ミミズの戯言39、乱立選挙。 ![]() 今年の流行語大賞になるであろう「近いうちに」から100日、ようやく衆議院が解散する。 来月4日の公示前に第3極といわれる小政党が次々に林立し、誕生しては野合のように 合併をする、まるで企業のM&Aのようなドタバタ劇が連日新聞紙上を賑わしている。 戦国時代さながらの群雄割拠、選挙後は泡のように消え去るであろう泡沫政党の乱立 である。仕掛け人たちは嬉しそうに設立趣旨をもっともらしく述べている。 今年の選挙の争点はあるようでないようなぼやけたもので素人には全くわかりにくい選 挙だ。選挙の争点は一応、消費税増税・脱原発・TPP・経済再生となっているようだが支 持政党を選べと云われても14もの政党では選択に迷うばかりだ。既成政党も第3極政党 も大同小異の政策に思えるし、掲げている公約は実に判りにくい。 脱原発やTPP参加問題などは私には選挙で争うべき争点にはなじまない課題だと思う のだが、各党はそれぞれが曖昧にまたは無謀に主張を繰り広げている。TPP参加などは いっそのこと「農民党」と「企業党」と政党名を変えてもらうほうが判り易いし、脱原発や反 原発などは「理想党」と「現実党」のほうが判りいい。いずれも選挙の争点というよりもこれ からもっと議論を深めていくべき国民的課題というべきで、選挙の争点とはなり難い。 私の思う重要な争点は外交問題。尖閣・竹島を巡る中国・韓国との領土帰属の争いが 絶えないが、憲法の制約もあって強く出られない日本が歯がゆい。右翼の代表のような 安部晋三総裁や「暴走老人」こと石原慎太郎が盛んに憲法改正や国防軍創設などで強 い日本の再生を掲げているが、うなずける面としり込みする面があっていまいち踏み込 めない。 かといって中韓の思うがままの蹂躙に屈するのはもってのほかだ。もっと強い態度に 出るべきと思う反面、いや待て待てという思いとが行き来して、思いが定まらないのが 正直なところだ。領土問題は足して二で割る解決策などはない。喧嘩腰で戦うか、棚上 げしてうやむやにするか、ふたつに一つの選択肢しかない問題にも思える。 激情的な国民性の代表選手の韓国と、激情的かつ深謀遠慮でしたたかな二枚腰の 中国が相手だから、友好にひびが入る覚悟で領土問題を主張するか、それとも、巧み に経済交流とすり替えたりして本質をぼかしながら、「寛容と忍耐」が得意な日本人の 美徳で穏便な先延ばしを図るか、どちらが日本にとって有効かつ必要なことだろう。 かっては1970年当時、「糸を売って縄を買った。」と揶揄されたが、日米繊維交渉の大 幅譲歩と引き換えに沖縄返還を実現した、裏取引(バーター)の暗い闇の先例もある。 たまたま今読んでいる人物評伝「大平正芳」(福永文夫著・中公新書)のなかに、大平 の優れた時代感覚、国際感覚を感じさせる挿話が数々あって、それは全く現在の緊迫 した国際情勢に通じるものだと深く感じる所があるので紹介する。 大平正芳が外相時代の1963年、周鴻慶事件が起きた。詳細は省略するがこの事件 で台湾・中国との緊迫した外交問題が起こった。この時の大平の中国観は総じて次の 通りだった。 「日中両国は、古くから一衣帯水の隣国であり、未来永劫にそうである。好むと好ま ざるとに拘わらず、相互に分別を持って、平和な付き合いをしなければならない間柄 である。ところが、日中両国民の間には共通点よりは相違点が多く、相互の理解は想 像以上に難しい。しかし、お互いに隣国として永久に付き合わなければならない以上、 よほどの努力と忍耐が双方に求められるのは当然である。」 今からちょうど50年前のこの大平正芳の至言を、石原慎太郎や安部晋三、中国・ 韓国の為政者に噛みしめてもらいたいと思う。50年前の大平の腐心を相互に共有す れば日韓・日中の領土問題の解決の糸口は容易に見つかるのではないだろうか。 大平は次のようにも述べてもいる。「時代は想像を絶した変化を経験している。何が 起きるかわからない大いなる不安の連続です。世界を挙げて「不安」の時代に棹さし ている。しかしこの「不安」も連続すれば、それは一つの「安定」となりうる。度胸が据 わってくる。私はこの不安定の中に度胸を据えて光明を求めて前進したい。」 このような確固たる信念と深謀遠慮の行動力を持つ候補者と政党を探して今回の 選挙に一票を投じたいと思うが、果たして見つかるかどうか?心もとない。 |