2012年今年の重大ニュース(国内外編) 12,12,17 今年も選ぶのに苦労するほどたくさんの出来事が日本や世界で起きた。簡明に言えば 経済面での「世界同時不況」と政治面での「世界同時不安」がことごとく日本に強く影響を 及ぼした年といえるかもしれない。ギリシャに端を発した欧州の通貨危機は円高を助長し て日本経済を失速させ立ち直りの兆しも見せないし、一方EU諸国の雇用不安を抱えた 政治不安や、東アジアの領土・領海を巡る緊張状態、中東の長引く戦火も収まりを見せ ない。 今年は世界の主要国のトップが入れ替わり新しい顔になる選挙の年でもあった。 とりわけ北朝鮮を含む東アジアの安定に強い影響力を持つアメリカを初め、中国・台湾・ 韓国・日本で新しいリーダーが誕生した。再選された米国オバマと台湾の馬英九、新し く就任した中国の新星習近平、就任が確実な日本の安倍新首相、12月19日の選挙で 決まる韓国の新大統領(与党セヌリ党の朴槿恵候補か野党民主党の文在寅候補のい ずれか)達が、これからの東アジアの行く末を左右することになる。これまで以上に「世 界の中の日本」の比重が大きくなる。廣く世界に目を向け、世界の動向を読み、的確な かじ取りをすることが我が国のリーダーに求められる所以である。 1、山中伸弥教授にノーベル医学生理学賞。 自在に臓器を作り出せる IPS細胞(人口多能性幹細胞)を世界で初めて作ることに 成功し、世界中の科学者や科学に疎い人々すべてが驚嘆した。この画期的な研究成 果が一日も早く実用化されることを、どれだけの患者が待ち望んでいるだろうか。 研究成果の実用化は早くもアメリカで先行開発されていて、日本が立ち遅れていると 教授は指摘している。また、若き研究者達の待遇改善と頭脳流出防止も重要課題だと も教授は指摘している。 ストックホルムの受賞式で教授は「受賞は過去形。マラソンに例えれば今日は折り返 し点。臨床応用というゴールに向かって頑張らないといけない。」と決意を語った。 (小生の愚息は同じ目的を持つES細胞研究グループの一員だが、IPS細胞研究グル ープとのコラボが進むかどうかに私は注目している。) 2、世界の主要国の選挙と新リーダーの登場。 世界の主要国のトップが再任又は入れ替わった。アメリカ大統領選挙ではロムニー 候補を破ってオバマ大統領が再選され、これからの4年間最後の指揮を執る。 ロシアでは前大統領のプーチン首相がメドベージェフ大統領に代わって返り咲いた。 フランスではサルコジ大統領に代わってフランソア・オランドが大統領に就任した。イタ リアのモンティ首相は緊縮政策に対するj国民の不満から辞意を表明している。選挙の 洗礼を受けないドイツのメルケル首相、英国のキャメロン首相を加えた欧米主要国の トップがこれからの世界の政治のリーダーとして君臨する。 一方、東アジアの平和と安定のカギを握る日本・韓国・中国・台湾も新しいリーダーが 登場した。日本は安倍晋三、韓国は新大統領、台湾は馬英九。特に北朝鮮の金正恩 新体制に大きな影響力を及ぼす中国の習近平党総書記の動向が注目される。 3、衆議院解散と総選挙。自民圧勝・民主凋落。 民主党が歴史的な大惨敗を喫し、自民党が雌伏3年、遂に単独300議席に迫る勢い で圧勝して政権トップに返り咲いた。民主党の3年3か月の政権運営は否定され、安倍 流の金融政策を軸とする景気浮揚策と右寄りの政策が国民の圧倒的な支持を得た。 民主党の敗北は「過剰な期待と過度の失望」の民意だろう。既存政党に飽き足らぬ第 3極政党が乱立して多党競合選挙になったが、第3極が票を奪い合い、自民党が漁夫 の利を得る結果となり、「維新」と「みんな」の健闘が光っただけで他党は大きな台風の 目にはなり得なかった。 この選挙では右寄りの政策を掲げた政党が大幅に議席を伸ばしたのが特徴的だった。 自民党安倍総裁は岸信介元首相の直伝そのもので、改憲と集団的自衛権・国防軍創 設を政策の中心に掲げて圧勝したし、「太陽の党」を解党して橋下徹の率いる「日本維 新の会」に合流した石原慎太郎代表は、かっての青嵐会を髣髴させる超タカ派の本領 をむき出しにして安倍総裁の持論にエールを送り民主党に並ぶ勢力を確保した。 一方存在がかすんだ「国民の生活第一」の小沢一郎は、巻き返しを図るべく人気の 滋賀県嘉田知事を担ぎ出して「日本未来の党」を立ち上げさせ、「小沢隠し」の隠れ蓑 のように合流したが、国民に見透かされ政界のキャスティングボートを握る勢力を得る ことが出来なかった。橋下氏も嘉田氏にしても政界のドン達と合流したことで本来の清 新さを失ったきらいがあった。 思うに、今の政治は戦前の2大政党時代にどこか似ている。民政党と政友会は党利 党略の争いを繰り返した。首相はころころと代わり閉塞感から民心は政党から離れ、 軍部が政治を牛耳っていった。 