ミミズの戯言67、夏の甲子園。 ![]() 今年の夏の甲子園は神奈川代表の東海大相模高校が宮城代表の仙台育英高校を 打撃戦の末破って45年ぶりの優勝を遂げた。10対6、9回まで息詰まる熱戦を展開し、 アルプススタンドを沸かせ続けた。両校ともあっぱれな戦いぶりだった。 観客の声援は育英高校が上回ったように聞こえたが、判官びいきなのか、初の白河 越えの優勝を期待したのか、甲子園の声援にはいつも敗者の健闘を讃える暖かいも のがある。熱狂的な応援といってもサッカーの応援とは質が違う。 死力を尽くして戦う選手、観客席の応援、試合終了と同時に起きる歓喜と涙が感動 を呼ぶ。それぞれの地元でも一喜一憂して応援に力がこもる。高校野球は正しく日本 の国民的行事であり伝統的文化だ。王貞治さんが開会式で「高校野球は野球の原点 だ」といったのが頷ける。プロ野球や都市対抗、大学野球では決して味わえないプレ ーのスピード感が堪らない魅力だ。 毎年の事だが、今年もエアコンをきかせた部屋でほぼ毎日テレビ観戦をした。話題 の選手たちの顔も覚えたし、その活躍に拍手も送った。何よりも勝ち進む注目校の 勝敗に関心があった。、特に打力中心のチームが多かった。 今年の私の観戦スタイルはいつもと違っていて、自分の心理状態に興味があった。 どの高校にも肩入れしない正に「フラット」な観戦だった。私の生まれと育ちは宮城県 で、多感な高校生活は岩手県だから、優勝候補の下馬評に上がる育英高校と花巻 東高校の準々決勝の対戦ではどちらにも勝たせたい気持ちが強かった。 試合開始から終了までどちらにも肩入れしないで一喜一憂した。こんな観戦は初め てだった。さらに決勝戦。片や生まれ育った宮城県の育英高校、片や大学時代から ほぼ半世紀以上も神奈川県で生活しているから、第二の故郷といってもいい地元・ 神奈川県の東海大相模高校の対戦だが、やはりどちら側にも組しないフラットな気持 ちだった。 試合開始になってもフラットさは変わらない我ながら不思議な心理状態だった。試 合開始早々、1回表に東海大相模高校がヒットを連発し先制点を挙げた。その瞬間、 なんと私は「育英頑張れ!」と心の中で叫んでいた。突然の事で何故か判らないが 私の心は明らかに出身県の育英高校を応援していた。そして突然起きた気持ちの 変化に驚いた。 いつか友人の心理学者に訊いてみたい。この気持ちの変化をどう理解すればいい のだろう。どんな深層心理が働いたのだろう。興味深い初めての経験だった。 試合は育英が3点のビハインドを跳ね返して6対6.最終回に遂に相模が追加点を 挙げて粘る育英を振り切ったが、試合終了と同時に両校のナインに惜しみない拍手 がアルプススタンドから巻き起こった。ホームベースを挟んで選手たちがお互いの 健闘を讃えあい、勝った相模は満面の笑みを、敗れた育英は悔し涙だろうか、感動 的なフィナーレだった。久し振りに清々しい感動を味わった2週間だった。 思い出せば、平成16年の春の選抜で甲子園に出場した母校の応援に行ってから 11年の年月が過ぎた。母校の校歌や応援歌を一塁側応援席で声高に歌ったことを 思い出した。残念ながら千葉紅陵高校に6対0で敗れたが、あの時も甲子園は多くの 人々にかけがえのない思い出と感動を残してくれた。 100回記念の今年、選手達は勿論、母校の先輩や多くの高校野球ファンにとって、 今年も素晴らしい大会だった。 選手諸君!感動を有難う。また来年を楽しみにしているよ! |