ミミズの戯言42、高齢者の運転講習。 ![]() 年齢が満75歳以上になると、運転免許証更新の時に「講習予備検査」を受検したうえで 「高齢者講習」を受講することが義務づけられている。神奈川県公安委員会からの通知を 受けて先日北鎌倉のさる自動車教習所にでかけてこの2つの講習を受けてきた。 「講習予備検査」とは認知機能検査ともいい、記憶や判断力いうなれば老人病の進行度 の簡易検査をすることで、「高齢者講習」とは法令等の講義と運転適性検査機材による診 断と指導、実車運転による診断と指導のことで、所要時間は3時間、費用は6千円である。 「講習予備検査」(ボケの進行チエック)で所定の成績以下だと、交通違反の時に医者の 診断書の提出義務が課せられる仕組みになっているから油断がならない。私はこれまで 高齢者講習だけだったが満75歳の今年から講習予備検査が加わった。 この検査には少々面食らった。時計を外されて伏せた問題用紙と解答用紙を配られ、時 間を区切って一斉に問題用紙を開き答えを書き入れるのだが、最初の問題は、住所氏名 生年月日、今日の日付と曜日、現在の時刻を書き入れなさい、というもの。記憶力のテスト なのだろう。毎日が日曜日だとつい日付や曜日の感覚が無くなり答えに窮する。 次の問題は、イラストによる記憶力の検査。1枚の紙に4つのイラストが描かれていて全 員でそのイラストが何の絵かを大声で答える。例えば飛行機、大根、シャベル、鉛筆と答え る。これを4枚見せられるから合計16個のイラストを見たことになる。しばらく他の話題に 話をそらしてから、解答用紙を広げさっき見たイラストの絵を思い出す限り書き入れよとい う問題だ。私などはすぐ忘れるたちだからやっと6個思い出すのが精一杯だった。そっと 隣りの老人の回答を覗き込んだらこの老人は少なくとも10個以上の答えを書き入れてい た。つまり私の瞬間の記憶力は相当に鈍くなっているということだ。忘れっぽくなっている からこれから眼鏡や鍵のありかなど家内との悲喜劇が起こってくるに違いない。 最後の問題は大きな時計の文字盤を書かせてから、突然1時45分を長短針で書き入れ よという問題。長針は直ぐに9の位置に書き入れるが、短針はつい1の位置に書き入れて しまいがちになる。私もそうしてしまったがすぐに1と2の間4分の3の位置に修正した。 これは多分不注意の有無を検査するものだろう。年寄りには陥りやすい確信的な錯誤で ある。これで講習予備検査は終了し、結果は幸い記憶力・判断力共に問題なしと判定され まずは一安心。 最後にいつもの高齢者講習だが、まず検査機材による運動機能の検査。青・赤・黄信号 の変化に対してとっさの反応(ブレーキ、アクセル)が出来るか、左右からの突然の侵入者 への反応はどうかの検査だが、結果は反応動作、判断動作、ハンドル操作、注意の集中、 ともに同年代との比較で「優れている」との判定だった。30歳から50歳と同等との判定だ った。 視野測定検査では、老化と共に左右の視野が狭くなっていて動体視力も衰えていること と、特に右眼視野の角度がかなり狭くなっていることを指摘され、検査員からは右側の飛 び出し等に注意するよう指導があった。視力検査では眼鏡なしの通常視力0,3、眼鏡で の通常視力0,8、夜間での視力回復と眩光下視力の回復が年齢相当に衰えているので、 特に夜間走行を出来るだけ控えるよう指導があった。 実車運転はすべて問題なしとの判定だった。すべての講習を終え、「高齢者講習修了証 明書」をもらったので来月の免許証更新の時にこの書類を添付して更新することになる。 しかし改めて老化の進行を感じさせる講習会だった。老化は突然やっては来ない。じわ りじわりと忍び寄ってくる。朝の散歩で森戸の海から富士山を見ていると、向こうは昔から 変わらないがこちらはたった10年前から随分年を取ったものだとついつい感傷的になる。 かなり以前から愛車の保有と運転は80歳までと決めているのであと1回か2回の免許証 更新で最後になるが、その時まで心身が持ちこたえてくれるか、それとも「まだまだ運転 できる」と未練を残すか、5年後にはどんな結末が待っているのだろう。 |