農業と漁業。 16,05,01

   「かばねやみ」という私の田舎の方言がある。物ぐさ、又は怠け者とでも訳せ
  ばいいだろう。やればできるのにやらないのが「かばねやみ」の真骨頂である。

   子供のころから「かばねやみ」の私は、手間のかかる事は苦手だった。幼馴
  染のMちゃんも同様の「かばねやみ」で、仲がいいのに昔から今に至るまで相
  変わらず連絡も取らず疎遠を決め込んでいる。お互い気持ちが良く判っている
  から、「かばねやみ」らしく、阿吽の呼吸でそれなりに消息を確かめ合っている。

   生家が商家だったので農業には縁がなかったが、根気のいる畑仕事などは
  間違いなく不向きな仕事だっただろう。今住んでいる我が家の庭に、その気さ
  えあれば野菜の1つも植えられるのに、それをしないのは「かばねやみ」だか
  らである。

   その私が、あろうことか最近畑仕事に手を出し始めた。会社時代の元部下
  で、今は釣りクラブの幹事役をしているS君からの誘いで、5人ほどで空地の
  一角を借りて畑にしようという提案だった。物好きなことだが、この年になって
  初めての経験なのでこの共同出資の誘いに乗った。

   S君の実家は福島の農家だから畑仕事はお手の物である。素人にも手取り
  足取り指導してくれる。まずは全員で荒れ地を耕運機で掘り起し雑草を取る
  作業をした。およそ30uの荒れ地だが畑に整地するのには結構手間暇がか
  かる。土を掘り起こし、雑草を取り、鶏糞などの飼料を散布して初日を終えた。
  数日後栄養の行き渡った土を畝にして、種と苗を植えた。何とか畑らしくなった。

      

   手前の2畝には大根の種を、次の2畝にはカブの種を、次の2畝にはキャベ
  ツの苗、続いて枝豆、最後の畝にはサツマイモ、少し離れた一角に南瓜の苗
  を植えた。念入りに水をやって作業を終えた。あとは時々来て雑草を取って
  水をやり、芽が出たら元気そうな芽を1本だけ残して余分な芽を間引き、苗の
  成長を促すとの事だった。弱肉強食、優勝劣敗の世界がここにもある。

   自分のエリアの雑草は自分の責任で草取りをする。収穫は2〜3か月後で、
  自分のエリアの野菜を持ち帰ることになる。秋にはまた秋の野菜を植える予
  定との話だった。自給自足、とうとう「晴耕雨読」の身になってきた。今までは
  「晴耕雨読」ならぬ「晴釣雨碁」と自分を表現していたが・・・。

   何とも楽しみなことだが、腰痛を抱える身にとっては草取りの作業は辛い。
  畑仕事の好きな孫と家内を連れてきて、応援させようと秘かに画策する爺で
  ある。

   農業や漁業は第一次産業である。永年自動車造りという第2次産業に関
  わってきたが、老年になって畑仕事(農業)や釣り(漁業)という第一次産業を
  趣味にするとは夢にも思わなかった。「かばねやみ」には考えられない出来事
  だが、何事にも興味を持ち好奇心を失わないのが老人の生きがいとでもいう
  ものだ。だいいち歩くことに負けず劣らず健康に良い。さてどんな収穫になる
  か、2か月後が楽しみである。

   一方漁業(釣り)の収穫の魚を加工する2次産業としては、新しく燻製造り
  に挑戦している。もっぱらイシモチを干物にしてそれを燻製にするのだが、
  これが評判がいい。燻製造りを始めた時には段ボールの燻製器を使ったが
  今はアルミ製の燻製器を買って使っている。


     

   最近ではチーズの燻製にも挑戦している。市販のチーズのブロックを燻製
  にするのだが、火力の加減と燻製時間に少々コツがいる。油断するとチーズ
  が溶けだしてべたべたするし、表面が焦げすぎる事にもなる。

   しかしチーズの燻製はお酒のツマミには最高。日本酒よりも洋酒がいい。
、 ブランデーやバーボンにはもってこいのツマミで、これも悪友達のすこぶる
  評判になっている。