2008年重大ニュース(国内外編) ![]() 今年は歴史的に類を見ない激動の2008年だった。米国のサブプライムローンに端を発した底の見えな い金融不安の国際的な広がりやドル安・円高の急進が、輸出産業を中心とした日本企業の収益悪化と株 価の急落をもたらし、加えて国内外の需要の減少が、非正規社員の大量解雇と内定取り消し等という雇用 不安を拡大した。一方では、食の安全が脅かされ、動機不明の無差別殺人が多発した。 アメリカの大統領にオバマ氏が当選して、アメリカ国民は9:11以来のブッシュ政策に”NO”を突きつけて 変化を求め、日本では安部首相に続いてまたまた福田首相が政権を投げ出し麻生政権に変わった。しかし 内閣支持率は急落して総選挙のタイミングを失し迷走した。 ガソリン価格の乱高下に国民は振り回され、ガソリン高を理由に物価は高騰し、ガソリン価格下落後も物 価は高騰したまま国民を苦しめている。年金不祥事をはじめ行政官僚の質の低下や、一部業界の隠蔽事 件は今年も相変わらず続発した。政・官・業・の極端なモラルの低下は目を覆うばかりで、こうした事件は現 代の社会風潮に敏感に反映されている証左であろうと懸念される有様だ。 こんな悪い話題だらけの2008年だったが、北京オリンピックでの数少ない日本人選手の活躍や、ノーベ ル賞に4人の日本人が選ばれる朗報などが、わずかではあるがすさんだ心を癒してくれた。今年の沢山の 暗い話題が来年以降に好転してくれることは期待しにくいが、「朝の来ない夜はない。春の来ない冬はない 。」の譬えがある。人類の英知を信じて冬の時代をしばらく耐え忍ぶ事にしよう。 1、米大統領にオバマ氏。変化を選んだ国民。 歴代大統領の中で最も人気の高い大統領はリンカーンだが、今年はリンカーン大統領の生誕200年に当 たるそうだ。この記念すべき年にオバマ氏が大統領に就任する。米国民はブッシュ大統領の行き詰った内外 政策に”NO”を突きつけオバマ氏の”change”を選択した。米国民の絶大な期待を背景に、先の見えないイ ラク政策の解決や大胆な景気浮揚策、などに当面の重点政策が向けられようが、支持母体は何といっても 伝統的な保守主義の民主党だから、対日政策での厳しい政策転換も予想される。貿易の保守主義への転 換、日米防衛の枠組みの日本の負担増などの懸念である。20日の大統領の就任演説とここ数ヶ月の成り 行きが注目される。 2、米国発の国際金融破綻。急激なドル安・円高の進行。 世界中にここまで激震が蔓延すると予想した人は多くはあるまい。正に”100年に一度”の大激震が世界 を襲った。震源地は先進国の米国である。スポーツの慣用句を使うなら、2008年は前半戦と後半戦に分か れて展開した1年だった。今年前半には、地球規模で枯渇する天然資源をめぐり各国政府が必死になって しのぎを削っていた。原油価格と商品価格は天井知らずに急騰し、各国の中央銀行はインフレの予兆をあ ちこちに見ていた。そして先進各国における景気失速については、これは必要な調整局面に過ぎないと思 われていた。失速した分は、アジアの新興国が穴を埋めるはずだと言われていた。当時さかんに「デカップ リング」議論が自信たっぷりに披露されていたのを覚えているだろうか? しかし2008年後半戦は、この前半戦を頭からひっくり返してしまった。国家の介入が現実味を帯びてきた。 金融については、世界市場の統合のペースに、政治の統治力が追いついていないことが判明した。市場同 士の連結性が日に日に緊密さを増しているというのに、各国の政府同士、中央銀行同士、規制当局同士は 全くそれに追いついていけなかった。その結果、どうなったか。本来リスクのきわめて高いサブプライム・ロー ンをなぜか「AAA」級の最優良金融商品に変身させたのが、錬金術にも似た金融マジックだったのだが、こ のマジックに内在していた覚束なさが、驚くほどの強力な毒性と感染力をもって、危機と言う伝染病を瞬く間 に広めて行ったのだ。しかしこの金融危機をアメリカ発として全ての責任をアメリカに押し付けるのは間違い だ。リスクの高いこの金融商品を「富くじの当たり札」と錯覚して我も我もと買い求めたのは誰か。欧州や日 本の金融機関ではないか。米国を信じて買いあさった責任も発行元と同じく重い。 