ミミズの戯言86、平成の乱。 17,10,17

   今回の選挙戦を見ると「応仁の乱」ならぬ「平成の乱」と呼びたい政界の激震ぶりである。

  保元平治の乱、源平合戦、織田・豊臣・武田・今川の戦い、関ヶ原の戦いなど多くの歴史
  上の名高い乱や戦いのなかで、非常に判りにくいと思った争いが応仁の乱であった。

   「人よ虚しい応仁の乱」 
  応仁元年(1467年)に起きたこの応仁の乱は、「ヒトヨムナシイ」と、ごろ合わせで年号を覚
  えたものだ。室町8代将軍足利義政の後継争いが原因で、そこに細川勝元、山名宗全の
  勢力争いが絡んで、下剋上が頻繁に起き、室町幕府から戦国時代へと変わる節目になる
  乱世の戦いの連続だった。

   勝者が誰もいないし、何も生み出してはいないし、敵味方がころころ変わるし、11年間
  もだらだらと戦いが続き、挙句は主要な戦場となった京都全域が壊滅的な被害を受けて
  荒廃した。

   今回の選挙の大義・目的は何なのか、野党側の離合分散は何だったのか、敵と味方は
  判然としているのか、最後に笑うのは誰で、選挙後の合従連衡の姿はどうなるのかなど、
  平成の乱の結末は混沌として予想しにくい。まるで応仁の乱のようである。

   世論調査によれば自民圧勝の形勢になり、さしものどさくさの戦いもどうやら勝敗は決
  まった感がある。

   森友、加計学園疑惑隠し(これをモリ・カケ疑惑というらしい)と、政局と世論の動向を
  読んでの衆議院解散、つまり国税を無駄に使った「大義なき解散」であることは明らかで
  ある。

   内閣改造に当たって、「仕事師内閣」と銘打ったにも拘わらず一度も閣議も開かず、
  一切仕事ををしないで臨時国会開会冒頭で解散をするという前代未聞の暴挙が世間の
  非難を浴びた。

   解散直前、小池都知事が希望の党を立ち上げ、民進党の前原代表がこの党への合
  流を決断し 国民は都議会選挙に次ぐ小池劇場再来を歓迎し、安倍首相の思惑が外れ
  た感があったが、小池代表が「選別・排除の論理」を持ち出してから、潮目が変わって
  希望の党の人気は急落し、自民党に風が吹き始めた。

   民進党出身者が分断された混乱は、枝野立憲民主党の誕生を生み、辛うじて護憲集
  団の受け皿となったが、野党分裂という漁夫の利を得た自民党の優位は揺るがない。
  折角の反安倍の流れに掉さす小賢しい小池代表の潔癖さがこの結果をもたらしたと云
  える。とんだ小池劇場である。

   政権交代を目指すという大目標に立ち向かうときには、怒濤(どとう)のように攻めたて
  なければ成功しない。明治維新のときの政府もそうだったように、その新しい土台の上で、
  憲法でも、安保でも、存分に論議して打ち出したらいい。政治の流れを変える歴史的な
  大仕事の手順には、野合といわれても甘んじて受け入れるしたたかな度胸と度量がいる。

   小池氏にはその度量がなかったし、最近は特にやや他人を見下す言動と不敵な笑顔
  が気になる。また必要以上の横文字の多用も鼻につく。政界のジャンヌダルクも次第に
  女帝っぽくなってきた。

   リベラルだからとか旧民主党の執行部だからと云って排除したり、入党条件を示して
  踏み絵を踏ませるなどは雅量の狭さを示すもので、それこそ『寛容な保守』の看板が泣
  く。肝腎なところで女性特有の頑なさがのぞき見えた。

   野田元首相が、漢代の武将、韓信の股くぐりの故事にならって、「股くぐりをしない」と
  いったのは正に男の見識であり矜持である。

   保守だとかリベラルだとかにそんなにこだわるより、開明的であるということが今最も
  大事なのではないか。昔から名君といわれた人たちは、右とか左とかそんな枠にとらわ
  れたりしないで常識と非常識をうまく両立させてきた。だから思い切った改革もできた。
  悲しいかな、反安倍の旗手の一番手と云われる小池代表にはそうした器量の大きさが
  ない。

   一方、安倍首相は「国難突破解散」だなどと名付けておいて、北朝鮮には対話でなく
  圧力を、とさんざん危機をあおっている。核・ミサイル開発をやめさせるには日本の外
  交力が問われている。いまこそ中国とロシアも巻き込んでぎりぎりの努力をしなければ
  おかしい。

   ともすればこの総選挙は、トランプ米大統領の威嚇の手法まで信任することになるか
  ら国民はよくよく考えないといけない。

   選挙の争点は、憲法、消費税、原発、の3点に絞られて判り易くなっている。私見は
  控えるが各党の政策をよく吟味して自分の意見を反映したい。最も大事なのは4年10
  カ月に迫る安倍政権の継続を信任するかどうかの選択である。

   誰が安倍1強にくさびを打ち込める一番手になるのか、その判定はあと5日後に迫っ
  ている。「平成の乱」はどんな結末を迎えるのだろうか。アメリカ大統領選のように、世
  論調査をひっくり返す大逆転劇の再現はあるのだろうか?