2009年重大ニュース(国内外編) ![]() 今年を総括する1文字は「新」だそうだが、実感としては昨年以上に「変」という気がする。昨年が「変」の始まりで、 今年が「変」の広がりと深化の年だったといえそうだ。確かに政治の世界では、「核兵器なき世界」を説いた歴史的 なオバマ演説や、鳩山首相の低炭素社会を目指す意欲的な温室効果ガス低減宣言など、「新」にふさわしい新た な旅立ちの蠢動が見られたが、互いに利害が対立する国々の合意形成の困難さや、富める者と貧しい者の格差 の拡大など、現実的に見てその前途が極めて多難であることも見せつけられた。 改革とは痛みを伴うもので、その痛みを極力少なくしたり、ソフトランディングすればするほど改革の成果は縮小 するものであり、世界もそして日本も、劇薬、漢方薬、そのどちらも必要な社会になっているように見受けられる。 鋭く根が深い様々な痛みをいかに分かち合って、より大きい果実を享受するかの叡智が期待される正念場にある ように思われる。痛くない改革などはあり得ない事を世界中の民が覚悟して知るべきであろう。 1、自動車の冬の時代。苦悩する巨人、GMとトヨタ。 18世紀後半から19世紀は軽工業を中心とする第1次産業革命時代、20世紀は電気・石油中心の重工業の第 2次産業革命時代と呼ばれるが、20世紀を代表した中心的産業が自動車産業であることに異論はなかろう。50 年前、私が自動車業界に職を得た時にはこのような繁栄は夢にも思わなかった。作れば作るほど良く売れた時代 だった。その自動車産業を牽引したアメリカと日本の代表的企業が大苦戦の最中にある。GMの経営破たんとトヨ タの赤字転落である。「晴れた日にはGMが見える。」(パトリック・ライト著)で巨大なGMの腐敗体質の内幕が暴 露されはしたものの、はるか雲の上の存在だったGMが遂に経営破たんをきたして米連邦破産法11条の適用を 受け、近年破竹の勢いだったトヨタが、朝鮮動乱以来の赤字転落を余儀なくされた。もはや21世紀は自動車が 世界のリーディング・インダストリーたりうる力は失ったといえるだろう。かっての栄光を取り戻すことは出来ないと しても回復の兆しはいつになったら見えてくるのであろうか。 2、総選挙による民主党の大勝と政権交代。鳩山内閣の発足。−試行錯誤の100日ー 本来ならば、総選挙の民主党大勝と初の民主党政権、鳩山首相誕生を第一のニュースにすべきであろう。鳩山 首相は10月の所信表明演説で「現在、内閣が取り組んでいるのは『無血の平成維新』だ。国のかたちの変革の 試みだ」と述べた。私たちの前には、変えるべきものが山のようにある。地球規模の問題としてはオバマ氏が提唱 し、共感の輪を広げた「核なき世界」。先のデンマーク会合で先進国と途上国の対立があらわになった「地球温暖 化対策」……日常生活を見れば、急速に進む少子高齢化がある。「コンクリートから人へ」土建国家から、弱者も 安心して住める福祉社会への転換。格差から、働く意欲のある人が等しく報われる社会への転換。そして、戦後 の安全保障の負の部分を、沖縄という一つの県と住民に担わせてきた現実からの転換。明治以来の官主導から 民主導への政治手法の転換。デフレの進行と景気の悪化による税収悪化。難航した予算編成。鳩山内閣誕生か ら100日間の迷走はこの大転換への試行錯誤の100日間だった。事業仕分けなど庶民の拍手喝さいもあったが、 これも改革の氷山の一角に過ぎないし、3Kつまり「景気、基地、献金」と「黒幕小沢幹事長」が首相のアキレス腱 になりつつある。甘やかされて育ったお金持ちのボンボンの由紀夫氏は「考えることは立派でも決断力に欠ける」、 との評価がもっぱらだが、しばらくは統率力の行く末を注視していきたい。 3、沖縄普天間基地の移転問題で日米摩擦。 基地問題が迷走している。日米合意をみたはずの基地移転が連立3党の「県外、国外への移転」政策から揺れ に揺れ、米国との信頼関係にひびが入り始めた。移転先を巡って日米の当事者達が百家争鳴し、容易に合意点 に到達しそうもない。戦後の沖縄に担わせてきた負担の軽減がどのような形で決着するのか、まさに国家の威信 をかけた外交交渉の行く末が見ものである。100点の答えなどなかろうが、日米の早期合意が待たれるところで ある。 4、政治献金問題が民主党首脳を襲う。 西松建設の政治献金で小沢一郎民主党代表が辞任し国家権力の介入かと世間を騒がせたと思ったら、引き続 いて代表に就任し首相にまで上り詰めた鳩山由紀夫氏が今度は自身の母親からの政治献金の不正処理が糾弾 され、遺産相続6億円を支払うという不祥事が発覚した。清廉潔白を看板にしていた民主党両首脳の「不徳の致す ところ」の連発である。自民党の専売特許ではなかった。同じ穴の狢である。政治資金の透明化は掛け声だけで は実現しないとの証左をまたまた見せつけられたことになる。 5、デフレ宣言、株安、円高、税収不足、国債残高膨張。 国債発行が税収を上回るというとんでもない事態が起きることになった。09年度の税収は当初想定の46兆円 から37兆円と過去最大の目減りがほぼ確実で、これに伴う穴埋め分と緊急経済対策の財源として新規国債は 予定より9兆円多い53兆円に拡大する見込みとなった。