2014年今年の重大ニュース(国内外編)14,12,10

   「現代は言葉のインフレーションの時代だ。」と詩人の谷川俊太郎が云っている。
   「言葉がストックではなくフローになっている。」とも言っている。自分の気持ちを
   伝える言葉が少なくなって、心に響かない空虚な言葉の羅列と氾濫の時代だと云える。
   この風潮はマスコミやテレビのせいかもしれないが空虚な言葉の最たるものは政治家
   の演説だ。寡黙でも志のある政治家が見つからない現在、政治家の美辞麗句を聞いて
   いると、まるでバッタ屋のタタキ売りの口上のようでつい騙されやすく本質を見抜く
   のは容易ではない。


     
今年も枚挙にいとまがないほどの出来事が世界中で起きた。ウクライナの政変とク
   リミアのロシア編入、スコットランドの独立を問う国民投票、イスラム国の建国宣言
   と無法な人質殺害、タイのクーデター、日中・日韓・日朝関係の冷え込み、アメリカ
   の人種差別問題などが目を引いた。とても十大ニュースに絞ることが出来ないので
   「重大」ニュースとしていくつかを選択する。残りは候補になった項目だけを記す。

     1、      衆議院解散・総選挙。
      
突然の衆議院解散である。今回の選挙は大義なき解散、風吹かぬ解散、アベノ
   クス解散、政権選択無き解散、などといわれ、野党は政権交代の受け皿を示
せず、
   実質的に第
2次安倍内閣の信任投票の感がある。足並みのそろわぬ野党に不意打ちを
   食わせて機先を制した自民党の「党利党略解散」であり、野党か
ら見れば選挙協力
   すらままならない「自滅解散」に等しい。
    公明党は「自民党
から離れられない下駄の雪」と揶揄され、幹部は「下駄に例え
   れば鼻緒。切れ
れば下駄は役に立たない。」とやり返す有様だから論外だし、対立
   軸の示せない
遠吠え野党ばかりなので、がちがちの自民党ひいきと共産党ひいきを
   除けば、
多くの良識ある有権者はどの政党に投票するか迷っていることだろう。

    しかし考えてみよう。民意を確認せずに集団的自衛権の行使容認を閣議決定した
   直後の衆院選である。今回の選挙は日常の暮らしの事だけではなく、集団的自衛権
   の行使、原発再稼働、特定秘密保護法、衆院定数削減の先延ばし、など矢継ぎ早に
   打ち出した安倍政権の本質を是認するかどうかの選挙であることを。

    自民優位の「1強多弱」の長期化を選ぶか、野党再編が進んだ2大政党制の再起
   動に向かうことを期待するかの岐路となる選挙である。どうしても信任できる政党
   や個人がいなければ白紙投票でいいから良識ある批判票としよう。棄権は国民の権
   利と義務放棄。とにかく投票所に足を運ぼうではないか。

     2、 STAP細胞」を巡る一連の騒動。
     理化学研究所、小保方春子研究ユニットリーダーが新型万能細胞「STAP細胞」を
   
発見し世界を驚かせた。一転して野依理事長が小保方氏の「STAP細胞」発見の論
   文は偽造・ねつ造だったと発表し、ネイチャーもこの論文を取り消した。

    この騒動で指導者の理研の笹井センター長が自殺に追い込まれ、現在もまだSTAP
   細胞の存在を再現する実験が行われている。はからずも白亜の殿堂のドロ
ドロした
   内部の権力闘争が白日の下にさらされた。

     3、      猪瀬知事辞職と東京都知事選。
     
東京オリンピック招致で男を揚げ得意絶頂の猪瀬知事が不正献金問題で足元をすく
   われ辞職。選挙戦は宇都宮・細川両氏を大差で破り舛添氏が当選。政治と金の黒い
   疑惑は国会議員や官僚だけではないと知らされた。


    4、野党の分裂・再編。
      
みんなの党渡辺代表が不正献金を受領したと報道され、弁明したが辞任。浅尾慶
   一郎氏が代表就任。後に内部分裂に追い込まれ、党の解散を決定。
維新の会が分党
   し、石原新党は「次世代の党」、橋下氏は結いの党と合体し「日
本維新の党」を結
   成。いずれもコップの中の嵐の様相を呈す。