今日、憲法改正による集団的自衛権の容認、国防軍の設置、強い日本の再生を唱 える超タカ派の台頭がそれによく似ている。今選挙で国民は右寄りの自民党の政策に 「イエス」を投じたが、慢心して国民をミスリードしないことを切に願うのみである。 今選挙の争点は、原発、TPP,増税、防衛・外交、景気回復だった。不思議なことに 一向に進まぬ沖縄普天間基地問題と災害復興政策は主要な争点にはならなかった。 4、尖閣列島国有化で日中が対立。貿易・交流が後退。 日中国交回復は1972年。日本の田中総理〜大平外相のコンビ、中国は毛沢東〜 周恩来が仕切って日中共同声明を発表した。両国の間で尖閣列島の帰属問題には お互いに触れないことが暗黙の合意だった。これに触れれば国交回復交渉が吹っ 飛んでしまうことを日中首脳が熟知していたからである。40年を経た今日、帰属問題 が火種となり両国の関係が極端に悪化している。 日本が尖閣列島を国有化した直後、周辺では中国海洋監視船の領海侵入が多発し、 中国軍艦も尖閣に向かう動きをしばしば見せ、最近では中国機が尖閣領空を侵犯し、 空と海からの示威活動が激しくなった。中国民衆の反日デモも多発し、経済交流は後 退し日中双方の強硬な動きはエスカレートするばかりである。事の発端はすべて石原 東京都知事の尖閣買い取り提案に発している。これが中国を刺激した。 自民党は尖閣列島問題では強気の姿勢が際立っている。政策集では「公務員の常 駐、周辺漁業環境の整備。」を謳い、灯台・船溜まりを作って実効支配を強める狙いだ。 この姿勢に維新の会の石原代表も100%共鳴している。憲法改正による集団的自衛 権(米国が攻撃されたら米国と共に日本は攻撃に参加すること。)の行使では、自民・ 維新は全く同じ政策だ。まさしく安倍・石原の連合艦隊の様相を呈している。 力で実効支配を強化すれば中国政府や民衆が「尖閣は日本領土」と納得し領土問 題が沈静化するであろうか。否、決して中国民衆は納得も屈服もすまい。中国民衆が 子々孫々まで認める筈がないことは極めて自明の理である。 1972年の日中国交回復の原点に戻って、「将来まで不問に処す。」とするか、または 尖閣を「火種の島」として両国が合意し、永久に帰属の主張をしないことが出来ない ものか。触れれば必ず双方火傷をする。なにせこの問題に火をつけたのは日本である。 武力を背景にした力の外交ではもはや解決しない。 隣国の大国中国大陸は未来永劫厳然として存在し続ける。両国の友好善隣外交の 知恵には未来がかかっている。 5、北朝鮮がミサイル発射に成功、拉致問題協議が中断。 遂に北朝鮮が「人工衛星打ち上げ」名目の長距離弾道ミサイル発射実験に成功し、 ミサイルに配備された物体が人工衛星の軌道に乗ったと報道された。 4月の発射実験失敗を教訓に慎重に準備したものと思われる。世界の主要国が一斉 に中止を勧告していたにも拘わらず、平和目的だと強調し、自国の権利侵害は許さな いと例によって強硬姿勢を崩さず発射を強行した。日本政府はミサイル破壊措置命令 をだし自衛隊は迎撃ミサイルを配備したが徒労に終わった。 こうした事態を受け、ようやく進み始めた拉致問題の日朝外交官レベルの接触は中 断せざるを得なくなった。金正恩体制になり進展が期待された拉致問題の日朝協議は とうとう再び暗礁に乗り上げた。 6、消費税増税法の民自公三党による成立。 野田総理が民主党の内部分裂もいとわず政治生命をかけた消費税増税法案が民 自公3党合意の上衆・参議院で可決成立した。呉越同舟、3党それぞれが思惑を持っ た合意であった。同床異夢とでもいおうか、少々滑稽な3党の駆け引きでもあった。 少子高齢化が進み社会保障費がうなぎ上りに増大している。今年100兆円を超えて 話題になったが、年1兆円規模で増え続け2025年には150兆円になるといわれている。 いうまでもなく社会保障費の大半は医療費と年金。総額の70%が高齢者向けで、これ は世界でも突出している。増大する社会保障費をだれが負担するのか?自助中心か、 公助中心か、その政策で各党が割れている。 この負担を消費税増税で賄い、国債発行等の借金によるツケを若年者に負わせな いという増税趣旨は説得力があり理の通った話である。ただデフレ化の増税はさらに 不景気に追い打ちをかけ国民の生活を疲弊させるのではないか、という反対意見や、 低所得者の負担軽減のため財源を所得税や相続税で賄うべきだとの意見も根強い。 因みに少子高齢化のデータとして厚労省は今年人口推計を公表したが、それによ ると2048年に1億人を割り、2060年には今の3分の2の8674万人になる。この人口は 昭和20年代後半に戻ることになるが、人口構成比は逆三角形になるそうだ。 