映画;「家族はつらいよ2」鑑賞。 ![]() 山田洋二監督の今評判の映画 「家族はつらいよ2」 を見てきた。 このシリーズの第1作目の「家族はつらいよ1」は老夫婦の離婚騒動を、2作目は 免許証返上をテーマにしたコメディタッチのホームドラマだが、随所に昭和の香り が漂い、ほのぼのとした家族愛が感じられ、幸せな気分に浸ることができ、山田 洋二監督の面目躍如と言える映画だった。 第1作目のあらすじと感想。 1作目の「家族はつらいよ1」の見どころはやはり、「パンツも靴下も裏返しのま ま放り投げるあなたに嫌気がさしたの・・」と、妻富子(吉行和子)に離婚届を突き 付けられた夫周造((橋爪功)が、遂にハンコを押して離婚届を差し出す場面だろ う。 老夫婦の寝室での会話には老年男のペーソスが満ち溢れている。「お前がどう してもと言うならコレを・・」 と離婚届を妻に渡し、「今まで世話になったな、ありが とう」 とようやく素直にこれまでの妻の苦労に感謝の言葉を伝える周造に、富子 は渡された離婚届を粉々にちぎり捨て、「やっぱり死ぬまで一緒にいますわ」 と 答える。この老夫婦の凝縮された少ないセリフの会話が絶妙だ。 二人の寝室のテレビの前には「男はつらいよ」のDVD があり、テレビでは山田 洋二監督が敬愛してやまなかった小津安次郎監督の映画「東京物語」のラスト シーンが流れている。昭和の匂いを振り撒きながら、いかにも昭和の生き残り 世代らしい老夫婦の会話のひとコマが心に沁みた。 「ひとりになるのは嫌だ!さみしい!俺はおまえがいなくちゃダメなんだ!ごめ ん、悪いところは直すから考え直してくれ!」と、声を出さずに全身で表している くせに、やっていることは気持ちと真逆のツッパリしかできない。 昭和生まれのじいさん世代は素直にさみしいとは言えないのだと、強がってい るツッパリ老人を橋爪功が見事に演じていた。自分と重なるところを存分に見せ つけられた。 続いて昨日観た第2作「家族はつらいよ2」のあらすじと感想。 冒頭、鏡を見ながら伸びた鼻毛をハサミで切り、息子のオーデコロンを塗って、 いそいそと周造が外出するシーンから映画は始まる。心当たりのある我々老人 にはニヤリとする心憎い出だしのシーンである。 周造の愛車は傷だらけで、家族は周造から免許証を返上させたいと思ってい るが、誰が口火を切るかしり込みして猫に鈴をつける人が決まらない。ようやく 孫の嫁が説得にあたるが、周造は猛反発して家族会議になる。「この家はいつ から言いたいことを言えない家族になったのだ。」と怒る。 小料理屋の美人女将とドライブに出掛けた途中で、長らく音信不通だった高校 時代の旧友に出会う。旧友は妻と別れて寂しく安アパートの一室で暮らし、道路 工事をして生活している孤独な独り者。旧友3人が集まり、行きつけの小料理屋 でしたたかに酔っ払い、自宅に連れ帰った翌日、不遇な旧友は心臓発作で死亡 してしまう。 葬儀をする家族がいないので、市役所の埋葬に周造一家が立ち会って火葬す る。旧友の大好きな銀杏を御棺の中に一杯入れて周造は別れを惜しむ。 この映画で山田洋二監督は、高齢者の運転免許証返上という老人にとっての 一大事と、老人の孤独死という2つシリアスなテーマについて、周造一家の個性 豊かな人物像と絡ませながら観客に考えさせる。深刻なテーマだが、一方的な 押し付けにならない監督一流の優しいまなざしが感じられた。 映画を観終わった時に観衆が笑顔で帰ってほしい、という山田洋二監督が常 々意図している映画造りの思想に素直に共感し感動した第1,2作だった。 次回作が待ち遠しい。次は何がテーマになるのだろう。 |