2017年今年の重大ニュース(国内外編) 17,12,25

  今年世界中の注目を浴びた筆頭は、北朝鮮の度重なる弾道ミサイルの発射実験と、これを  
 めぐるアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩党委員長の激しいバトルだろう。まるで知性
 のかけらもない悪口雑言の罵り合いで、これが人類生存にとって致命的な、核爆弾の発射ボタ
 ンのキーを握っている一国のリーダーの発言かと愕然とするエスカレートぶりだった。

  人類の絶滅(終末)までの残り時間を「あと何分」という形で象徴的に示す世界終末時計は、
 現在の2017年は遂に「2分30秒前」を示し、米ソが相次いで水爆実験を成功させた最も危険
 な年の1953年の「2分前」に次ぐ史上2番目に危険な年と認定された。
 この緊迫をもたらしたのは勿論トランプと金正恩で、これを煽っているのが安倍首相という構図
 だろう。

  一方、国内では政治をめぐる混乱が続き、与党が選挙戦で圧勝し、野党が自ら転げて大敗北
 を喫したことが第一だろう。来年も国内外ともに話題の多い年になるだろうが、少しでも平穏で
 あってほしい。

  1、トランプ大統領就任と保護主義政策。
  就任早々次々に大統領令にサインし、強いアメリカを目指す「アメリカファースト」の政策を鮮明
 にした。TPP離脱、メキシコ壁建造、難民受け入れ停止、IS壊滅、オバマケア撤廃、トヨタのメキ
 シコ工場計画を非難、などトランプ色を次々打ち出した。
 
  さらに、NAFTA再交渉、パリ協定離脱、ユネスコ脱退、北朝鮮への威嚇、エルサレムをイスラ
 エル首都と認めアメリカ大使館をエルサレムに移転する方針を示した。パレスチナはじめアラブ
 諸国が猛反発し、世界各地で
トランプ反対デモが相次いだ。

  アメリカ第一主義」は中東情勢への影響は必至であり、G7首脳宣言では「保護主義と戦う」と
 明記し、独メルケル首相は米英への強い不満をみせた。北朝鮮との緊迫状態も予断を許さず
 次第にアメリカの孤立化が目立ってきた。

  一方、アメリカがTPPを離脱したことを受けて日本とEUがEPA交渉を妥結した。GDP世界3割
 を占める世界最大規模の貿易協定が生まれ、ブランド保護規定により日本国内から「ゴルゴン
 ゾーラ」と名のつく商品が一掃される。
日EU首脳が共同声明を発表し交渉妥結を歓迎するコメ
 ント出した。日本側はチーズ、ワイン、豚肉など、EU側はもっぱら自動車関連で関税撤廃する。
 この協定は2019年に発効予定である。

  2、常軌を逸した北朝鮮。
  年初早々金正恩の実兄金正男がマレーシア国際空港で暗殺され、忠誠を疑われる親族側近も
 次々に処刑された。独裁政治、恐怖政治が続き、最も危険な板門店の国境から脱北する兵士も
 現れた。

  朝鮮中央テレビが「水素爆弾の実験で完全に成功した」との声明を伝えた。さらに8月、11月に
 は日本上空を通過する新型の大陸間弾道弾(ICBM)を発射した。
  
  弾道ミサイルの発射実験は今年15回となり、ICBM(大陸間弾道ミサイル)は高度4,000km級、
 「火星15」と命名され、北朝鮮から米国本土を攻撃できる飛距離を持つ。初めて本格的にJアラー
 トが活用されたが、避難方法に戸惑い困惑する人が多かった。

  国連安全保障理事会は北朝鮮への石油輸出を制限する追加制裁や、海外で働く北朝鮮労働
 者の原則送還などを織り込んだ制裁決議を全会一致で採択した。さらに米国は全ての国に対し
 北朝鮮との関係断絶を訴えたが、ロシア・中国は慎重な姿勢を崩さず、制裁措置が一定の効果を
 生むかどうかは依然流動的である。


  3、小池百合子氏に振り回された都議選・衆院選。
  都議選で「都民ファーストの会」が圧勝した余勢をかって、小池氏の側近の若狭勝衆議院議員
 が政治団体「日本ファーストの会」を立ち上げ、さらに小池氏がこれをアウフヘーベンする「希望の
 党」を結成して衆院選に臨んだ。
  民主党の前原代表はこの党への合流を決断したが、小池氏が「選別・排除」の入党条件を打ち
 出したため民進党は事実上分裂、「立憲民主党」が誕生した。この時点で潮目が劇的に変わり、
 選挙戦は自民党圧勝、希望の党は惨敗、枝野立憲民主党が健闘という選挙結果に終わった。   

