2009年我が家の重大ニュース(家族編) ![]() 世の中は景気の悪い話題ばかりで気分は何となく <shrink >状態にある。今年の我が家はこれといった epoch makingな出来事もなく、いうなれば穏やかな1年だった。私の日常も平々凡々、外に出て活動すること もめっきり少なくなり、四季それぞれに沢山ある背広もYシャツもネクタイも靴もタンスや靴箱に眠ったままであ る。たまに都会の喧騒の中に出かけるとめっきり疲れを感じる。家に帰り昼日中から風呂に入ってゆっくり寝 そべると無上に安堵感を感じる。世の中の出来事にも、身の回りの些細な出来事にも、露骨に感情を表す気 にもなれず、そんな落ち着いた生活が、以前は社会から取り残された焦燥感を感じたものだが、今はそんな 焦りなど微塵もない。窓からわずかに見える相模湾や葉山の山々、カラスやとんび、時には不気味なねずみ 色の尻尾の台湾リスなどを眺めながら、好きな文庫本を開き、週に一度来る孫達と童心に返って戯れ、孫の 成長と己の衰えを日々実感するのが最近の日常である。サミュエル・ウルマンは「情熱と好奇心をもって、未 来へ向かっていく、 その心のありようこそが青春なのだ。」と老人を励ましているが、この歳になると欲望とい うものが随分薄れてしまった。碁に勝っても自分が愉快なより、負けた相手が気の毒になる。釣り上げた魚を 見ると、隣の釣りともだちが不憫になってあげたくなる。ゴルフにも上達意欲や競争心などはとうに失った。人 間は欲があるうちが花だ。寝てもさめても、美味いものがほしく、美女に心ときめき、好奇心が旺盛で、競争 心や名誉欲に浮かれていてこそ、溌剌として生きられる。無欲恬淡なんて、老人の泣き言だといえるかもしれ ない。城山三郎の「一日一生」の座右銘が胸にしみる。こんな生活なので今年は重大ニュースといえる代物 は乏しかったが、何とか数を繕う事にする。 1、寿会ゴルフ優勝。 日経新聞「私の履歴書」に正月から細川護煕氏が自叙伝の連載を始めた。細川元首相は今は湯河原で作 陶、絵画、書道、など悠々たる生活をしておられるが、数多の名誉職就任の誘いを断って、唯一昨年春から 箱根CCの理事長を引き受けておられる。昭和13年生まれ、HC14の強者である。昨夏、40数年続く伝統あ る箱根CC招待競技・寿会(シルバークラス、参加者110余名))で図らずも優勝して、就任したばかりの細川 護煕理事長から優勝カップを手渡され祝福された。元首相との握手はまことに光栄の至りで、私の今年の重 大ニュースのトップを飾る出来事であった。 2、陶芸を始める。 別々の友人3人が期せずして陶芸を趣味としていて、しきりに私に陶芸の魅力を語り仲間に誘い込もうとして いた。曖昧にお茶を濁していたが、遂に意を決して葉山の某陶芸家の工房の門を叩くことになった。釣りや料 理の延長線としてはやはり陶芸は避けて通れない道である。作陶の魅了はまだまだ語る資格がない。今年の 作品は6品。半年ほどやったが、思う所あってしばらく中断している。遠くない時期に再開することになるだろう。 3、囲碁の指導。 古い学生時代の友人の依頼で、ご近所の老人、小学生、幼稚園児童に囲碁の指導を始めた。実は孫のはる が3歳になったら囲碁の手ほどきをしようと考えていたので、手始めの前哨戦のような気持ちで引き受けた。 市ヶ谷の日本棋院で諸道具を買い求め、数回彼の待つ団地を訪れ指導を行った。とてもいい経験をしたが、先 方の都合でその後立ち消えになっている。本命は孫に囲碁を教えることなので、嫌いにならない様に無理をせ ず、少しずつ手ほどきをしようと思案しているところ。孫は3歳を過ぎて数も数えることが出来るようになったので、 これからが幼児教育の腕の見せ所。少しでも興味を持って楽しさを知ってくれればしめたものだ。 4、釣りの回数がゴルフを上回る。 最盛期には年に7〜80回、関東と中部を中心に九州から北海道まで駆け巡ったゴルフ行脚は、とうとう月2弱、 年20回に減った。会社のOBの月1回の集まりと箱根の例会がそのほとんどである。昔はいろんな握りをやり刺激 的なプレーをしたものだが、いまはそんな過去とはまったく無縁で、上品かつ淡々無欲なゴルフである。代わって 釣りの回数が増えている。年30回のペースである。「小人閑居して不善をなす」というが、ゴルフが減ったら釣りが 増える、では私はまったく「小人」に他ならない。最近の楽しみは、釣りの仕掛けをつくることぐらいかもしれない。 5、関東周辺の小旅行。 今年はこれという旅行は出来なかった。少し健康問題があったので宿泊を伴う旅は避けてきたためである。 都合も重なって例年のいとこ会も欠席した。早春の町田・鶴川の白洲次郎邸、千鳥が淵の花見、深川の江戸情 緒探訪、初秋の上高地、裏磐梯・五色沼の紅葉。