この金融危機の地政学的な影響について言えば、これはまさに立場の逆転にほかならない。今年まで金 融危機とは、「自分」たちではない「連中」に起きることと相場が決まっていた。「連中」とはたとえば中南米と か、アジアとか、ロシアやアフリカなどのこと。しかし信用収縮は欧米で始まったのだ。台頭する新勢力の無 責任ゆえに起きたことではない。世界の最たる先進国が贅沢三昧を尽くし、規制に失敗したからこそ起きた ことだった。今回の危機においては、債権者は新興国で、債務者が欧米なのだ。2008年に起きた驚くべき 事態の、より大きな意味合いはまさにそこにある。力の趨勢が変化しつつあり、その変容に反応して既存秩 序がひび割れた。それが2008年の世界だ。中国とインドの台頭、それに相対するアメリカの衰退、そして国 際システムの力不足。こうしたことは誰の目にも明らかだ。冷戦後の世界秩序がこうやって過ぎ去って行く ことの意味を、私たちはついに知ることになったというわけだ。 3、原油・ガソリン価格の乱高下と物価の高騰。(空前のFFインフレ) この世のどこかにはいるのだろうか。2008年になると石油価格がいったんは1バーレル150ドルまで急騰 するものの、同じくらいあっという間に40ドルに向かって急落すると、そう見事に予想していた予言者が。 そして、日本のガソリン価格が190円/Lまで上昇して200円時代が当面続くと見通された中で、2008年後 半になると、あっという間に100円台まで急落すると見通した予言者が・・・。 まさに2008年は前半と後半が様変わりの様相を見せた激変の一年であった。原油の高騰を理由に電気、 ガス、水道の公共料金を初め、大型耐久消費財、スーパーの食料品から衣類、雑貨に至るまで値上げの ラッシュが続いた。いわゆるFFインフレである。あたかも消費者が負担するのが当然かのように・・・。 しかもどうだ。年度後半になって原油価格が急落しても、一度値上げした物価は即時には値下げなどはし ない。えてして世の中はそんなものだ。漁船は燃料高を理由に一斉ストをやって保証金をせしめ、釣り船 の料金は大幅な値上げをした。いまだに料金は据え置きのままで一向に値下げの機運が見えず釣り人 の不信を買っている。 先々までのすべてを見通している聡明な予言者は、無知な知識人や権力者を冷笑しているに違いない。 4、米自動車ビッグ3の経営危機。トヨタを初め輸出花形産業の収益悪化、東証株価の大暴落。 アメリカの景気減退はついにビッグ3の経営危機を招き、緊急資金援助を政府に陳情するまで追い込ま れた。市場の多くをアメリカに依存する日本の輸出花形産業は、世界各国の需要減少と予想を超える80円 台にまで達した円高のあおりを受けて、次々に生産規模を縮小するなど対策を講じたものの、年度末赤字 が避けられない見通しとなった。機関投資家は日本株を売りぬけ、株価は記録的な下落を続けた。東証株 価は一時的には7000円台まで20年ぶりの下落を記録した。年末の大納会の終値8859円は昨年末に比べ て6448円も下落した。90年のバブル崩壊時を超える戦後最大の下落率である。 一部の評論家には、日本の花形企業の輸出依存体質からの転換が遅すぎると、もっともらしく指摘する むきもあるが、国際競争力の維持・向上が企業存立の生命線・国家繁栄100年の大計、として血みどろの 企業間競争をしている厳しい戦場を知らない暴言である。国際競争力とは無縁の、国家の保護下にある 電力その他の産業人には想像も出来ない事なのであろう。ともあれ、かっての第2次オイルショックや、バ ブル崩壊不況などを見事に克服してきた強靭な底力を信じて、再び世界に冠たる日本の製造業の復権を 待ち望みたい。 5、企業の人員整理の拡大。派遣労働者、期間従業員など非正規社員の大量解雇と内定取り消し。 「企業は人なり。」「企業の財産は人材なり。」と昔から優れた経営者は言う。一方では、企業のコストの 大半を占めるのが人件費であるから、コスト削減には人件費に目をつけるのも至極当然である。国家財政 支出の議論で、官僚の人員削減が取り上げられるのと同じ理屈である。官僚の人員削減が許されて企業 の人員削減が許されない道理はない。ここに建前と本音の矛盾がいつも露呈する。