2010年度国債発行を44兆円に圧縮する予算大綱が 示されたものの、税収はさらに悪化しそうで更なる国債発行も懸念される未曾有の危機的財政状況になった。 国債残高は09年度末で600兆円強、10年間で倍増という乱発振りである。サラリーマン世帯で考えてみると いい。給料よりも借金が多いという家計は破綻というほかはない。借金まみれの経済大国日本である。ケインズ 流の積極財政か、はたまた緊縮財政か、政府も悩みが多い。景気の悪化、デフレスパイラルがどこまで進むの か、年金生活者にとっても気が気ではない。 6、環境問題でコペンハーゲン合意形成ならず。(COP15) 注目された先進国と途上国の合意形成、2020年までの温室効果ガス削減の数値目標設定、いずれも各国の 利害対立の調整が出来ず、合意文書発表が出来ないという異例のCOP15となった。COP15は京都議定書を引 き継ぐ新たな枠組みの骨格について政治合意を作る場であり、米国、中国、インドの主要排出国に意欲的な数 値目標を掲げさせ、加えて発展途上国全体についても合意を得ようとした首脳会議であった。欧州連合、日本、 米国の主導力が問われたが、遂に各国の利害の谷間を埋めることは出来なかった。こうしている間に地球温暖 化は確実に進んでいる。IPCC(世界の科学者で作る国連気候変動に関する政府間パネル)の指摘によれば、 先進国全体で90年比25〜40%の温室効果ガスの削減が必要、と警告している。まさに待ったなし、議論の余 地など無い。鳩山首相の意欲的な目標90年比25%減は、無理な目標どころか最低限の必達目標なのである。 米・中・印などはGDP比の削減目標しか掲げておらず、経済成長に従って総排出量が増大することは確実であ る。各国の利害を超越する一日も早い合意形成を期待してやまない。これは人類の責務である。 7、オバマ大統領のノーベル平和賞受賞とアフガン増兵 「核なき世界」を高らかに宣言し各国に大きな感動を与えたオバマ大統領にノーベル平和賞が授与された。 「二つの戦争(イラク、アフガン)の当事者が終戦の実績を残していない」「言葉だけのノーベル賞」という時期尚 早論も聞こえてくるが、核兵器を唯一使用した大国アメリカの大統領だけに実に衝撃的な宣言であった。 しかし平和賞受賞直前に、早期戦争終結を目指してアフガン増兵を決定し、アフガン国内の緊迫度を増した。 ノーベル平和賞受賞演説で「正しい戦争もある!」と強調した。しかし、かって戦争を仕掛けたどの国家も開戦 の大義名分を必ず用意してきた。太平洋戦争然りである。私は思う。いかにオバマといえども「正しい戦争」など あり得ない。と。 8、日本郵政社長交代と民営化路線の見直し 小泉前首相執念の郵政民営化が形骸化される。あれほど国民に民営化の是非を問い、総選挙で圧倒的な 信を得て踏み切った郵政民営化が、自民党を脱党して国民新党を結党した小政党の亀井静香大臣に振り回 され、彼の思う壺の民営化骨抜き路線に転じた。加えて、天下りの全面禁止を掲げた民主党の路線を無視し、 大蔵省のドンこと斉藤元事務次官を突然社長に就任させた。これも人事を任されたといってはばからない亀 井静香の独断人事であった。民主党は結局この人事も追認して面目を失った。民主党は連立3党の結束維 持のため、党・総理の存在感を失いつつあり、予算編成、基地問題などで優柔不断ぶりが目立ち始めた。最 近の内閣支持率の低下が如実にそれを物語っている。 9、裁判員制度の発足 今年から裁判員制度が始まった。法律にうとい素人の民間人が急造の裁判員に任命されて、告訴された被 告人を裁き量刑を決めるという歴史的な裁判制度の改革の始まりである。経験した裁判員はみな裁判が終了 するまで緊張感の連続だったと述懐している。民間人の感覚を裁判に反映させるのがこの裁判制度の趣旨・ 目的だということだが、プロの裁判官が社会的常識がないというのも不思議な話で、量刑の重い判断を民間 人に委ねる危険さも考慮すると、この制度に疑問を持つ私は少数意見者なのだろうか。 10、新型インフルエンザの大流行 新型インフルエンザが世界中に蔓延した。2009年4月メキシコでの流行が認知された後、世界的に流行した。 WHOは世界的流行病(パンデミック)と宣言し警戒水準をフェーズ6に引き上げた。日本では、海外からの帰国 者に対して成田空港で感染防止の水際作戦を取ったが失敗し、国民の多くがマスク着用を余儀なくされ、マス ク不足現象が起きる等の社会現象となった。現在では季節性インフルエンザとほぼ同様の扱いとなっている。 本インフルエンザに対するワクチン製造が現在進んでおり、2010年3月末までに約7700万人分のワクチンを確 保する予定という。 11(番外)、ゴルフ界の新星、石川遼が話題独占。 日本では尾崎将司以来、世界ではウッズの再来かと思わせる今年の遼くんの活躍がスポーツファンの目を 釘付けにした。まだ17歳、高校生らしからぬ謙虚でソツのない受け答えは誰に学んだのだろう。どのスポーツ でも必ずスランプが訪れ苦しむ時が来る。その時を乗り切ったときに彼は真の一流ゴルファーになるのだろう。 来年もまたテレビに釘付けにさせられる。20歳までにマスターズ優勝という途方もない夢への挑戦が楽しみな 好青年の登場である。 その他、
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