お盆と鰻ー2。
  08,08,17

    今年もお盆で息子が帰省した。1年に正月とお盆の2回しか帰省しないので、
   めったに話もしないから、どんな生活をしてどんな希望や悩みを持っているのか
   知る由もない。親父失格と云われても返す言葉もない。ただ、先端生命医科学
   研究という忙しい研究者生活の中で、確実に年2回葉山の実家に帰ってくるの
   だから、大過なく過ごしているのだろう。

    息子の帰省の主目的は、親の顔を見ることと墓参りだが、加えて鎌倉の老舗
   鰻屋「茅木屋」で好物のうな重を食べる事のようだ。例年と違うのは、末の妹が
   結婚早々で、一緒に鰻を食べに行けない事くらいで、あとは例年と変わりはない。
   北鎌倉のお寺で墓参りをした後、親子4人でテーブルを囲んで鰻を食べ、兄妹
   の屈託のない笑い話に親が口を出さずに微笑むのが去年までの風景だった。

    いつものように「うな重の上」を注文し、運ばれるまでの間、これも毎年の定番
   だが、ビール1本と日本酒1本、ツマミには「板わさ」と「うなぎの肝和え」を頼み、
   息子は「やっぱりこれだね。」と相好を崩してにこにこしながら味わっていた。
   妹と一緒に飲めない1人酒だから寂しそうだった。

    鎌倉の鰻屋は「浅羽屋」が閉店したので、今では由比ヶ浜の「つるや」と、ここ
   駅前の二の鳥居の「茅木屋」が老舗の双璧で、個人の好みはあるが味はどち
   らも甲乙つけがたい。息子は「茅木屋」が大のお気に入りである。

    去年は鰻の稚魚のシラスが久し振りに好漁だったとのことで、うな重の値段は
   それほど高値にはならなかったが、今年はシラスがまた不漁らしく来年はまた
   高根の花になるかもしれない。

    うな重の「上」と「並」の違いを店主に訊いたら、うなぎの大きさと厚みの差だけ
   だという。我々老夫婦は今年も息子と同じ「上」にしたが、もう食べきれない。来
   年からは「並」で充分だ。

    昔、現役の頃には愛知県三河の鰻屋で、うな重のご飯の中にまた鰻が入って
   いる二重底のうな重をよく食べたものだ。あちらの鰻は関西風だから腹開きで、
   蒸さないから皮がパリッとして脂がのっていて香ばしい。少々硬めで弾力的なの
   で、通の関東人に言わせればゴムを噛むような歯ごたえだという。
   これも個人個人の好みだが、私は関東風の白焼きしてから蒸して焼くふんわり
   と柔らかい脂の抜けた淡白な鰻が好物だ。
 
    話変わって、先日姫路の弟夫人から、兵庫県高砂の「焼きアナゴ」が送られて
   きた。高砂のアナゴは小振りで味の良さには定評がある。関東近辺でよく釣れる
   アナゴは太くて大きい。釣るのは楽しいが、料理して食べるには関西のアナゴに
   軍配が上がる。

    さて送られてきた焼きアナゴをどうやって食卓に上げるか?思案投げ首の末、
   逗子の鰻屋で美味い食べ方を聞いてみた。答えは 「俺は鰻屋でアナゴ屋では
   ないからよく知らない。焼き鳥屋にでも聞けば・・」とそっけない。それでも多少の
   ヒントを得たので、うなぎのタレを買い求めて帰宅した。

    焼きアナゴの頭を落として身をレンジでチンして温め、アナゴ丼にして食べた。
   やはり美味かった。落とした頭は再び焼いて熱い酒をかければ「ヒレ酒」風に
   なると聞いたので、楽しみに頭を残しておいたら、いつの間にか冷蔵庫から消
   え失せていた。何も知らない家内が生ごみとして無断で捨ててしまったらしい。
   惜しい事をした。

    鰻とアナゴの精力に支えられてか、どうにか今年の夏の暑さに耐え抜いた。
   年寄りの熱中症が頻繁に報道された夏だったが、来年もまた鰻を食べてせっ
   せと散歩に精を出したい。

         徘徊と 間違えられる 朝散歩