が今年の全てである。 6、料理教室 通いなれた教室通いはもう7年生。月1回3品だから年36品、7年だとほぼ250品習ったことになる。材料を少 しアレンジすればゆうに4〜500のレパートリーを持ったことになる。塵も積もればの喩えどおりだが、残念なこと はレシピがないと何一つ作れないのが玉に瑕。なかには復習する意欲の沸かない料理もあったが、和洋中のほ とんどは自宅で復習した。レシピ集を紐解いては数年前のレシピから気に入った料理を選んで家族に食べさせて いる。概ね好評である。コースのほとんどを終了したので、最後はパンかケーキになる。それで料理教室も文字 通り卒業するつもり。横浜通いはこの料理教室と囲碁教室だけなので、ふたつとも辞めると都会の雑踏からはこ れでおさらばということになる。 7、文化財研究会 定年後のサラリーマンの時間の過ごし方のキーワードは概ね「生涯学習」、「地域貢献」、「趣味」が一般的であ る。私は「趣味」に偏向し過ぎているきらいがあり、「生涯学習」と「地域貢献」は影が薄い。罪滅ぼしというわけで はないが、町の文化財研究会に入会していて、生涯学習と地域貢献の時間を少々とっている。あちこちの名所 旧跡を訪れては先人の業績を学び、同好の士(とはいっても、町のお爺さんお婆さんだが・・)と会話を弾ませて いる。新年会や花見、町のイベントへの参加などの交流もあり、地域の人達と和やかに交流するのもなかなか 得がたい経験と思っている。今年の印象的な学習は、なんといっても浦賀の古いお寺に飾られている「鏝絵」(こ てえ)であった。 8、読書は今年も文庫本中心。 「髷物」を集中的に読もうと決めてから5〜6年になろうか。池波正太郎を全て読み終え、今年で藤沢周平をほ ぼ読み終えた。全て文庫本である。二人に共通するのは、人、特に裏店に生きる日の当たらない庶民に対する 暖かいまなざし、季節の移ろいに対する細かな感覚、世の中の条理不条理に対する自在な洞察、そして散りば められた巧まざるユーモアである。これに魅せられていつしか眠る前の枕元には文庫本が必ず置かれていて眠 り薬のようになっている。これを「枕上」というらしい。いつしかどうも私の言動は彼らに影響を受けて似てきたらし い。それならばまことに光栄。自由闊達な何物にも縛られない自由人こそわたしの理想なのだから・・。 NHKでは司馬遼太郎の「坂の上の雲」が放映され始めた。私の愛読書として何回読み返したことだろう。日清・ 日露の戦いや、列強との息詰まる外交交渉、歴史上の多彩な登場人物など今でも立て板に水を流すように語る ことが出来る。203高地と旅順を見たいと思って何年経ったことか、また「坂の上の雲」を読み返そうと思っている。 9、健康(1) 暮れになると「年賀欠礼」の葉書が届けられる。今年は例年になく友人自身が亡くなり奥様からの欠礼葉書が 相次いだ。囲碁の好敵手然り、長年のゴルフ仲間然り、かって辛酸を共にした仕事仲間然りである。かと思うと 新年の賀状に「長患い」や「療養中」などの一言も散見されるようになってきた。特に今年は突然の訃報が飛び 込み驚かされた。昨日まで元気だったのに・・・。が多かった。私よりも年少者、または1〜2歳しか違わない友 人達ばかりである。もはや、高塀の上を綱渡りしているようなものでいつ落ちても不思議ではない年齢なのであ ろう。あとは塀のどちら側に落ちるのか、「地獄側」か「極楽側」か、生きてきた行状から推察するに、いいほうに 落ちる自信はあまりない。阿漕なことを沢山やってきた報いというものだろう。「峠」という文字がしきりに気にな るこの頃である。 10、健康(2) 家族・娘夫婦、孫達、みな無病息災で今年も暮れた。これが何よりの重大ニュースで喜ばしいことである。 糟糠の妻も古希を過ぎて少し血圧と太りすぎがが心配だが、元気に楽しんでアルバイトに精を出しているし、3人 の子供達は悩みを持ちながらも、自分自身の人生をしたたかに生きているようだ。息子の写真が専門誌だけで なく、元旦の日経新聞に載っていて驚かされたが、苦労しながらも着実にわが道を進んでいるようで心強い。娘 夫婦は土地を取得して年内には新築を予定しているし、孫二人は会う度に成長していることに驚かされる。何よ りも家族の健康が一番。これが今年のトップニュースであった。 ※感想。 冒頭から妙に湿っぽい話が続いて、心躍る重大ニュースにならなかったことに忸怩たる思いがしている。実際 はそんなに悲観したり退廃的な気持ちで生活しているわけでもない。まあ年寄りの加齢症か愚痴、独り言程度 に軽く読み流してくれれば結構である。これでもまだまだ人生に色気を感じながらエンジョイしているつもりであ る。来年はもう少し張りのある重大ニュースになるように心がけましょう。 |