ミミズの戯言74、選挙と鰻。   16,08,02

   参院選挙は自民党の圧勝に終り、国民の関心は都知事選に移った。選挙前
  の予想に反して小池百合子候補が増田候補に100万票の大差をつけて当選
  した。私は都民ではないから対岸の火事だが、それでも自公推薦の増田候補
  と造反した小池候補という自民の分裂選挙、一方では野党相乗りの鳥越候補、
  という構図だからいやでも関心が高くなる。

   増田候補は岩手県知事時代に数回お会いしていて、岩手県の産業振興につ
  いて意見交換したことがあり、来社されて硬式野球部の創設を懇望されたこと
  もある旧知の人で、その手堅い実務能力には定評があったが、都知事選とな
  ると知名度が低く、如何にも堅すぎる人柄が他の候補よりも地味で魅力に欠け、
  遂に追い上げ及ばず波に乗り切れなかった。

   自民党に反旗を翻した小池候補は「小池の乱」といわれるほど権謀術策に
  優れ、流石は小沢一郎の薫陶を得て政界を渡り歩いた女性策士だけの事が
  あり、勝負勘に優れ、選挙戦略に長けた抜群の戦いぶりで波を引き寄せた。

   ジャーナリスト鳥越候補は直前の立候補で政策の準備不足は否めず、立候
  補直後はその抜群の知名度で有利かと思われたが、国政と都政の混同が目
  立ち、野党共闘のバックアップも実らず惨敗した。

   政党のバックアップを得た組織選挙と非組織選挙の戦いであり、「安定」か
  「改革」かも争点であったが、これに勝利した小池新知事の行政手腕と議会
  対策が今後の焦点となる。

   今年は内外で大きな選挙があり関心を集めた。主なものだけでも、国内で
  は参院選、都知事選があり、海外では、オーストラリア、ペルー、フィリピン、
  台湾、韓国、ドイツで注目される選挙があった。イギリスではEC離脱の是非
  を問う国民投票があり衝撃的なEC離脱が決まった。11月にはアメリカ大統
  領選挙があり、なにかと言動が問題視されるトランプ候補とクリントン候補の
  一騎打ちがある。

   民主主義の根幹は国民の支持を得た候補者や政党が政権を担う事にある
  のだが、往々にしてポピュリズムに惑わされて衆愚政治に陥る危険性がある。
 
   民主主義とはその国の国民の知的レベルを端的に示すもので、政府の失
  政の責任は国民にある事は自明の理である。自公が改憲勢力を得た参院
  選、都政改革路線を選んだ都知事選、英国のEC離脱、米国の大統領選、
  すべてその責任は選択した自国民にあることを肝に銘じるべきである。

   さて都知事選の行われた31日(日)の前日30日(日)は土用の丑の日。
  少々不謹慎だが、家内と都知事選の結果を予想して、敗者が勝者にご飯を
  奢ることにしてテレビを見ていたが、午後8時開票と同時に小池候補当選の
  テロップが流れ、残念ながら私の敗北、家内の勝利となった。

   翌日、プールの帰りに金沢文庫の鰻屋「隅田川」に立ち寄り、家内に鰻を
  ご馳走する羽目になった。この周辺は鰻屋が多く、近くの「鰻松」はかって
  伊藤博文公も訪れたという老舗だが、少し皮が硬いのとタレが濃いので好
  みが分かれるところ。隅田川の方が柔らかくどちらかといえば老人向きだ。

   例年お盆には、息子の墓参りに合わせて鎌倉の鰻屋「茅木屋」で鰻を食
  べるのが習慣になっているが、今年の墓参りは娘夫婦と孫達、新たに結婚
  した末娘夫婦も加えて9人という大集合になる。とても年金生活者の懐では
  負担が多すぎるというので、娘たちが気をきかせて今年は鎌倉の老舗中華
  料理店で会食をすることにしている。

   当日は鰻にはありつけないので、これ幸いとばかり丑の日から2日遅れて
  家内と二人だけでうな重を食べてきた。久し振りの鰻はやはり絶品だった。