バイオリン・リサイタル。 17,03,26

  家内の誕生祝のイベント第2弾として、川端成道のバイオリン・リサイタルを聴きに
 四谷の紀尾井ホールに出掛けた。紀尾井ホールは、我々夫婦が結婚式を挙げた
 上智大学の聖イグナチオ教会の傍にあるので、我々にとっては殊更懐かしい場所
 である。

  川端成道は幼少の頃に視覚障害を患ったが、桐朋学園、英国王立音楽院を首席
 で卒業した俊英のバイオリニストで、英国と日本を拠点に精力的にソロ活動を続け
 ていて、クラシックファンに人気が高い。


     

  今日の演目は、ヘンデル、ブラームス、メンデルスゾーン、サラサーテ、サンサー
 ンスの代表的なソナタが中心だったが、あまりクラシックに縁のない私にはメンデル
 スゾーンの「歌の翼に」など数曲しか馴染みがなかった。

  しかし川端成道のバイオリン演奏は、高い技術を駆使して、繊細で清冽な旋律を
 見事に表現して聴衆を魅了した。アンコール曲を3曲演奏したが、特に最後に演奏
 したアイルランド民謡の「ロンドンデリーの歌」に聞きほれた。

  「ロンドンデリーの歌」は、そのメロディの美しさから、沢山の歌詞が付けられて親
 しまれているが、私にはこの曲に歌詞をつけた「ダニーボーイ」が特に思い出深く
 記憶に残っている。

  「ダニーボーイ」は1914年の第一次世界大戦の前年に発表されているが、歌の内
 容は、戦争の悲劇を予見させるような歌詞で、親しい家族を戦争に送り出す親の気
 持ちが代弁されている。

  「ダニーボーイ」は沢山の歌手がカバーしている。代表的な歌手は、エルビス・プレ
 スリー、アンディ・ウイリアムス、ビング・クロスビーだが、私の好きなこの曲の歌手
 はアンディ・ウイリアムスで、高くて甘い歌声に魅力があった。

  よく何かの席でアンディ調を真似て、下手な英語で歌ったものだ。懐かしい曲なの
 で歌詞を紹介しておく。壮年以上のアンディファンのロマンチストなら誰でも口ずさみ
 たくなる思い出の曲だと思う。

    「ダニーボーイ」(Danny Boy)、

   O Danny boy, the pipes, the pipes are calling
   From glen to glen and down the mountainside
   The summer’s gone and all the roses falling
  ‘Tis you, ‘tis you must go and I must bide.

  But come ye back when summer’s in the meadow
   Or when the valley’s hushed and white with snow
   ‘Tis I’ll be here in sunshine or in shadow
   O Danny boy, O Danny boy, I love you so.


  演奏会が終わって、久し振りに聖イグナチオ教会に立ち寄り往時をしのんだが、
 礼拝堂は建て直されていて当時の面影はない。教会前の桜並木もまだ開花して
 いなかった。若い学生たちが大学構内で屈託のない笑い声で語り合っていた。

  右を見ても左を見ても学生だらけだった。青春真っ盛り、私の昔はどうだったろ
 う。果たして青春謳歌と云えるだろうか。苦学生でアルバイトに暮れ、安保騒動で
 殺伐とした時代を生き、寮生仲間との連帯だけが生きがいの青春だったような気
 がする。しかし振り返ればそれが我々安保騒動世代の青春謳歌と云えるのかも
 しれない。今の若者とは隔世の感がある。

  後年、南こうせつが歌った「神田川」ではないが、バイト帰りにタオルと石鹸を持
 って通った銭湯「松の湯」と、風呂帰りに寄った焼き飯屋の「サクラ」が懐かしい。