ミミズの戯言46、ゲリラ豪雨。  13,08,03

   ひと昔前までは「夕立」といったが今ではゲリラ豪雨という。夕立という言葉の響きは、
  朝顔や風鈴、かき氷、金魚売り、セミの声などと共に夏の一服の清涼剤だったが、ゲ
  リラ豪雨と呼び名が代わっては季節感が失せて季語にもならず味気ない。

   今年の山陰・北陸・東北は記録的な大雨、九州南部や沖縄は極端に雨の少ない季
  節だった。高気圧と低気圧の配置が例年と違い、偏西風のコースが同じ範囲を辿っ
  たため、極端な多雨と少雨の地域差が生まれたらしい。局地的大雨は各地に甚大な
  被害をもたらした。それにしても半日で350ミリ、1時間に140ミリの降雨量は尋常では
  ない。地球温暖化の影響かどうかは知らないがどうやら日本は亜熱帯地域に入った
  感がする。

   気象現象だけではない。日本の政治も負けず劣らず集中豪雨的現象が現れた。過
  日の参院選で、国民は雪崩を打って自民党の立候補者に投票して軒並み当選させ、
  民主党の候補者は惨敗した。3年前と真逆の現象である。2大政党待望論はうたかた
  のように消え失せたようだ。第3極も尻つぼみで、1強多弱の選挙結果に終わった。

   民心は気まぐれで、時計の振り子は必ず揺り戻しが来ると3年前の選挙の時に小論
  で書いたが、こんなに早く雪崩現象が起きて自公政権が復活するとは予想もしてい
  なかった。民度の低さが民主主義の成熟を妨げているのか、2大政党が政策を競い
  合い交互に政権を担う成熟したシステムは日本では所詮望むべくもない夢物語かも
  しれない。

   戦前、大正末年の第2次加藤高明内閣から、1932年の5・15事件による犬養毅内閣
  の崩壊まで、一時期日本には2大政党による政権交代の時期があった。政友会と民
  政党の政策の競い合いがそれだったが、ファシズムの台頭と犬養の暗殺、軍部の圧
  力によってわずか7年であっけなく終焉を迎えてしまった。

   それから80年後の現在、再び2大政党政治の萌芽が見られたが、どうやら今回の
  参院選でその芽は摘み取られてしまったらしい。日本の国民は自民党の一党独裁を
  待ち望んでいたとは思えないが、民主党をはじめとする野党の未成熟さがこの結果
  に表れたというべきだろう。野党の責任は重大である。

   「ねじれの解消・決められる政治」はそれほど魅力にあふれた政治形態なのだろう
  か。アベノミクスは経済再生に一定の効果をもたらしたのは事実だが、過度の期待と
  魔性に毒されてはいないだろうか。安定した政治、成熟した政治形態とは決して一党
  独裁をいうのではないと思うのだが如何なものであろうか。

   今回の選挙結果に驕り、慢心が高じると、麻生副総裁の「ナチスに見習え」という放
  言が瓢箪から駒になって現実味を帯び、憲法をはじめすべての面で暴走しかねない。
  本音が透けて見える。危険な兆候だ。せめてハチの一刺しが待たれる。

   気象現象のゲリラ豪雨も困るが、国民の1党に集中したゲリラ豪雨的投票行動も困
  ったものだ。自然界の豪雨は間もなく止むが、人間界のゲリラ豪雨は自然界と違って
  これから5年間も選挙の洗礼を受ける事はない。安倍政権は自由に議会運営を進め
  る事ができる。国民が望んだ「ねじれの解消・決められる政治」の負託を受けて・・・。

   今度時計の振り子が揺れるのは何時の事だろう。