 
  5、      相次ぐ安倍内閣の危険な閣議決定。
    @   武器輸出3原則の見直し
      新たな原則「防衛装備移転3原則」を決めた。従来の原則禁止から条件を満たせ
    ば武器輸出を認める180度の方針転換。国際的ビジネスの戦列に参加できる環
    境が整い兵器生産を得意とする企業が勢いを得た。
民生分野に限っていた途上国
    援助の
軍事利用の拡大も検討開始。その先にあるのは集団的自衛権の容認か。

    A 集団的自衛権の行使を容認。
      憲法上許容されると閣議決定。従来の政府見解を大きく逸脱した解釈改憲。悪の
    記念日
140701個別自衛権、集団的自衛権、集団安全保障の全てが可能に。
    憲法
9条の骨抜き。憲法の番人の歴代法制局長官の権威はいずこへ。
      国会審議を経ずに憲法解釈で戦争を可能にした安倍晋三。改憲再軍備主義者の
    岸信介の悲願実現に向けて直系の孫がひたすら突き進む。


    B 特定秘密保護法の制定。
      多くの疑問点を内包したまま戦前の治安維持法を髣髴させる特定秘密保護法が
    昨年末強引に国会で強行採決され今月から施行される。首相よ、何故急ぐ!


   
6、      世界各地で民衆の抗議デモ・政変。
    @ ウクライナのデモ・政変。
      反政府デモ(EU寄り)と政府軍(親ロシア)が対立し死者多数。EU派のクー
    デターで政府樹立。親ロシア派は自らの正当性を主張しロシアはクリミアの既得
    権益保持のため軍隊出動。プーチンは強硬、米国はロシア非難。クリミアはロシ
    ア系人種が多く、クリミア自治政府樹立。住民投票でロシア編入賛成98%、ロ
    シアはロシア系住民保護のためクリミア半島のロシア編入を決定。


      クリミア半島にロシア系の人種が多いのは、100年前のサイクス・ピコ協定で得
    たクリミア半島から多くのウクライナ人を大陸に追放し、代わりにロシア人をク
    リミアに入植させた、いわゆるスターリンの南下政策が齎したもので、それが今
    の紛争の火種になっている。
     身近な問題としては、北方
4島の住民がロシア人化しており、ロシアは北方4
    を第
2のクリミアと目論んでいるのかもしれない。

    A タイで政府側・反政府側のデモ。遂にクーデターへ。
      タイでクーデター。軍が遂に動いた!全権掌握、国家平和秩序維持評議会を立ち
    上げプラユット陸軍司令官が首相代行。政府側(タクシン派)と反政府側(反タ
    クシン派)の要人を多数拘束し評議会への出頭命令。非常事態宣言と国会[上院]
    の機能停止、夜間外出禁止。国王の高齢化もあり軍政から民政への移管の道遠し。


    B スコットランドの独立デモ。遂に国民投票へ。
      住民投票の結果は「独立NO」が多数を占める。Great Britain として留まる民意が
    
50%を超えた。しかし住民の半数が独立を願っている現実を英国政府は重く受け
    止めることになった。


    C 香港反政府デモ(雨傘革命)。
      中国政府は12制度の下に、社会主義政策を将来50年にわたり香港で実施しない
    ことを決め、香港を中国の特別行政府とした。(
1984年)
      この高度な自治が認められている香港で、次回の2017年香港特別行政区行政長官
    選挙で行われる候補者は、中国政府の任命する指名委員会の過
半数の支持が必要と
    決定した。指名委員会の多数は親中派で占められているため中央政府の意向にそぐ
    わない人物の立候補は事実上排除されるとして、学生らが授業をボイコットし次第
    に大規模なデモに発展した。
     現在収束中と報道されているが、約束事を守らない中国政府のしたたかな香港
    掌握策に非難が集まっている。それにしても学生デモはいかに正義でも長続きで
    きない限界がある。


    D アメリカで白人警官による黒人射殺抗議デモ。
      白人警官による黒人少年射殺、続いて白人警官が無抵抗の黒人男性を羽交い絞め
    にして死亡させる事件が勃発し、白人警官が相次いで大陪審で不起訴となった。
    これに抗議して全米各地で抗議デモが起きている。
米国の根深い病巣は人種差別
    と拳銃保持。根本的解決の道は遠い。
    人種差別は白人対黒人に留まらず、最近とみに増加しているヒスパニックと中国
    系人種との人種差別問題が浮かびつつある。近いうちにオバマに代わる新たな
    有色人種の大統領出現も有り得ると噂されはじめた。人種差別の病巣は絶えそう
    にない。


