一喜一憂、春うらら。   24,04,20

   桜の満開はいつもほんの数日だけ、我が家のすぐ下の公園の桜は早くも葉桜が見え始めた。
  これからは目に眩しい新緑の季節になる。

   先日リハビリに通っているデイケアの若い女性介護士達に、うっかり冗談で、桜も女性も見
  頃の旬はほんの一瞬ですぐに姥桜だよ、と言ったら、それはセクハラだと笑いながら注意され
  た。慌ててそれは冗談、取り消し、と詫びを入れて許してもらった。

   私は彼女たちの話し相手としていつも格好の餌食にされるのでお返しのつもりだった。私は
  彼女たちが知らない話を色々聞かせるのでちょっとした人気者の爺さんなのである。

   我が家の周辺には桜並木のきれいな小学校や中学校があるので、新入生たちが登校する
  姿はいつ見ても可愛い。そういえば私もその昔小学生のころ、桜咲く登校道を友達と談笑し
  ながら学校に通ったことを懐かしく思い出す。

   幸い我が家の孫も晴れて志望校の高校に合格し、4月から横浜まで登校し始めた。

   樹木も人間も一斉に春の芽生えを謳歌し始めている。春うららかなベランダでコーヒーを飲
  みながら老人はそれを微笑ましく眺めている日々である。

   先日、横浜の高島屋の専門店で孫の入学祝に高級万年筆を買い求めてプレゼントをした。
  最近はボールペンやシャーペンなど安直な筆記用品が主流で、扱いが面倒な万年筆は不人気
  だが、一生の記念品としてネーム入りのブランド万年筆はやはり貴重品である。

   孫の長女にも入学祝にブランド万年筆をプレゼントしているので2人ともジジからのおそろい
  の形見として大事に使ってほしいとの想いがある。

   1月初旬に二度目の圧迫骨折をした際、MRIの画像に骨折のほかに多数の腎嚢胞が見つかり、
  癌の疑いもあるので腎臓と前立腺の検査が必要と診断された。急遽、MRI画像と紹介状を持っ
  て湘南鎌倉総合病院の泌尿器科を訪れ、血液検査ほかの検査を受け、翌週再訪問して検査結
  果を聞きに行った。

   いつの検査でもそうだが、医師の前の椅子に座って結果を聞く一瞬は不安がよぎるものだが、
  幸い腎嚢胞は良性で老人特有のものだから心配なし、前立腺検査のPSA数値も正常と言われ
  ホッとした。ここ一週間不安にさいなまれたがやっと晴れ晴れした。

   晴れ晴れした気分なので帰りに鎌倉の老舗のお好み焼きで快気祝いならぬ祝賀会をやった。
  このお好み焼き屋は学生時代から知っている懐かしい店だが今の主は3代目なのだそうだ。

   食いしん坊の私はそれに飽き足らず、花見を兼ねて日本橋に出かけた。

   三越の真ん前の室町通りにある人気天ぷら屋の「金子半之助」で、特上天丼と上天丼、ビー
  ルに冷酒を注文して舌鼓をうった。美味しい天ぷらだったが、何せアナゴ天のボリュームがあ
  り過ぎてどんぶりからはみ出す大きさにびっくり。これは若者向きで年寄りにはきつすぎる。
  家内は半分も残す有様だった。しかし人気の天ぷら屋なので入店するまでおよそ小一時間、
  30人ほどが絶えず店前の道路に並ぶ盛況だった。

   杖をついて並んでいる私のために、行列整理の店員さんが特別に椅子を出してくれ大助か
  りだった。食後、久し振りに室町通りの老舗の店々を眺め歩き、「神茂」で蒲鉾とはんぺん、
  「八木長」でソーメン、足を延ばして「鮒佐」で佃煮を買って帰宅した。


   杖をつきながらよく歩いたが、地下鉄の乗り継ぎの長い通路には辟易し、遂に腰痛が頂点に
  達してみっともないが通路に座り込む醜態を演じた。通路の所々に座る椅子が常置されていた
  ら老人や病人はどんなに有難いかと痛感した。私鉄各社にこんなちょっとした配慮を望むのは
  贅沢なのだろうか。

   結局もう一つのお目当てだった花見は中止して這う這うの体で帰宅した。
  このところ一喜一憂のひと月である。そういえば贅沢と飽食で血糖値が心配になった。