相模湾のタイ釣り。 ![]() 10月になるとそろそろ乗っ込みタイのシーズンがやってくる。 葉山釣友会の釣り仲間のS・Iさんはかなりの釣りキチだったが、数年前にパーキン ソン病に侵され、体の自由が利かず釣りは断念している。ところが無類の釣り好きの 彼は釣りの醍醐味が忘れられず、とうとう馴染みの船宿で仕立て船を1人で予約して タイ釣りに行く準備を始めた。病膏肓(やまいこうこう)に入るとは彼の事だ。 息子さんが介添えをして費用は彼が全て負担するから、釣友会の有志に是非参加 して欲しいという。会長からもぜひ協力してほしいというので参加することにした。なに せ車いすの体なので、無理をせず出船は午前10時という楽な時間に決めていた。 タイ釣りは朝早い「朝まずめ」の時間が釣れ時なので、10時からではあまり期待は 持てないが、彼の体が第一だし、しかも無料招待なのでやむを得ない。 10月1日、釣友会の仲間5人と彼ら親子の7人で出船した。場所は相模湾の城ケ 島沖の通称「カメギネ」と呼ぶ魚影の濃い漁場だ。竿をおろすと間もなく介添え役の 彼の息子さんに当たりが来て7〜800gのタイが来た。 幸先良いと思ったが、その後終了まで誰にも鯛の姿は見えず、釣れるのはイナダ とヒラソーダばかり。それでも結構大きいから引きは強い。 青物釣りは私の趣味ではないのでイナダは1匹もあれば充分だが、他に釣れるも のもなく、時間があるのでのんびり釣り続け、結局はイナダ4匹、ヒラソーダ2匹とい う釣果だった。天気は良く、秋らしい陽気で釣り糸を垂れるにはもってこいの陽気だ った。 S・Iさんは多趣味な人で、釣りの本やエッセイなど数冊を自費出版しているかと思 えば、来月には彼の脚本・演出で芝居の公演をする。それもシェークスピア風の洋 物と江戸時代の人情物の2本立てで、役者は当代きっての有望俳優たちらしい。 また第一勧銀時代からの友人の歌手小椋佳さんの歌詞を手がける才人でもある。 さらに体が不自由なのに世界のあちこちに取材旅行に出かけるという多彩振りで、 その精力的な活動は驚異的だ。 彼が元気な時には、二人で葉山の隠れ居酒屋で時々飲み、ニューヨーク勤務時 代の釣りの逸話を随分聞かされたものだ。数々の逸話を持つ歴戦の強者の彼の 釣果はイナダ1匹だけ。それでも数年ぶりだというので満足げな表情だった。 さて料理だが、刺身を主にして残りは竜田揚げと照り焼きにした。イナダとカツオ のレパートリーは少ないし、あまり好みでもないので家内と娘家族がみな始末して くれた。それにしてもここ1〜2年タイは釣っていない。そろそろ鯛めしが食べたくな ってきた。 |