ここ20年ほど前から、 固定的な人件費を変動費化すること、つまり不要なときにはいつでも契約を更新しない、生産変動の対処 上、大変便利な派遣労働者や契約社員の活用が企業の雇用対策の主流になってきた。契約期間が満了 すれば若者はすぐに他の忙しい企業を選べた。企業を渡り歩く契約社員には便利な制度でもあった。社会 にも若者の正社員離れが流行し、派遣やフリーターが「かっこいい生き方」としてもてはやされた。(もっと も、正社員になれずに不本意ながら契約社員になる若者もいたが・・・)つまり、企業のニーズと社会の風 潮が奇妙に合致した方式だった。ここに目をつけた人材派遣会社が雇用側からも非雇用側からも珍重さ れた。しかしここにきて一斉に各企業が不況になり人員整理に踏み切り、路頭に迷う労働者が多発した ので大きな社会問題化した。好況は無限に続き、雇用はいつも安定的だとの錯覚がこうした労働慣行を 生み、終身雇用は古い制度との考えが支配的になった。 何が問題なのか。人件費の変動費化を進めた企業の姿勢に問題があったのか、フリーターや派遣労働 者になる事を自ら求めた若者の風潮・労働市場の多様化に問題があったのか、立場によって議論の分か れるところだろう。いえるのは、国側だけでなく企業側にももう少し”人を人として扱うセーフティネット”を確 立しておくべきだったという事であろう。ともあれ、契約途上での契約解除や、一方的な内定取り消しや、 正社員の解雇などは、企業倫理にもとる行為であり、納得のいく方法で対処すべきである事はは論を待 たない。同時に、国内一斉不況によって食と宿を失った失業者の救済に、国を挙げての緊急対応と、かつ 中期的な対応を期待して止まない。 6、福田首相の政権投げ出し。後継麻生政権の不人気。 昨年の安倍首相に引き続いての政権投げ出しである。無責任宰相からたらい回し宰相の誕生である。 国民の審判を受けない、いや受ける事が怖い政権党の末期的症状を露呈している。支持率も危険水域 の20%まで急落した。まだ20%もの支持率があるというべきかも知れない。信頼できる健全野党が育っ ていない証左というべきか、政府・与党の強弁とも言える論理を”尤も”と納得する支持層が多いのか。 はたまた、しがらみを捨てきれない狂信的な自民党支持派の故なのか。(金に任せた横暴なトレードで 世間のひんしゅくを買いながらも、巨人びいきから抜け切れない私のように・・・。) 新内閣の、「政局よりも政策」「選挙よりも緊急経済対策重視」の方針は一理あると思われたが、その 後の首相の緊急対策構想は、族議員の抵抗に遭い掛け声倒れになり、解散の時期まで逸してしまった。 「ねじれ国会」は迷走しながらもようやく少しずつ機能し始めてきた。参議院の政策提案機能が働き始 め、衆議院でもこれに賛成する法案も現れてきた。日銀総裁空白など多少の荒療治が福田総理を苦し めた行き過ぎもあったが、野党も少しずつ大人の政党になってきた。 できるだけ早く総選挙をして国民の洗礼を受けた清新な内閣の誕生が期待される。任期満了での総 選挙は、対立軸不明の選挙、争点の見えない選挙になる。国民にとって不幸な選挙というべきである。 それにつけても残念なのは、一国の宰相にふさわしいこれといった人物が見当たらない事、昔のような 官僚を手玉に取る気骨のある魅力的な党人派の大政治家が見当たらない事である。2世、3世が巾を利 かせて政治の本流を行く選挙システムでは止むを得ない事なのだろうか。日本を背負って立つ志の高い 平成維新の志士達がきら星のように現れる事を夢見て待ちたい。 7、秋葉原通り魔事件、厚生労働省元次官へのテロ事件など動機不明の殺傷事件の多発。 動機不明というべきか軽薄な自己中心の動機というべきか、家族をどん底に突き落とす恐るべき殺傷事 件が今年も多発した。どのような犯罪でもそれなりの動機があるものだが、最近の凶悪事件は単純な自己 中心的な思い込みの動機なのが恐ろしい。「目立ちたかった。誰でもいいから殺したかった。」から、「昔の ペットの敵討ち。」など被害者の肉親にとっては泣くに泣けない悲劇というほかない。さらに親の子殺し、子 の親殺しも紙上をにぎわした。犯罪者に共通して言えるのが社会からの疎外による孤独感、落ちこぼれた 敗者の姿である。立ち直れ!頑張れ!