ミミズの戯言106小言幸兵衛。      20,02,03

   昔、ラジオで6代目三遊亭圓生の落語「小言幸兵衛」を聞いた記憶がある。その後、
  古今亭志ん朝も得意演目にしたようだが詳しくは覚えていない。

   長屋の家主の幸兵衛さんが長屋の店子や家の婆さん、猫にまで片っぱしから小言を
  言い、挙句は借家を借りに来た依頼人にまで小言を言うのでついたあだ名が「小言幸
  兵衛」。つまりはやることがないからついつい身の回りのことをつべこべいう爺さんのこ
  とで、落語に限らず、現代でもよく見受けられる。

   かくいう私も齢80歳を過ぎると気になることを見逃すことができずにぶつぶつ愚痴を
  言うことが増えてきた。まだ幸兵衛さんのように他人に当たり散らすことはないと思って
  いるが、案外他人さまはうるさい爺だなどと思っているかもしれない。自分のことは自分
  がいちばんわかっているようで、実は何も判っていない事が多い。

   中国武漢で発生した新型コロナウィルスは、世界中に菌が蔓延し、感染者や死者が
  日々増大している。日常生活に支障をきたし。挙句は世界経済にも深刻な悪影響を与
  え始めている。

   感染の予防のためにはマスクの着用と手洗いが不可欠だが、私は外に出歩くことが
  めったにないからウィルスに感染することはないと思っている。不謹慎な言い方だが、
  対岸の火事と思っていたら、なんとついに横浜で感染者が発見されたらしい。

   孫が横浜の中学に通っているので、いよいよ他人事ではなくなりそうである。薬局や
  コンビニではマスクや消毒液、除菌ティッシュが品薄、品切れ状態で、挙句は転売目的
  で大量買いまであるそうだ。オイルショック時のトイレットペーパー騒動の再来となって
  いる。どうして中国の武漢くんだりまで物見遊山に行き来するのだろう、と外国旅行の
  嫌いな幸兵衛は小言の一つも言いたくなる。

   もう一つ、さすがの小言幸兵衛も小言をいうのもも忘れてその詭弁ぶりに驚いたの
  が1月23日の衆院予算委員会での安倍首相の答弁。

   宮本議員(共産)と安倍首相、「桜を見る会」のやり取りで、首相は首相推薦枠での
  推薦を 「募っているが募集はしていない」 と珍答弁をして失笑を浴びた。
  訂正するかと思いきや、訂正どころか、気色を変えて「詭弁では無く正論だ」と居丈高
  に言い返しているのだからまた開いた口が塞がらない。
   
   「募るというのは募集するというのと同じ字なんですよ。」 「いや募っているという認
  識があっても募集しているという認識はない。」

   国会議員の先生様のこの低俗な問答を聞いて、手持ちの国語辞典を何冊か開いて
  みたが、一様に「募る」は「募集する」 と同義語だった。当然である。小学生でも判る。

   もしも子供達が首相の真似をしてこんな詭弁を覚えたら、将来、成長して責任のある
  社会人になった時に、でまかせの言い逃れを平気で言う口舌の徒になりかねない。

   一国の首相の言い逃れが国の将来を危うくすることに気が付かないとは、この国も
  哀れなリーダーを冠に頂いたものだ。有為な若者を育てる教育立国、科学大国を唱え
  る資格など彼にはない。

  「綸言汗の如し」 宰相たるもの、この言葉をかみしめるべきだ。ミカドが一度言ったら
  取り消しはできないから軽はずみなことを言うな、という教訓だが、トップに立つものの
  基本的な心得である。

   「桜」にうつつを抜かして騒いでいる時ではない。審議すべき事案がいっぱいある。と
  良識のある人は眉をひそめる。まさにその通りだが、低俗な国会の珍問答には、さす
  がの葉山のご隠居、幸兵衛も高い税金を払っているので、貴重な審議時間の無駄使
  いにはどうしても一言小言を言いたくなる。

   思うに、安倍晋三という人は何という肝っ玉の太さだろうか。
  もしも、人並外れて肝が据わっているのではないとすれば、著しくアタマが悪いのか、
  呆れるほど神経が鈍いのかのどちらかになる。あるいはそのすべてなのかも知れない。

   私にはわからない。どっちにしても私が持ち合わせているちっぽけな物差しで測れる
  人物ではなさそうだ。ひょっとしたら歴史に残る稀代の大政治家なのかもしれない。
  私の感性が鈍っているのかもしれない。と首をかしげる小言幸兵衛なのであります。

   早速、日本テレビの「笑点大喜利」では、「答弁したが答えていない、太っているが肥
  えてはいない。」とギャグが飛んだ。新年早々、今年の流行語大賞に入選確実な新語
  が生まれた。