   7、      イスラム国建国。
      中東で衝撃的な新たな事態が起きた。
    イスラム教スンニ派の過激組織がイラクとシリアの国境地帯に突然イスラム国の
   建国を宣言した。勿論世界はこの国を認めていないし周辺のシーア派、スンニ派、
   イスラム諸国からも国家として承認されていない。


     彼等は第1次世界大戦後のオスマン帝国崩壊による国境制定に反旗を翻し、新たな
   国の線引きを宣言したのである。
100年前の第1次世界大戦後に、イギリス、フラン
   ス、ロシアがオスマン帝国崩壊後の領土をシリア、レバノン、イラク、ヨルダンに
   勝手に分割し「列強の国境」を勝手に決めた悪名高き秘密協定(サイクス・ピコ協
   定)をアラブ人が否定したことを意味している。

    ガザへの地上侵攻を続けるパレスティナ、ロシアへの帰属を求めるクリミア半島、
   これら世界を揺るがすアラブ紛争の事態はすべてサイクス・ピコ協定のもたらした
   悲劇と云える。従って紛争の原因を作った当事者の欧米諸国は脛に傷を持つゆえに
   手を拱くしかなく、ただ事態を見守っているだけである。


     一方、相変わらずイスラエルのガザ攻撃が続いている。イスラム原理主義組織ハマ
   スとの戦いは激化し、ガザにあるハマスのイスラエル侵攻用の地
下トンネルが破壊
   され、死者は
1000人以上に及んでいる。

  8、マレーシア航空機が相次いで遭難。
    @ マレーシア航空機がインド洋で行方不明に。事故か、撃墜か 原因不明のまま
     いまだに真相は謎のまま。

    A マレーシア旅客機 オランダ発ウクライナ上空で撃墜され300名以上が死亡。
     撃墜したのはウクライナ軍か親ロシア軍か?どうやら親ロシア軍らしい。
     マレーシア機遭難は今年
2度目。対露批判強まる。しかし何故迂回せずに危険
     なウクライナ上空を飛んだのか?


   9、小笠原近海に中国の密漁船が大挙して出没。
     連日100隻を超える中国の密漁船が小笠原近海に大挙して出没し赤サンゴを密漁。
   中国では厳しい罰則だが日本は軽い罰則。日本は警備の強化と罰則の強化を決めた
   が日本の警備体制が手薄なのをあざ笑うように振る舞った。なぜか先日示し合わせ
   たように一斉に姿を消した。


  10、中国の「力による公海の実効支配」
     豊富な海底資源を持つ南シナ海の領有権を巡って周辺国の紛争が絶えないが、
   近年中国が「力による公海の実効支配」を強め、ベトナム船、フィリピン船との
   衝突・接近のトラブルが急増している。
これに対して東南アジア連合(ASEAN
   が懸念を表明したが中国の領海拡大の野望は際限なく広がっている。東シナ海の
   尖閣諸島近海と南シナ海は中国に対峙していま紛争の火種。


  11、日朝会談再開と日朝関係。
     横田夫妻がモンゴルで孫と初対面。北朝鮮と日本が拉致の再調査で合意。
   北朝鮮が拉致被害者と行方不明者らの安否を調べる特別調査委員会を発足させる
   異例の調査体制。
日本政府はその本気度を評価し独自制裁の一部解除と経済支援
   の方向。
しかしその後新しい進展はなく予断を許さない。
    その間、北朝鮮は今年
2度目の日本海に向けてミサイル実験を強行。中韓接近、
   日中首脳会談、中朝関係悪化の焦りで、日本に軟化政策(拉致事件解決と経済制
   裁解除)とミサイル実験という硬軟使い分けか?