などの勝者からの激励は彼らには通用しない。そういう励ましは勝 者の論理であって彼らの目線ではない。当然ながら今の社会にはこうした犯罪に走る潜在的な犯罪予備 軍が無数に存在すると思うべきである。「優勝劣敗」「勝ち組・負け組み」の競争社会からはみ出た社会の 風潮の写し絵がそこにはある。ならばどうするか、問題は、すぐに切れてしまう若者が育つ家庭環境、教育 環境、社会環境にある。知育偏重から徳育重視に切り替える息の長い施策が必要と思うがいかがであろ うか。 8、相も変らぬ官の不正と業の偽装事件の続出。 ここ数年毎年のように食の疑惑、偽装を取り上げてきたが、今年も同様の事件が多発した。今年はさら に監督官庁がらみの非食料米不正流用事件が発覚し、官・業の癒着、共同謀議が明るみに出た。ウナ ギや飛騨牛の産地偽装事件、老舗の「船場吉兆」廃業も今年の話題となった。中国産餃子にメタミドホス 投入の食害事件も加わって庶民の食に関する不信は頂点に達した。消費者行政担当大臣の指導力も 期待されたほどには機能していない。スーパーの食材が高騰しているのに安価な外国産は買わずに、 値段の高い安全な国産品を求めざるを得ない庶民の心情を逆なでする産地偽装事件は誠に許しがたい 犯罪だ。 これらの業の犯罪をを取り締まるべき官界にも相も変らぬ不正が明るみに出た。道路公団、社会保険 庁の公費不正使用の発覚、財務省初めとする居酒屋タクシー事件などである。官僚の税金使用に関す る驚くべき無節操な感覚はあきれるばかりである。 、 9、北朝鮮、アメリカを翻弄。拉致問題は棚上げ。6カ国協議。 6カ国協議が迷走している。6カ国といっても実態は米朝が主役で、両国の秘術を尽くした外交交渉が成 否を決める。一旦は両国の合意が形成され、北朝鮮が核冷却装置を爆破し、米国はテロ指定国家の解除 に踏み切った。しかし、査察のあり方をめぐって対立が起こり再び北朝鮮は核開発の再開を匂わせている。 北朝鮮の狙いは明確で、核を保持しつついかにしてテロ指定国家を解除させるかの一点にある。切り札の ジョーカーを握っている北朝鮮は、巧みな外交交渉で米国を翻弄し、交渉は北朝鮮ペースで進んでいる。 日本の拉致問題は棚上げされて孤立化の様相を深めている。それにしてもしたたかな北朝鮮。 10、国威を賭けた中国オリンピック。中国・チベット騒乱 中国とチベットの騒乱状態のまま、中国オリンピックが開催された。国威を世界に示す絶好のイベントだ ったが、結果は多くの金メダルを獲得したものの、民族問題の火種が暴露したことや、祭典のやらせの露 呈、祭典施設の後遺症などを残す事になった。チベット民族の最低の自治すら認めない中国政府の頑な さに民族問題の解決の難しさが窺がい知れる。中国のある温厚な知人に問いかけたら、「ひとつの中国に 組み込まれる事が少数民族にとっても幸せな事なのだ。」と烈火のように反論された。悠久の歴史に育ま れた心の大きな中国人が、何故少数民族と対話しないのか、対話による民族融和を切に願う。 11、洞爺湖サミット(F・F・F・Fサミット) 福田首相最後の晴れ舞台は洞爺湖サミットだった。主要テーマは地球温暖化対応と緊急テーマである。 焦点は、’50までの温室ガス50%減の数値目標を合意できるか、新興国(中国、インドetc・・8カ国)を枠 組みに組み込めるかどうかの2点にあった。福田首相の議長としての指導力が問われたサミットだったが いずれも不調に終わった。このサミットではさらに緊急テーマとして3つのFが議論された。いわゆる Fuel, Food, Fund,の3F、世界的な原油高、食料不足、金融不安の3つの緊急テーマである。しかし、こ れについても具体的な対応策は打ち出せず、サミット宣言は抽象的な文言に終始した。3F議論をリード すべき4つめのF(Fukuda・・福田)の力量発揮もついに空振りに終わった。 12、その他 @大分県での教員採用、昇格人事に関する汚職事件。 Aノーベル物理学賞と化学賞に4人の日本人学者。 B岩手・宮城内陸大地震。 C中国四川省大地震(死者・行方不明9万人)。ミャンマーのサイクロン被害(13万人) Dイージス艦と漁船の衝突・沈没。 E世界の内紛。(インド・ムンバイ、アフガン、パキスタン、タイ、スリランカ、イスラエル&ハマス、) |