東丹沢・七沢温泉郷。   11,10,24

    神奈川ボランティアガイド協議会の平成23年度合同研修会・交流会がご当地で開かれ、県下17団体180名強の
   会員が集まった。数えてみたら県下の各地域17団体、1150名のボランティアガイドが日々研修に励み、国内・海外
   の観光客や学生・小中学生等に地域の文化や歴史や史跡などを無償で丁寧に案内し、また団体間の交流を深
   めている。比較的初老の会員が多いが、みなさん自分の肉体的・精神的健康を維持するため極めて活発で元気
   がある。わが葉山町でも会員30名の文化財研究会がこの協議会の1団体として加盟していて各団体との交流を
   深めている。

    この日のプログラムは、来賓あいさつ、記念講演、昼食、史跡めぐりと自然散策、温泉入浴となっていた。印象
   的だったことを2〜3記しておく。記念講演の題名は「南の国から来た大山・丹沢」という興味ある題名だった。講
   師の地質学者の先生によれば、標高1600mの丹沢の地層にはサンゴやオオム貝の化石があり、山体は約1500
   万年前に海底で活動していた火山の噴出物で出来た「緑色凝灰岩」が主体だということだった。つまり海底の岩
   石が地上にせり上がって丹沢の山々を形成した証拠が「緑色凝灰岩」であり、サンゴやオオム貝の化石なのだと
   いうのです。
    ではなぜ海底の岩石が地上にせりあがったのか?東日本大地震でいやというほど報道された通り、地下のプレ
   ートは今も少しずつ動いている。1500万年前の丹沢は南の海で生まれた火山島だったが、これが少しずつ動いて
   遂に大陸と衝突する。フィリピン海プレートが大陸プレートに衝突して沈み込んで断層を作っていく。ところが何か
   の理由で2か所だけ沈み込まずに大陸に乗り上げた場所があって、それが丹沢山地と台湾東南部山脈なのだそ
   うだ。かくして1500万年前の南海の火山島であった丹沢は陸地の上にせり上がって日本でも特別な地層・丹沢山
   地を形成した。なんとも壮大な地球物語です。この周辺に温泉の水脈が多いのも火山島だった太古の昔と関係
   があって、箱根の温泉水脈とは全く関係がないというのもうなずける話だった。

    印象的だった二つ目の話。七沢自然ふれあいセンターの散策路を1時間ほど歩いて森林浴を楽しみ、七沢温泉
   の元湯玉川館で温泉に入った。この旅館は開業150年だそうで、ここの温泉街きっての老舗旅館だった。庭には
   詩人中村雨虹の童謡「夕焼け小焼け」の石碑があった。雨虹はこの旅館が好きでしばしば足を運びこの童謡を
   書き上げたとのことだった。また玄関の入り口には同じく玉川館に長逗留した漫画家の田川水泡の漫画「のらくろ」
   が飾ってあった。古い人ならだれでも知っている漫画「のらくろ」は、戦前戦後を通じて大衆の圧倒的人気を博した
   漫画だった。ノラ(孤児)の黒犬・のらくろ(野良犬黒吉)が猛犬聯隊という犬の軍隊へ入隊して活躍するというお話
   で、最初は2等兵だったが頓智にたけて仲間の人気を得て徐々に階級を上げ、最終的に大尉まで昇進する漫画
   だった。懐かしかったので写真を撮ってきた。また近くには左翼文学者小林多喜二が特高警察から一時釈放され
   たとき約一か月逗留したという離れ屋敷を見ることができた。その後再び特高警察に逮捕され築地警察署で拷問
   により虐殺されたのはご承知のとおり。暗い戦前(昭和8年)の言論統制の犠牲者の一人。
    七沢温泉の旅館
 ”玉川館”の玄関で
 来客を歓迎するか
 のように飾られて
 いる田川水泡の直
 筆”のらくろ”。