  政界、マスコミ、国民を右往左往させた小池氏の独りよがりの独走、独壇場だった。
  
  4、日本企業の相次ぐ不祥事。
  最優良企業の不祥事が次々に露見して世間を騒がせた。世界に冠たる日本のモノ造りの危機
 が叫ばれた。要因としては、①正社員の減少、②品質の軽視、③トップの現場知らずと現場任せ。
 があげられるが、日本企業の長年のよき慣行が次第に綻び、現代に通用するように見直すことを 
 いつの間にか忘れてしまったトップの責任が根底にあると思われる。

  日産とスバルの無資格者の検査業務従事、神戸製鋼のデータ改ざん出荷、三菱マテリアルの
 子会社や東レ子会社での検査データ改ざん、に続いて東芝の不正会計露見、年末にはリニア
 中央新幹線を巡る大手ゼネコン4社談合疑惑と続いた。

  いずれの会社も1年以上前に不正を把握していながら公表を遅らせている。日本企業同士の
 取引で、不正を容認する慣例とされる「特別採用」こと特採を認め、基準を満たしていない製品を
 取引両社の合意によって出荷していたと思われる。

  東芝は原発事業(エネルギー事業)の赤字で1兆円の負債。米WHの破産法申請、保証金などを
 含めると1兆900億円の損失になる。日本企業の年度赤字額としては過去最高。財務改善のため、
 儲け頭の虎の子の半導体事業を分社化し売り出す方向にある。増資によって上場廃止を免れた
 が出資企業の厳しい体質改善の要求が予想され、東芝再建の前途は非常に厳しい。

  5、現職韓国大統領の罷免。
  3月、韓国検察は朴槿恵大統領を収賄などの容疑で逮捕し、韓国憲法裁判所は現職大統領の
 弾劾審判で罷免を決定した。これを受けて5月、韓国大統領選の投開票が行われ、北朝鮮に融
 和的な左派の最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表が勝利した。保守から左
 派に政権交代したのは9年ぶりである。親北、反日で知られる新大統領の手腕が問われる。

 

過去不正蓄財で逮捕・起訴され亡命や自殺に追い込まれている歴代大統領の例が多いが、
 
 大統領が不正蓄財事件を起こし続ける問題の原因としては「帝王的大統領制」とされる大統領の
 圧倒的な権力によって、大統領の親類や側近が「虎の威を借る」ことが可能な制度にあると指摘
 されている。
  果たして第19代文在寅(ムン・ジェイン)大統領の末路は安泰なのだろうか。腐敗の体質を持
 つ大統領側近や韓国財界との相互依存関係に毅然とした対応がとれるのか注目される。


  6、スペインの独立運動。
  スペインからの一方的な独立を宣言し、中央政府から解散を命じられたカタルーニャ自治州議
 会の出直し選挙が行われ、独立派が過半数を維持した。しかし独立支持派と反対派の勢力は相
 半ばし、政府との対立が激化して分断への懸念が広がっている。

  事の発端は、スペイン中央政府がカタルーニャ民族を軽視するような言動を繰り返したこと、
 裕福なカタルーニャ州がスペイン中央政府に収める税金に対する見返りが少ないこと、この2点
 が理由で2010年代に入って独立運動が盛んになった。カタルーニャ・ナショナリズムの一つの形
 態である。まだ血を見るには至っていないがその懸念は十分にある。

  イギリスからの独立を目指したスコットランドと北アイルランドの運動は昨年の選挙結果でいった
 ん下火になっているが、民族独立運動の火種は世界のあちこちに内在している。


  7、英政府がEC離脱を正式通知。
  英政府は欧州連合(EU)離脱を正式に通知し、離脱条件などを巡る交渉が始まった。メイ首相
 は11月、離脱日時を「2019年3月29日午後11時」と発表した。

   英国に追随してEC離脱を目指す諸勢力が他にもあり、フランス、オランダ、チェコ、イタリアの
 一部には、反EUの旗を掲げEC離脱の国民投票を求める動きがある。離脱ドミノを恐れるドイツの
 メルケル首相にも反メルケルの動きがあり、ECの将来は必ずしも安泰ではない。


  8、「イスラム国」の崩壊。
  テロ組織ISIS(自称イスラム国)がシリアとイラクにまたがる「カリフ制国家」の樹立を宣言した20
 14年以降、首都と称されてきたシリア北部のラッカが解放された。今後の戦闘は、残ったISISの支
 配地域へと移る。ISIS掃討作戦でアメリカとロシアから別々に支援を受ける地上部隊を待ち受ける
 のは、ISIS残党による徹底抗戦である。

