恒例のイワシメバル釣り。 ![]() 厳しい冬が明け、寒さを耐えしのいだ海藻達はぐんぐん成長し、いよいよ収穫の時期 を迎える。地元葉山の漁師たちは、2月から3月にかけて一斉にワカメやカジメの刈り取 りに海に舟を出して忙しくなる。 この時期、海辺を散歩すると打ち寄せる波に浮かんで波打ち際までワカメが漂ってく る。これを拾って家に持ち帰り、湯がいてワカメの味噌汁にしたりお浸しにしたりしゃぶ しゃぶにすると、こたえられない磯の香りがする。春の訪れは間近である。 実はこの時期、刈り取られたワカメの根の周辺にメバルが集まって産卵するといわ れている。釣り好きにとっては大きな黒メバルを狙うにはこの時期を外せない。私は いつもこの黒メバルを狙って仲間と示し合わせて葉山の地元漁師の船で出船する。 もともと釣り客を乗せるための船ではないので6人も乗れば一杯になる。チョキ船に 毛の生えたような小さな漁船である。この黒メバルを釣るエサは3~4センチほどの生 きのいいシコイワシ(カタクチイワシ)を使う。 このシコイワシを針につけて海中に投じ、元気よく泳いでいるところをメバルが飛び ついて捕食するので、我々はこの黒メバル釣りを、「イワシメバル釣り」と言っている。 地元漁師たちは仲間達との協定で、メバル釣りの解禁日を2月1日以降にしている が、近年なかなか生きのいい小振りの生餌が手に入らないらしく、3月になってようや くメバル漁ができるようになっている。 珍しく今年1月末にいい生餌が手に入ったと懇意の地元漁師から連絡があった。 3人以上なら出船するよ、というので仲間たちに声を掛けたら、たちまち6人が手を挙 げた。他にも心当たりの釣りキチがいるのだが、6人以上だと満席になって窮屈なの で6人だけにして、意気揚々と2月1日、我が家から車で10分弱の横須賀久留和港か ら出船した。 船は浅場の根魚では定評のある「かじや丸」。浅場の根魚は場荒れが少なく大型 のメバルやヒラメが連発して大変面白い釣りだ。湾内を5分も走れば目指すポイント に着く。船長は地元の漁師だけあってこの近辺の海の根は手に取るように判る。 経験豊富な船長が、代々先祖から伝わっている魚のいるポイントに舟を止めて、 いよいよイワシメバル釣りを開始した。メバルの気配を感じてシコイワシが逃げ回る 様子が竿先に敏感に感じられたら釣り上げる心の準備をする。 竿はイワシメバル釣り専用の「さくら3m」。胴調子で弾力があってよくしなるから 食いついたメバルを逃がさない。ただしハリスは0,8号という細さだから強引に釣り あげるとすぐにハリスが切れてしまうので要注意である。 竿のしなりを利用して食いついた魚の抵抗をうまくかわしながら釣り上げるのが この釣りの最大の魅力である。 片側3人で私は胴の間、つまり真ん中の座席に座ったが艫に陣取ったM君が立て 続けに30センチオーバーの巨大黒メバルを釣り上げて喚声を挙げた。カサゴはよく 釣れたがなかなか本命の黒メバルにはお目に掛かれない。早くもM君は6匹も釣り 上げたが、他の5人にはメバルのアタリは来ない。 かれこれ10時過ぎになってようやく私の竿先がぎゅんぎゅんと引き込まれた。 待望の黒メバルの引きである。慎重に引き上げ船長がタモで掬ってくれたらなんと 良型のメバルが一荷(2本バリに2匹同時にかかること)で釣れてきた。その後また また釣れて、結局26~28センチのメバル7匹、カサゴ10数匹の釣果だった。 竿頭はM君で10匹、全員そこそこの釣果だったが昨年よりは少ない。それに昨年 はヒラメが釣れたが、今年はこの海域にシコイワシが回遊してこないのでまだヒラメ は釣れていないと船長は言う。去年ヒラメを2枚釣った時の強い引きの感触を思い 出した。 帰宅して風呂に入り道具を洗って陰干しをして早々と就寝した。いつものパターン である。翌朝、魚を調理して家内の友人やご近所に少しお裾分けして、残りを冷蔵 庫にしまってある。孫達はジジババの家に来たくてもコロナの感染予防で来れない ので、老夫婦だけで煮魚にでもするつもりである。 昔はカサゴのから揚げが大好物だったが、夫婦ともに歯がガタガタなので、から 揚げをかじる事はもう無理である。やむを得ないので煮付けしかできない。 昨日は2月2日で節分。3日は春分の日。老夫婦で寂しく豆まきをした。「福は内、 鬼は外」だが、コロナという鬼はなかなか外には出てくれない。コロナとの共生が 必要ならば、「福は内、鬼も内」になってしまう。厳しい現実である。 |