ギタリスト達の饗宴。 16,07,10 今日は私の79歳の誕生日。家内が鎌倉芸術館で開催されている当代一流のギタリ スト5名による夢の饗宴と題するコンサートに招待してくれた。去年の12月の結婚記念 日にサントリーホールで日本を代表するバイオリニスト大谷康子と、ウクライナのキエフ 国立フィルハーモニー交響楽団が共演するクラシックコンサートに招待してくれたが、 去年に引き続いて老夫婦のクラシック鑑賞のデートとなった。 出演者は、ギター界のスーパースターで大御所の荘村清志、世界を舞台に活躍する 福田進一、実力派鈴木大介、若手をけん引する大萩康司、韓国生まれの新鋭・朴葵姫 という触れ込みの5名。 鎌倉芸術館の大ホール1500席は満員の盛況だった。特に年配の夫婦連れが多く、 わざわざ東京周辺からも来場者が来るというギターファンも多かった。 演奏した曲目はタンゴ、トレモロ、ヴィヴァルディのクラシック曲、などそれぞれの卓越 した技量のソロと、5人の華麗なアンサンブルまで、4時間の生演奏だったが、特に圧 巻は最後の2曲、荘村清志のギターが奏でるソロの「アルハンブラの想い出」と、5人 のアンサンブル「カルメン組曲」だった。 全てが素晴らしい演奏だったが、感想を言えば、ギター単独の演奏は繊細な調べで、 素人でも心に沁みるが、一方、迫力という面では物足りなさが残った。ギターの特性だ からやむを得ないのだろうが・・。特にカルメンなどはトロンボーンやドラムなどの勢い のある音があってこそラテン特有のリズムに迫力がでるのだが、ギター単独ではどう しても限界があるような気がした。 ともあれ家内との誕生日記念のコンサート鑑賞はよい夏の思い出の1ページとなった。 ところで、鎌倉芸術館は学生時代の思い出の詰まった場所にある。すぐそばには昔、 松竹大船撮影所があった。大船駅から真っ直ぐに歩いて松竹撮影所に至る道路は、 今は舗装されて近代的なビルが立ち並び、昔の面影はない。まして撮影所の跡地は 探しても見つからない。近くの公園の一角に撮影所の跡地を示す碑があるらしい。 この撮影所で昔よくアルバイトをしたものだ。現代のような複写機がない時代、「コピ ー」といって、役者が読む台本を何冊も手書きで写す仕事だが、日当は1日300円。 決して高くはないが安くもない、当時のアルバイトの平均的な相場だった。 当時の懐かしい撮影所の正面玄関の写真をネットで探したので拝借しておいた。 何とも懐かしい写真で、門の左側が受付のある建物で、写真では見えないが、門の 右側にも建物があって、その建物の板張りの部屋で「コピー」のアルバイト作業をし た。(記憶違いかもしれない。受け付けは右の建物だったかな?忘れてしまった。) 仕事の指示をする係りの人は女性だった。これだけは間違いない。 この撮影所ではエキストラのアルバイトもよくやった。印象的なのは「楢山節考」。 深沢七郎の原作を映画化したもので、監督は木下恵介。撮影はオールセットで外 でのロケは一切なかった。主演が田中絹代、高橋貞二、脇役に望月優子、宮口精 二など達者な俳優がそろっていた。 主演の老婆役の田中絹代は、歯を折る場面のために自分の前歯を何本か抜い て演技したというし、高橋貞二は15キロも減量したそうだ。 高橋貞二演じる息子の辰平が老婆おりんを背負って姥捨て山に捨てに行くシーン は特に印象に残っている。望月優子の演技も迫真の演技だった。赤や青の色の 照明が突然強烈に変化する舞台装置にも驚いた。 さて、そのセットの場面はよく覚えているが、肝心のアルバイトとしての仕事が何 だったかどうしても思い出せない。場面造りの力仕事だったのか、ぼろ着物を着た 端役のチョイ役だったのか忘れてしまった。 いずれにせよ50数年前の懐かしい思い出である。 |