クラシックコンサート。 15,12,20 12月19日は我々夫婦の44回目の結婚記念日なので、久し振りに東京の賑わいを 味わいに出掛けた。まずは日本橋室町。江戸の香りを残す老舗の店が多く、店先を覗 きながら歩き廻ると、時間のたつのも忘れるほどで私の好きな界隈である。 佃煮の鮒佐、はんぺんの神茂、海苔の山本、かつお節の大和屋、蕎麦の利休庵、鰻 の伊勢定、などなど池波正太郎好みの江戸時代から続く味自慢の店がずらりと並んで いる。 昼飯は路地に入った目立たない少し風変わりな店”三富魯人汁”という小さな店に入 り、店主お勧めの煮魚定食と刺身定食を食べた。日本橋は80年前に築地に移転する まで300年も続く魚河岸だったので、魚料理にはうるさい店が多いから、安心して安い 定食が食べられる。神茂と鮒佐で土産にはんぺんと佃煮を買って次の目的地に向かっ た。 室町から東銀座歌舞伎座の筋向いにある”いわて銀河プラザ”まで昭和通をかれこ れ小1時間歩き、途中でへばって宝町からたった一駅を電車で移動した。 この”銀河プラザ”で去年買った”麦芽あめ”を孫が大好きだったので、これがお目当 てだったが、残念ながら品切れだった。何品か正月の田舎料理の材料を仕入れて、次 の目的地の六本木ヒルズに向かった。 六本木けやき坂通りは、イルミネーションが綺麗で、今若者に人気のスポットである。 およそ300m程の道路の左右の街路樹を飾るイルミネーションが綺麗で、赤から一斉 に青に変わる瞬間を見たくて時間を見計らって集まってくるらしい。幸運にもその瞬間に 遭遇できた。見物客で混雑していた。 最後の目的地はサントリーホール。これが今日の結婚記念日のメーンイベントである。 日本を代表するバイオリニスト大谷康子と、ウクライナのキエフ国立フィルハーモニー 交響楽団が共演するクラシックコンサートの鑑賞である。 サントリーホールの大ホールはそれ自体が素晴らしい楽器(共鳴箱)になっていて、 消え入るようなピアニッシモの美しい響きもホールのすみずみまで伝わるように工夫 されている。音響効果に配慮されたレイアウトと座席配置になっていて、座席数はステ ージを囲んで1、2階合わせて2000人を収容できる規模である。 予約しておいた席は2階席の最前部で、割安のチケットなのだが、演奏者はもとより 指揮者の指揮ぶりを45度斜め上から間近に見下ろせるので迫真の演奏を味わえた。 演奏した曲目は、チャイコフスキーの”クルミ割り人形”ほか1曲と、メンデルスゾーン の2曲の合計4曲で、2,5時間の演奏だった。1709年製の名器ストラディバリウスを 駆使して演奏する大谷康子のバイオリンは繊細かつ流麗だったが、交響楽団を指揮 する指揮者ニコライ・ジャジューラの指揮ぶりには圧倒された。 指揮者のふるうタクトと指先、演奏者への目配りと体全体での指揮ぶりは、まるで魔 法使いのように演奏者を操り、時に細やかに時に圧倒的な迫力で全体をリードし交響 曲の演奏を盛り上げていった。 前半の第1部が終わって20分の休憩があり、第2部が始まる直前、我々の丁度真向 かいの2階席に、突然皇后美智子妃殿下が姿を現した。会場のあちこちでまばらな拍 手が起きた後、気が付いた会場の観客が総立ちになり万雷の拍手が起きた。 公務ではなくお忍びで来られたのだろう。笑顔で手を振って会場の観客にお辞儀をさ れた。会場の雰囲気は一気に変わり、前半とは違って心なしか皇后を意識した高貴な 雰囲気に包まれた。演奏が始まり、皇后は身を乗り出して聴き入り、最後のアンコール の時には観客と一緒に最後まで手拍子を続けられた。 午後9時半に演奏は終了し、帰宅したのが11時を過ぎたが、記念日に相応しい記憶 に残る印象的な一日だった。 |