利き酒。               10,06,05

    常連になっていて親しくしている葉山のさる手打ち蕎麦屋の主人は利き酒の権威である。ソバを食べに行くと
   奥の調理場から時々顔を出して「珍しい酒が入ってますよ」と声を掛けてくれる。
    この素朴な親父さんは「鎌倉清酒研究会」といういかめしい会の会長さんの肩書きがあって、全国の醸造元
   に顔が聞く。年に2回鎌倉のPホテルで全国新酒鑑評会出品酒を出品させて、全国のお酒好きの老若男女に
   声をかけ利き酒大会をやっている。

    誘われて家内同伴で酒好きの学生時代の友人夫妻共々初参加した。Pホテルの会場には既に近隣の酒好
   きは勿論、九州や北海道からのお酒を趣味とする人々がほぼ300人も集まっていた。会場に並んだテーブル
   には全国の名だたる造り酒屋の今年の新作出品酒が60種、既存の純米大吟醸酒が30種、趣向として1銘柄
   の純米吟醸酒を3種類の酒米で造り飲み比べする特選出品酒7銘柄、の一升瓶が会場一杯に展示され、会場
   内はまさに酒気ぷんぷん、酒好きには堪らない豪華な雰囲気だった。
    壇上には全国の造り酒屋と思しき威勢のいいハッピ姿のお兄さん達がお酒の説明に大忙し、会長の開会挨
   拶を皮切りに、参加者は利き酒用の小グラスを手に次々と酒の味を鑑賞し、口漱ぎには提供された仕込み水
   3種類(千禽、八海山、天青)を使っている。仕込み水はそれぞれ味が異なっていて酒の味はやはり水に大き
   く左右されることがよくわかる。

    バイキング料理が目当ての若い男女も多く、瞬く間にめぼしい料理は消えてゆく。私はセーブしながらも20
   種類ぐらいは味見したろうか、持病があるので程ほどで止めたが、友人S氏はほぼ80%は飲み干したと豪語
   していたので、ゆうに1升は飲んだのではなかろうか。会場の人気酒は知名度のせいか山形の”14代”に行列
   が出来ていたが、私は味オンチなので味の評価は敬遠している。ただし美味いとか好みではないとかは判る。
   因みに美味しかったのは群馬県・柳澤酒造の大吟醸”結人”と、三重のしずく取り大吟醸”而今”、それにやは
   り飲みなれた好みの酒、青森県・西田酒造の純米大吟醸”田酒”であろうか。

    この日出品された銘酒リストを記載するので、これぞと思う銘柄があったら買い求めたら如何でしょうか。
   とにかく、大吟醸と一口に言うが、「吊し絞り」「袋絞り」「袋吊り」「木桶仕込み」「斗瓶取り」「しずく取り」など、
   多様な伝統の技法で作られた秘伝の銘酒揃いなので酒通には堪らない誘惑となることだろう。
   美酒と美味しいツマミに大満足した春宵一刻値千金の鎌倉の夜であった。


@全国新酒鑑評会本年出品酒の部

<青森> <醸造元> <秋田> <醸造元> <山形> <醸造元>
 豊盃  三浦酒造  一白水成  福禄寿酒造  菊勇  菊勇酒造
 安東水軍  尾崎酒造  まんさく花  日の丸酒造  上喜元  酒田酒造
<福島> <栃木>  楯野川  楯野川酒造
 阿武隈  玄葉酒造  千禽  せんきん  山形正宗  水戸部酒造
<茨城>  鳳凰美田  小林酒造  出羽桜  出羽桜酒造
 来福  来福酒造  開華  大一酒造 <千葉>
<群馬> <東京>  甲子正宗一喜  飯沼酒造
 結人  柳澤酒造  金婚正宗屋守  豊島酒造 <山梨>
<新潟>  澤の井  小沢酒造  笹一  笹一酒造
 〆張鶴  宮尾酒造 <長野> <静岡>
 八海山  八海酒造  麻輝  酒千蔵野  臥龍梅  三和酒造
 想天坊  河忠酒造  豊香  豊島屋酒造  開運  土井酒造
 村祐  村祐酒造  佐久の花  佐久の花酒造  志太泉  志太泉酒造
 清泉  久須美酒造  鼎  新酒銘醸 <石川>
<愛知>  大信州  大信州酒造  常きげん  鹿野酒造
 九平次  萬乗酒造 <三重>  遊穂  御祖酒造
 義侠  山忠酒造  而今  木屋正酒造 <鳥取>
<岐阜>  大田  大田酒造  千代むすび  千代むすび酒造
 小左衛門  中島酒造 <滋賀> <大阪>
<奈良>  浪の音  浪の音酒造  さか松  浪花酒造
 篠峯  千代酒造  琵琶の長寿  池本酒造 <兵庫>
<和歌山> <島根>  奥播磨  下村酒造
 車坂  吉村商店  月山  吉田酒造  小鼓  西山酒造
 超久  中野BC  扶桑鶴  桑原酒造 <広島>
<岡山> <山口>  雨後の月  相原酒造
 酒一筋  利守酒造  雁木  八百新酒造 <佐賀>
<高知> <愛媛>  万齢  小松酒造
 安芸虎  有光酒造  石鎚  石鎚酒造  鍋島  福千代酒造


A純米大吟醸の部(定番の大吟醸で今春出品酒)

<青森>  <醸造元> <福井>  <醸造元> <富山>  <醸造元>
 田酒  西田酒造  黒龍  黒龍酒造  北洋  本江酒造
 菊駒  菊駒酒造  花垣  南部酒造  真鶴  田中酒造
<山形> <山口> <石川>
 十四代愛山  高木酒造  獺祭  旭酒造  天狗舞  車多酒造
 十四代龍の落とし子  同上  貴  永山本家  宗玄  宗玄酒造
<栃木> <秋田>  萬歳楽  小堀酒造
 愛の澤  愛澤酒造  新政  新政酒造 <大阪>
<神奈川>  福の友  福の友酒造  秋鹿  秋鹿酒造
 天青  熊沢酒造 <福島> <島根>
<奈良>  天明  曙酒造  豊の秋  米田酒造
 春鹿  今西清兵衛  奈良萬  夢心酒造  王禄  王禄酒造
<京都> <静岡> <愛媛>
 玉川  木下酒造  磯自慢  磯自慢酒造  日本心  武田酒造


B純米吟醸、酒米3種飲み比べの部(鎌倉清酒研究会特選出品酒)                C仕込み水;千禽、八海山、天青。

 酒名   醸造元    酒米3種
 日高見  宮城・平孝商店   愛山・山田穂・渡舟
 飛露喜  福島・広木酒造   山田錦・愛山・五百万石
 花陽浴  埼玉・南陽酒造   山田錦・八反錦・美山錦
 千禽  栃木・せんきん   ひとごこち・亀の尾・雄町
 龍神  群馬・竜神酒造   亀の尾・阿波山田錦・播州山田錦
 而今  三重・木屋正酒造   千本錦・五百万石・八反錦
 凱陣  香川・丸尾本店   赤磐雄町・讃州雄町・亀の尾