ミミズの戯言26、−松の木は残った。ー 11,04,11

   今日はあの大震災から1ヶ月目である。
  岩手県陸前高田市の「高田松原」には7万本もの松の木が海岸線一面に立ち並び、景勝の地
  として地元民や観光客に親しまれていた。私が子供の頃から親戚同様にしている知人(竹馬の友
  の姉)家族がここ陸前高田市に住んでいるが、3,11の津波で家をすべて流され、現在避難所生
  活を余儀なくされている。
   高田松原の松の木は今回の津波ですべて根こそぎなぎ倒されたが、奇跡的に一本だけ耐え抜
  いて生き残り、空に向かって立っている写真が3月31日の某紙夕刊に掲載された。この写真を
  見て衝撃的な感動を覚えた方は私だけではなかろう。その感動を共有したくて紹介することにした。

   奇跡的に一本だけ生き残ったこの松の木を見て皆さんはどのような思いを持たれるだろうか。
  おそらく千差万別ひとりひとり違うだろう。あるひとは災害の象徴として、ある人は希望と復興の
  象徴、ある人は凛として屈しない意志の象徴、ある人は悲しみと孤独の象徴、ある人は歴史の証
  言者として。表現は違うけれどもそのすべてが納得できる説得性のある感想だろう。

   孤立する松の木の周囲には津波の残骸が無残に横たわり、彼方には夕陽が沈むのかまたは
  朝日が昇るのか、毎日繰り返される当たり前の自然の営みが何事も無かったかのように映し出
  されている。

   母なる豊かな海、時には牙を向く海、そのどちらの顔も持つ海に我々は生きる糧を恵まれ、命
  を育まれ、恐れおののき神として崇め、感謝の祈りをささげて数千年を過ごしてきた。この写真は
  まさにそのすべてを映し出した写真だから感動を呼ぶのだろう。無念に散ったすべての犠牲者に
  祈りをささげる。


      4月10日の朝日歌壇に寄せられた大震災を悼む珠玉の短歌から6篇を・・・

      1、遺体ある瓦礫に印の赤い布           4、ぶしつけな問いにも静かに答えるは
          手を合わす母あり隣にも                  父母を波にさらわれし人


      2、父母の名をかざしひとりで避難所を       5、ただじっと息をひそめている窓に
          回る男(お)の子は九歳という               黒い雨ふるふるさと悲し   


      3、生きてゆかねばならぬから原発の       6、避難所の人みな人を気遣いぬ
           爆発の日も米を研ぎおり                 人とはかくも美しきかな

      
   敬虔な祈りをささげて
   皆さんで見つめよう。