酒のご馳走である。10月8日、Kさん邸を訪問し今年2度目の対局をした。私の黒番、最後まで勝敗の
   帰趨が判然としない好局で結局私の一目負け。感想戦は1時間以上に及ぶ楽しいひと時だった。

     A平塚囲碁1000面打ち。

    10月9日は平塚囲碁1000面打ち大会。毎年このイベントに参加してプロの指導を受けている。葉山
   の釣友会のS会長はこの大会が気に入って去年から私と同行して参加している。平塚市は故木谷実9
   段の木谷道場があった場所で、若いころにこの道場で修行した今を時めく日本棋院、関西棋院の著名
   な一流棋士が50人以上も参加して、この日を楽しみにして来場した全国の囲碁ファンと指導対局をして
   くれる。

    私は桐本和男6段に4子で指導して貰い中押し勝ちを収めることができた。先生には「手合い違いで
   した。」とお褒めの言葉をいただいた。自分で言うのもおかしいが私の会心の出来栄えだった。昨日の
   叔父との格調高い対局の余韻が残っていたためなのであろうか。

      B親会社T社の好敵手Kさんとの伊豆長岡の宿での対局。

     Kさんは現在トヨタ系のトラックを作っているH社の相談役だが、私の現役時代から囲碁の好敵手で
    ある。もっとも私に2子置いてもなかなか勝てないので、好敵手というより私が先生格というほうが正しい。
    同業者の4人で「だるま会」を作って15年ほど毎年ゴルフを楽しんでいたが、ここ数年は中断していて
    今年久しぶりに伊豆長岡で再会し親睦を楽しむことにした。

     10月10日、年金生活者なのでかってのような贅沢な費用はかけられない。質素を旨として友人の
    高校時代の野球部の後輩が経営する長岡温泉の旅館「南山荘」を宿にした。ところがこの宿は敷地
    数千坪もあり、部屋数30室以上もある明治以来100年を超す老舗の旅館だった。明治の文豪たち
    がこぞって宿泊したこの旅館は離れの部屋が裏山から長い廊下でつながり、松などの庭木や池が
    見事に配置されていて、部屋の欄間や障子や床の間は現在ではめったに見ることのできない貴重
    な細工が施されていた。

     開業100年を超すのでさすがに老朽化が進んでいたがそれがかえって趣を醸し出していた。ふん
    だんに湧き出る伊豆の名湯を楽しみ、素泊まりで5千円は驚くほどの割安感だ。夕食は友人の後輩
    の手配した近くのすし屋で伊豆の新鮮な魚と寿司を堪能して秋の夜長の熱燗を楽しんだ。運動部の
    先・後輩は実に礼儀正しい。

      さて肝腎のKさんとの対局。彼は中部棋院の羽根泰正・直樹9段親子や小松秀樹9段夫妻、東京
    本院の梅沢由香里女流6段など沢山のプロ棋士と懇意にしていて指導碁を受けている。数年ぶりの
    Kさんとの対局なので相当腕を上げているはずだ。2子では到底勝てないだろうが過去の経緯もある
    ので完敗覚悟で2子を置かせた。

     残念ながら彼の悪癖はまだ残っていて自分の石の危険にあまり気が付かない。相手の石を攻めた
    がる。相手の陣地が大きく見える「やきもち」が強すぎる。つまり棋風はなかなか変えられないようで
    2局打って2局とも結局は自分の石が死んでしまって私の勝ちに終わってしまった。まだまだ上達した
    とは言えないのが惜しまれた。プロの先生たちは何故少し厳しく弱点を指摘しないのだろう。Kさんの
    ご機嫌をとって褒め殺しをしているのだろうか。それがプロ棋士の指導スタイルだとしたらそれは完璧
    に指導方法を間違っている。

     ところでKさんは翌日のゴルフではまるで人が変わったように豪快なショットを連発してシングルの
    腕前を発揮し、40、42、で廻って腕が衰えていないことを見せつけた。沢山のチョコを分捕って我々
    を生け贄にした。囲碁が上手でも一文の得にもならないが、ゴルフが上手だと懐が温かくなることを
    見事に証明してご機嫌であった。次回までには囲碁の腕を上げてもらいたいと、少し悔し紛れに憎ま
    れ口の反撃をしたがどうも馬耳東風、聞かぬふりで話題を変えられてしまった。仲のいい4人なので
    再会を約束して解散した。

    突然の3日間の囲碁連投で忘れていた囲碁の魅力を思い出した。今度はいつ機会が来るのだろう。