ミミズの戯言88、デフォルト(国家破滅) ![]() ついに日本の借金が1,000兆円を超えた!! 具体的には、国債や政府短期証券を合わせた「国の借金」の残高が、政府予算案では20 17年度末に1098兆円に達する。借金のうち財政投融資の原資となる財投債や繰り延べ債 も含む国債の残高は980兆円で過去最高となる見込み。 これは名目国内総生産(GDP)の2倍強に匹敵し、国民1人当たりでは約829万円になる。 借金は毎年10兆円も増大し続けている。 国債残高980兆円の保有者の内訳は、民間銀行が44,1%、日銀42,2%、海外6,1% 社会 保障基金4,8%だから海外依存度は低く、日銀はじめ国内の金融機関がほぼ94%を保有し ている。健全といえば健全である。 日銀の保有比率が2014年の保有比率18,7%から42%と20%以上も増加し、逆に民間銀行 は2014年の65,2%から44%と20%以上も減少している。国債の受け皿が近年日銀に集中し ているのが見て取れる。かって禁じ手と言われた赤字国債発行の、政府・日銀もたれあいの 構図が顕著になっている。 くだけた例えで表現すれば、「日本家の家計には980万円の借金(負債)があります。しかし ご近所さんから借りているのは60万円だけです。後は同居しているおじいちゃんや、自宅か ら職場に通っている息子たちから借りています」となる。 そして「日本家全体の」借金(負債)は、おじいちゃんや息子たちの立場から見れば「それぞ れの債権(資産)」 に他ならない。 日本政府が発行した国債のうち94%は、日銀や国内の民間・地方自治体などのいわゆる 身内の資産でもある。身内の貸し借りだから、国債残高が増えてもギリシャのような現象 (債務不履行の危機)は起きないとされるゆえんである。 昨年末のHP「今年の重大ニュース」で紹介したように、来年度2018年度の国家予算が決 定したが、これによれば国債の新規発行額が34兆円、国債の償還額が23,兆円だから国の 国債残高は来年さらに11兆円増加する。PB(プライマリーバランス)の健全化は当分絶望的 である。 2014年10月に安倍首相は衆院予算委員会で「基礎的財政収支(PB)の赤字を、2015年度 に対GDP比で2010年度から半減させ、2020年度に黒字化を達成させる」という財政健全化 目標を立てたが、対GDP比は悪化の一途をたどり、PBの黒字化は見通しすら立っていない。 , 日本の労働人口が減少し借金が増加する。結果的には一人当たりの借金額829万円は 際限なく増え続ける。子孫にその解決策をゆだね、今を生きる我々は借金による社会保障 費の増加の恩恵にあずかり続ける。ネズミが破滅に向かって走り続けるように。これを無責 任な財政政策と指摘されて返す言葉があるはずもない。解決策もないまま核のゴミをたれ 流し続ける原子力政策と軌を一にする。 政府・財務省はプライマリーバランスの健全化を気にしながらも、選挙が近づくと景気の良 いバラマキ政策を唱えて選挙民を惑わすのだから、国の借金は減らない。選挙民は借金返 済の苦しさよりも、今日の米の飯を選択するのは道理である。消費税の増税分も結局借金 の返済よりも景気対策・社会保障に回ることになる。 先日NHKで日本の財政問題が議論されていた。国債依存度が高まるのは「財政の危機」 か「過剰な心配か」と、悲観論者と楽観論者の2人の論者がそれぞれ持論を展開していた。 楽観論者は、国債の発行額だけを比較して「国の借金云々、国民一人あたり云々」と言っ たり、「日本の財政はアルゼンチンやギリシャのようにデフォルト直前だ」と危機感を必要以 上にあおるのは、筋が少々異なる。と論じる。その根拠は前述のように、借金の貸し手は国 内の金融機関だからいわゆる国民一人一人の「資産」ということができるためである。要は 「危機意識を持つ必要はあるが、必要以上の動揺とそれに伴う誤判断は無意味どころか弊 害でしか無い」という。さらには、海外への貸出額が世界一という富裕国だし、いざとなれば 国民の個人資産が1700兆円もあるから財政破綻などはありえないという。 一方、悲観論者は増加し続ける国の借金は、いずれ返済(国債の償還)ができないいわ ゆる債務不履行・国家の破綻(デフォルト)を招くと警鐘を鳴らす。 最近読んだ小説、「オペレーションZ」(真山仁著 新潮社)は、財政再建のための衝撃的 な荒療治に着目した架空の小説である。 日本の大手生保の取り付け騒ぎから国債の投げ売りが始まり、ロシアが保有する30兆円 規模の日本国債を投げ売りするとのブラフが入った。国債の価格が暴落して世界中のヘッ ジファンドが日本国債を売り浴びせたら、わが国にはこれを買い支える余力はない。デフォ ルト(債務不履行→国家の破滅)の危機が迫る。 1000兆円を超える国債残高を抱える日本のデフォルト危機を回避するため、総理大臣は 「デフォルトを回避する道はただ一つ、日本の国家予算を半減することだ」と宣言する。 アルゼンチンがデフォルトに陥った時に見たブエノスアイレスの荒廃した光景を、若き日の 総理は片時も忘れたことはない。 直ちに財務省の選りすぐりのエリートを集めたプロジェクトチーム(オペレーションZ)を立ち 上げ、国民生活への大打撃を覚悟の上で、社会保障関連費と地方交付税交付金を0にす る破天荒な一般会計予算を立案遂行するというストーリーである。 ユニークな着想のこの小説は財政危機に敏感な悲観論者の立場に立つ。 一般的には、赤字国債を無くす財政の健全化のためには、成長による税収増・消費税増 税・歳出の削減の3つを「バランスよく進めることが不可欠」として、日本国民は将来の世代 のために消費税増税から逃げるべきではないと大方の専門家は提言する。 まさに優等生の論文だが、「バランス重視」とさらりと言うところがいかにも官僚的、学者的 と思えるのだが。・・・・ 、, 果たして諸兄は、借金返済による財政規律を重視し、老人介護や子供手当の縮小など 社会保障費を大幅に削減して、多少の国民生活の犠牲を覚悟する荒療治も止む無しとする ペシミスト派か? それとも景気浮揚による税収増を期待して、「多額の国債残高の懸念 無用」とする積極的なオプチミスト派か?あるいは中道を行く穏健派か? 小欄はそのいずれかを問う今年最初のミミズの戯言である。 |