横浜今昔、旧跡巡り。   15,05,14

   学生時代の4年間を過ごした横浜だが、古い建物や旧跡などにはあまり関心がなかった
  ので詳しい事は知らない。時々由緒ある古いホテルのバーのカウンターでバーテンから横
  浜の昔話を聞いて相槌を打ったり、野毛の居酒屋の同年輩の親父と昔話に興じるくらいで
  ある。

   しかし横浜は明治維新で開港後、居留民が住み着いたこともあっていち早く文明開化の
  時流に乗り、レンガ造りの洋館が立ち並び、時代の最先端をゆく近代都市になっていった。
  その名残の建物や遺跡は数多く残っていて探索すると興味が尽きない。

   文化財研究会の仲間達10人ほどで横浜の中区に絞って建造物の歴史をたどることに
  した。最後に県立歴史博物館で開催されている「中世東国の茶ー武家の都鎌倉における
  茶の文化」展を見物することにした。

   夏日を思わせる30度に近い気温の中、ほぼ5時間ほど市内を歩き回ったので疲れ果て
  てしまった。いくら最近足に自信が出来たといっても喜寿を過ぎた老人には少々無理な行
  軍だった。

   訪ね歩いた行程を順に記すと、

    1、神奈川県庁(キングの塔)屋上。    11、岡倉天心生誕の地。
    2、日米和親条約締結の地、        12、横浜郵便発祥の地。
    3、横浜税関(クィーンの塔)、        13、アイスクリーム発祥の地、
    4、神奈川運上所跡。            14、ハマの街灯(電気)点火の地。
    5、外国郵便創業の地、           15、牛馬飲水槽。
    6、電話交換創始の地、           16、日本で最初のガス灯、設置の地。
    7、旧居留地消防隊の遺構、        17、写真の開祖・下岡蓮丈生誕地。
    8、ホテル発祥の地、            18、旧横浜正金銀行本館跡。
    9、電信創業の地、                   (現神奈川県立歴史博物館) 
    10、横浜町会所跡              19、鉄道創業の地、開業当時の横浜駅跡。
     (現横浜市開港記念館 ジャックの塔)、、

  の19カ所。これらの近代建築や先進技術の殆どは、維新後明治4〜5年頃までに導入
  されたもので、長い鎖国から目覚めた日本人の逞しい欧米技術の吸収熱意と実行力に
  は改めて驚かされる。彼等は皆進取の精神に富み「坂の上の雲」を見ていたに違いない。

   中区は県庁など横浜の行政の中心で、馬車道、日本大通り、山下公園、中華街などの
  繁華街にはまだまだ多くの開国当初の名残の建物が残っている。とても一日では廻り切
  れない。どこへ行っても見逃せない建物や遺跡ばかりだ。おしゃれで異国情緒のある横
  浜だが、奥深い歴史の町でもある。

   昼食は馬車道にある広東料理の店生香園。昨年死去したテレビで有名な料理人周富
  徳さんの弟の周富輝さんが経営している店で人気メニューは麻婆豆腐。四川料理では
  ないから辛さは日本人向きに出来ている。

   昼食後、県博で「東国の茶」展に行き、依頼していた解説員から学術的な説明を聞き、
  最後に桜木町駅に行った。

   日本で初めて鉄道が走った新橋〜横浜間の横浜駅があった場所を記す記念碑があっ
  た。すぐそばの舗装道路の目立たない一角に道路元標のような小さなレリーフが埋め込
  まれていた。五街道の起点を示す日本橋の道路元標が有名だが、横浜にも隠れた道路
  元標があった。

   学生時代にはどこに行くにも桜木町駅が出発点だった。桜木町駅の今昔、昭和30年代
  の平屋の駅舎の写真が飾ってあった。懐かしく見入った。もうこの付近には当時の面影は
  微塵もない。桜木町駅が終点だったなどもう知る人も少ない。昭和も遠くなりにけりである。