空海と密教美術展。    11,09,11

   文化財研究会の面々と、上野の国立博物館に展示中の「空海と密教美術展」を見学に出かけた。
  平日だというのにゲートの前は行列が長蛇の列、1時間も待たされた。空海が中国から伝えた密教は
  大変難解でこれを理解することは凡人には容易ではない。なのに連日こんなに見物客が集まるのは
  何故なのか少々不思議である。空海や密教に関心があるのか、単なるデートスポットなのか、日本人
  とは不思議な民族だ。

   我々文化財の老人は仏像に造詣の深い人達ばかりなので目的ははっきりしている。国宝級の仏像
  や曼陀羅が奈良・京都から10点以上も運ばれて展示されているのでこれをじかに拝観するのが目的
  である。私は仏像よりもむしろ空海の直筆をまじかに見ることに興味を持った。なにしろ1200年も前の
  空海の直筆である。空海は平安時代の「三筆」といわれた書の達人(あとの二人は橘逸勢と嵯峨天皇)
  で、唐で密教を学び仏典を書写する過程で当時最先端の唐の書法を会得したといわれている。自由
  奔放で豪快な書風の直筆の書5点が展示されていた。他に「薬師如来と両脇侍像」、「阿弥陀如来と
  両脇侍像」、「両界曼陀羅図」などの国宝10数点が館いっぱいに展示されていて見ごたえがあった。

   京都の護国寺(東寺)講堂には空海の思想に基づいて大日如来を中心に五仏、五菩薩、五大明王
  など21体の仏像が安置されていて、それは密教の宇宙観を表しているのだそうだ。文化財研究会の
  数人から機会を見て訪問しようと提案があったが実現するかどうかはわからない。国立博物館を出
  てアメ横を通り、サケや筋子などの食材を買い叩いて、儲かったような気分になって帰宅した。