  今後戦闘はシリア東部に移り、シリアの田舎町に逃れて住民に紛れようとするISIS戦闘員を拘束
 するための戦いはこれから始まる。ISISとその信奉者たちは、いったん表舞台から引っ込み、再び
 反攻の機会をうかがうことができる。

  そもそもISISがシリア内戦と米軍のイラク撤退に乗じて勢力を拡大できたのは、ISISの前身で国
 際テロ組織アルカイダの分派だった「ISI(イラクのイスラム国)」が地下に潜って力をためていたか
 らだった。

  ISISがイラクとシリアに築いたカリフ制国家が縮小の一途をたどっても、国外のISIS戦闘員は生
 き延び、ISISは影響力を持ち続ける。西アフリカから東南アジアにいたるまで、世界にはISISに忠
 誠を誓う武装組織の複雑なネットワークがある。

  ISISが放棄した土地をめぐるクルド人とトルコ、イラクの帰属争いは、ラッカ陥落後も長引き、もし
 交渉で決着がつかなければ、再び武力で決着をつけることにもなりかねない。

  9、天皇退位特例法が成立。
  天皇陛下の退位を実現する特例法が衆参両院本会議で全会一致で可決、成立した。
 その後の皇室会議での意見集約で、「2019年4月30日退位―5月1日皇太子さま即位・改元」
 の日程が固まった。84歳になられる陛下の願いがようやく実現する。

  10、森友、加計学園騒動。
  大阪の学校法人・森友学園への国有地安売り報道から始まり、森友学園と安部首相との関係
 が疑われる事態に発展。森友学園が運営する幼稚園での愛国的教育も話題になった。一躍時の
 人となった籠池理事長の「忖度」(そんたく)始め、「神風が吹いた」「長州の武士」など独特な言葉
 センス、キャラが注目を集めた。国会答弁での首相や官僚の巧みな逃げ口上が注目された。
  
  一方、文科省が規制していた大学獣医学部を、安倍首相の友人が理事長を務める加計学園に
 新設することが決定的になった。その選定プロセスに疑惑が噴出し連日話題となった。総理の関
 与が疑われたが、国会の追及もうやむやに終わった。

 11、新記録続々。
  将棋の藤井四段が29連勝して30年ぶりに最多連勝記録を更新した。まだ14歳の中学生プロ棋
 士ということもあり、メディアが連日報道した。陸上では桐生選手が日本人初の9秒台、9.98秒を
 記録した。大相撲では白鵬が通算1,048勝目、歴代1位記録を更新した。話題の高校球児、清宮
 少年が歴代高校新記録となる通算111号ホームランを放った。

  将棋で初めて永世7冠を達成した羽生善治氏と、囲碁で初の2度にわたる7冠独占を果たした
 井山裕太氏=本因坊文裕(もんゆう)=に対する国民栄誉賞の授与が正式決定される見通しと
 なった。

  12、揺れる大相撲。
  初場所で大関稀勢の里が横綱に昇進し、4横綱時代という華々しい幕開けを迎えた大相撲界
 だったが、日馬富士の暴力事件をきっかけに激震が走った。日馬富士の引退、白鵬と鶴竜の減
 俸、
伊勢ケ浜親方の降格処遇、八角理事長の責任にまで及び、モンゴル勢や協会との貴乃花
 親方の確執などがマスコミの話題をさらった。貴乃花親方の処遇に注目が集まっている。

  13、来年の国家予算が決定。
  一般会計の歳入額は97,7兆円、うち新規国債発行額が34兆円、実に歳入額の3分の一を
  借金に頼るという借金構造で、一般家庭では考えられない赤字予算。一方歳出のうち、国債償
  還が23,3兆円、社会保障費が33兆円だから、合わせて56兆円になり、歳出総額の3分の2
  がこの支出に充当される。国債発行に頼らない予算、つまりプライマリーバランスの健全化は
  はいつになったら達成されるのだろう。

  14、その他。
  ①  世界最強棋士柯潔(中国)9段に3連勝したGoogleAlpah碁が引退しGoogleはAlpha碁
     の開発を打ち切り、今後のAI開発に転用する。
  ②、イギリスが脱石油、電気自動車時代を見据え、2040年メドにガソリン車の販売禁止方針。
     フランス・中国も同様の方針を打ち出す。
  ③ 東京都が豊洲移転を来年10月11日と発表、小池都知事の移転延期発言から当初よりも
     2年遅れとなる。

  ④、米国抜きのTPP発効で各国が大幅合意。新たな枠組み作りが始まる。