  12、  韓国客船セウォル号沈没。
     仁川玲島付近で沈没し300名超の死者。船長が救助放棄で脱出し非難を浴びる。
   続いてソウルの地下鉄事故発生で多数の犠牲者発生。
事故の連続で政府・大統領
   への不信。「日本に学べ」の声多し。


  13、  欧州宇宙機関(ESA)が無人探査機を打ち上げ成功。
     打ち上げた無人探査機ロゼッタと切り離された小型着陸機フィラエが10年の旅を
   経て史上初めてチェリモフ・ゲラシメンコ彗星に到着。太陽系誕生の成りたちの
   解明に期待がかかる。

      ロゼッタ・・ロゼッタストーン(エジプト・ヒエログリフ)
      フィラエ・・ナイルに浮かぶフィラエ島のオベリスク(石柱)

  14、  ノーベル物理学賞
      青色発光ダイオード(LED)を発明した日本の3人の科学者に授与。名城大学
    赤崎勇教授、名古屋大学天野浩教授、米カリフォルニア大学中村修教授に。


  15、    朝日新聞社木村伊量社長が引責辞任。
     ・福島原発事故当時の吉田証言の誤報。
     ・従軍慰安婦問題の長年にわたる誤報。
     ・池上氏コラムの不掲載の不手際。  の一連の不祥事の責任を取り。

  16、   天変地異が相次ぐ夏。
     降れば洪水、照れば干ばつ。吹けば竜巻。昨日まで何十年も続いた無事も今日
   の安全に太鼓判を押してくれない。
    ・広島大規模災害、局所的集中豪雨が九州・西日本を襲う。死者行方不明者は
     
100名以上。
      ・御嶽山が噴火。多数の死者、行方不明者。各地で噴火頻発。地震国日本。
      ・日本の各地で猛暑日(37度以上)が続く。熱中症の多発。昔は30度越えが
     猛暑日だった。


 17、西アフリカでエボラ出血熱で多数の死亡者。
     致死率が異常に高く6090%。ワクチンが発見されず、アメリカCDCが警戒度
   を最高の「1」に!感染者の隔離と空港の水際作戦が厳重になる。

     代々木公園ではデング熱患者発生。

 18、年末にかけて急激な円安が進み、悲喜こもごも。
     円相場が2007年以来7年ぶりに1ドル120円の節目を超え、輸出関連企業は為替
   差益で潤い、原材料を輸入に頼る内需型企業は原料の値上げに苦しむ。大企業と
   中小企業との格差
は広がる。食料品の値上げラッシュが続き家計を圧迫し、原油
   が下がりガソリンは値下げ傾向。
「急激」はいかなる場合もダメージが大きい。

 19、IPS細胞初の移植手術成功。
     黄斑変性患者の眼の手術で退院。理研の名誉挽回の朗報。他の分野での応用に
    期待膨らむ。


 20、原発再稼働の胎動。
     鹿児島県知事が九電川内原発再稼働に同意。安全神話の復活。柏崎刈羽原発、
   九電玄海原発、大間原発が相次いで再稼働申請か。のど元過ぎれば・・・。


 21、沖縄県知事選、現職の仲井眞知事が敗れ翁長氏勝利。
      辺野古移転再び暗礁に。

 22、富岡製紙工場群が世界文化遺産に登録決定。

 23、第2次安倍内閣の新閣僚に不祥事が連続発覚。
      小渕経産相、松島法相、W辞任。

  24、消費税8%に増税。
      4月から5%→8%に増税された。引き続き10%に引き上げに予定されている。

 25、オバマ大統領が国賓として来日。
      首脳会談。強固な日米同盟をアッピール。TPP、安全保障、靖国、ウクライナ
    制裁、尖閣、竹島、北方
4島、日韓・日中の冷え込み等、難題山積。

 26、APECで安倍首相と中国習首相が会談、
      30分のみ。習氏硬い表情で無言。しかし雪解けの始まりを期待する。
      これに刺激されてか韓国の朴槿恵大統領が日中韓の首脳会談に言及し始めた。

 
27、昭和の囲碁の巨星呉清源死す。

 
28、ソチ冬季オリンピック。日本勢振るわず。

 
29、中国が軍事予算を拡大。
    前年比+12%、日本の2,7倍の12兆円規模。


 
30、日韓・日中の冷え込み続く。
     日露も雪解けの気配があったが、ウクライナ問題での米欧の制裁で日本は板挟み。
   北方4島のロシアによる実質支配が強まる。(空港建設、住宅道路などのインフ
   ラ整備、政府要人の視察)