働く若者が激減し、働けない老人ばかりの日本の姿を想像することは空恐ろしい。 7、日本が31年ぶりの貿易収支赤字。国の借金2011年末で960兆円に。 日本の財政は悪化の一途をたどっている。2012年度上期の貿易収支が発表され、 貿易収支[輸出ー輸入)が3,2兆円の赤字となった。比較可能な1979年以来半期 ベースで過去最大の赤字である。「欧州債務危機」「円高」と並ぶ三重苦で、輸出に 頼る日本の産業界に打撃を与えている。 欧州危機による世界経済の減速で輸出が落ち込む一方、大震災・円高の影響、原 発停止で液化天然ガス(LNG)や原油の輸入が増え、中国経済の減速と尖閣諸島の 国有化をめぐる日中関係の悪化から中国向け輸出が減少したのが主要因だった。 同時に発表された国の借金は2012年度中に1000兆円を突破するとみられている。 これは国民1人当たり752万円にあたる。新規国債が4年連続で税収入を上回り、こ の増加傾向は歯止めがきかない状況になった。もはや日本には貿易立国の面影が 無く、未曽有の借金大国の道を進んでいる。 8、大飯原発3・4号機再稼働。敦賀原発直下に活断層。 活断層の疑いがある関西電力大飯原発(福井)が、規制委員会の結論を待たずに 夏の電力不足を理由に見切り発車の再稼働をしてしまった。脱原発の道筋を示さぬ ままの安全神話への逆戻りだった。 一方、原子力規制委員会は、敦賀原発(福井県)の直下に活断層が存在する疑い が濃厚との判断を示した。この結果敦賀原発の再稼働は事実上道を閉ざされた。 早晩廃炉の可能性も高い。さらに原子力規制委員会が活断層の疑いから調査を進 めている原発は全国で6か所に及ぶ。敦賀原発の他、関西電力大飯原発(福井)、 北陸電力志賀原発(石川)、関西電力美浜原発(福井)、日本原子力研究開発機構 高速増殖炉もんじゅ(福井)、東北電力東通原発(青森)である。 今後の再稼働の際の規制も現在よりもさらに厳しくなるという。 電力会社の虜になっていた規制当局がようやくしがらみから独立して科学的な実証 によって安全性を判断できるようになった第一歩といえるだろう。原発をあてにした日 本の電源構成を維持することはもはや難しい。今更ながら地震列島に原発大国を築 いたことが悔やまれる。原発は安全面でも費用面でもきわめて不安定な電源である ことを改めて示した。 つい1年前まで、化石燃料は輸入量とコストが不安定で、地球温暖化を招くとして 「脱化石燃料・原発依存度30%→70%」をエネルギー政策の基本に置き、原発は 「クリーンで安価」と声高に国民に訴えたのは、歴代の自民党内閣であり、菅直人率 いる民主党内閣だったことを忘れてはいけない。原発の交付金で潤ってきた市町村 もまた根本的な見直しを迫られてきた。 9、ロンドンオリンピック開催。史上最高のメダル獲得。 東京とロンドンの時差は9時間である。ロンドンで午後3時に試合が始まると東京で は午前0時開始となる。ロンドンオリンピックは幾多の名勝負が繰り広げられたが、 とりわけ男子サッカーと女子サッカーは日本中が熱狂して深夜のフィーバーとなった。 私などは野球時代に育ったのでサッカーのルールも知らなかったが、今では人並み にオフサイドなどと叫ぶようになった。サッカーは目覚ましい人気スポーツになったが、 4年前の女子ソフトの熱狂ぶりは何だったのだろう。 10、中央道・笹子トンネル崩落事故。 恐るべき事故である。トンネル内の走行は事故の危険が多く、ドライバーは一様に 緊張して走るものだが、それは対向車や追い抜き追い越し、追突の危険を避けるた めであって、まさか天井の崩落などは夢にも想定していない。 9名の犠牲者を出したこの事故は天井をつるすアンカーボルトの劣化・折損が原因 だという。点検体制の不備が指摘されている。同じ笹子の下り車線でも大量のボルト の劣化が発見され、羽田トンネルなどいくつかのトンネルでも同様のボルトの劣化が 発見されて応急処置がとられた。 高度成長期から日本は道路や橋を初めあらゆる場所でコンクリート行政がはびこり 建設ラッシュに沸いた。30年から40年を経た現在、その建造物の劣化が進み膨大 なメンテナンス工事が必要になっている。おそらくこれからは新規建築費用よりも老 朽化設備の保守・保全・更新費用の予算が増加するに違いない。一般企業では当然 の経営課題なのだが国家にはこの発想があったのだろうか。老朽化する社会インフ ラの整備と防災・減災投資は喫緊の課題と判明した。この事故はそのことを改めて示 した警告でもあった。 11、その他。 @東北地方M7,2の余震と津波発生。A沖縄にオスプレー配備と基地米兵の不祥事 多発。Bメディアの虚報・誤報相次ぐ。C一触即発の中東紛争とエジプトの和解調停。 D足踏みする原発被害者対策と廃炉策。E天皇陛下冠動脈バイパス手術。F新横 綱誕生。 |