ミミズの戯言29.パソコンの更新始末記。  11,08,18

    パソコンを自宅に備え付けたのは9年前に会社をリタイアした直後だった。機種はNECのデスク
   トップで身丈にあった手頃な機種だったと思う。なにせ機種の選定から据付け、立ち上げまでの全
   てを会社の若い部下だったT君に丸投げしたので詳しいことはわからない。我が家に設置したのは、
   退任したとはいえまだ会社とのメール通信が必要だったことと、友人とのメール交換、ニュースなど
   の情報入手、年賀状や各種資料作成と印刷が必要だったことなどが主な理由だったと思う。

    1年ほどたって、ゴルフ仲間との月一回の定例ゴルフ会の会報や成績表を会員に送付する手間
   を省きたいとの幹事の悩みを聞き、解決してあげようと「ホームページ」の作成を思い立った。
   逗子のパソコンスクールに半年ほど通ってイロハから作成の特訓を受け、ようやく「FF会会報」の
   立ち上げにこぎつけた。毎月ゴルフを終えると成績表や優勝インタビュー、優勝額などの掲載があ
   るので、発行を重ねるうちに次第に会報の内容も充実して軌道に乗ってきた。写真撮影と写真の
   縮小・切り貼りなどの小技も覚え、ホームページの体裁も際立ってよくなった。

    デジカメで撮ったあちこちの旅行写真やゴルフ以外の趣味の記録もあるので、新たに「佐々木家
   のホームページ」を立ち上げ、「FF会会報」をその中の一部に組み入れる構成に変更した。かくして
   「佐々木家のホームページ」はゴルフ、釣り、囲碁、旅行などの趣味や、我が家の愛犬などの家庭
   内の出来事などを記録・紹介し、また政治・経済・社会の出来事に対するその時々の感想なども紹
   介する総合情報発信ツールとして私の日常生活の退屈を紛らわせる大事な「時間つぶし」と化して
   いった。


    最近では、かっての仕事仲間や学生時代の友人、趣味の仲間たちとの近況報告・情報交換の
   ための情報ツールの役割から、次第に、浮世に翻弄されつつも達観する「心の鏡」のような存在に
   変質しているような気がしている。尚、パソコンに嵌ってしまったそもそもの「FF会会報」は都合で昨
   年廃刊にした。

    最近立て続けにパソコンとプリンターが故障気味になった。パソコンは電源を入れても画像が現
   れなくなるし、プリンターは「内部部品の調整時期です」と表示されて始動しなくなってしまった。

    量販店のスタッフに聞くと、修理よりも新規購入が割安だという。どこにでもある商法だが結局パ
   ソコンもプリンターも買い替えることにした。ほぼ10年使った我が家のNECはずいぶん陳腐化して
   いるらしい。この世界も日進月歩の激しい世界で最近の機種は格段に高性能らしい。しかしどの機
   種に変えたらいいのかまるで分らないので、我が家に導入時に世話になり、その後も指南役として
   指導を受けている元部下のT君にすべてを任せることにした。価格・性能を考慮してパソコンは東芝
   のデスクトップ21,5型、プリンターはエプソンにした。ソフトはwindows7である。我が家に持ち帰
   り、設置と起動までT君にすべてを任せた。

    しかしこれからがまた大変な問題が残っていた。古い機種のデータを新機種に移し替え、今まで
   通りの使い勝手にするのは容易ではない。メールアドレスや履歴、筆王の住所録、ドキュメントに保
   存した写真や記録すべてのデータ、、ホームページの記録一切とデータファイルの移管には、新旧
   パソコンを接続するコードの購入やホームページを作成する「ホームページビルダー」のソフトの購
   入が必要だし、その手配や移管作業は私の手に負えるものではない。

    データ量が多すぎるので業者頼みでは時間と費用がかかりすぎる。結局はT君に二日間来宅して
   もらいデータの移管を始め新機種立ち上げまでの全ての準備を手伝ってもらった。私の古い機種
   とつなぐ接続コードは量販店では売っていないし、ネットで通販購入しようとしても在庫切れで断られ
   る始末で、ようやく彼の知人が持っている事がわかり借り出してきた。

   ビルダーのソフトはネットで安く買えるが時間がないので彼が量販店で購入して持参してくれた。
   二日間御殿場から我が家を訪れた彼は私の希望するすべてのオーダーに完璧に応えてくれた。
   さすがは元情報システム部のプロである。パソコンは私の大事な生活の一部になったとはいえ、
   T君の支えなしでは成り立たないということを改めて実感した。

   最後に残った仕事は古いパソコンの残骸処理であった。町のごみ収集では引き取ってもらえない。
   リサイクル法の対象商品だからである。平成13年に施行された家電リサイクル法では処理費用は
   消費者(使った人)が負担し、家電小売店(売った人)は収集運搬を、家電メーカー(作った人)は
   リサイクルをする義務が課せられている。のちの自動車リサイクル法(平成17年制定)の先駆け
   をなすこの法律のことをすっかり忘れてしまっていた。私は町のごみ焼き場で持ち込みを断られて
   ようやくこの法律のことを思い出した次第でなんとも浦島太郎のような気持ちになったものである。


    思ったよりも早くホームページの再開に漕ぎ着ける事ができた。この「ミミズの戯言29」は新機種
   による処女作第1作である。すべてはT君のお蔭で感謝に堪えない。今度の機種は寿命10年と彼
   は言う。これではもう更新はないかもしれない。パソコンと私の寿命競争で、勝負の予想は5分5分
   というところだろう。願わくば延長戦になってドローとなるか、「なでしこの奇跡」が起きるのが願いで
   ある。