夏の風物詩。 10,08,06 陽射しはまだまだ真夏の照り返しが厳しいが、暦は早くも立秋を迎えた。朝夕には秋の気配が漂い始め、道端のコ スモスが早くも咲き始めた。 葉山の夏は、海の家が最盛期を過ぎて人影がまばらになり、森戸の花火大会が終わり、町々の神社例祭と神輿担 ぎの掛け声や盆踊りの小太鼓と盆歌が終わりを告げてお盆が過ぎると、全ての行事が終わったかのように、それまで の喧騒がうそのように静寂を取り戻し急速に秋が訪れる。 葉山の日陰茶屋をご存知だろうか。東北の片田舎に育った子供の頃、高校受験の参考書で「日陰茶屋事件」を知 った。日陰茶屋は知る人ぞ知る歴史的な茶屋で、アナキストの大杉栄が1916年(大正5年)に、この日陰茶屋で神近 市子に刺されたことで一躍有名になった。大杉栄は妻の堀保子がありながら、伊藤野枝と神近市子を愛人にしてい た多情な人間だが、野枝に嫉妬した神近市子が逆上して起こした愛憎事件だったと記憶している。大杉栄は1923年、 妻の伊藤野枝、甥の橘宗一とともに憲兵隊に連行され拷問の上虐殺される。実行者は憲兵大尉の甘粕正彦である。 思想弾圧が厳しかった暗い大正末期の事件であった。 2年の服役を終えた神近市子は、終戦後左派社会党から衆議院議員になり売春禁止法の制定に尽力した論客とし ても知られている。 このような歴史を持つ日陰茶屋だが、近年は少しお高い和食・洋食のお食事場所として、又美味しいケーキで地元 の人々や訪れる観光客の人気が高い。知性的な外人女性コラムニストが嫁いだ家庭だったことでも知られた。 毎年、葉山の夏最後のイベントのように日陰茶屋で8月の2日間夏祭りが行われ、老若男女が浴衣姿でここに集ま ってくる。広大な庭には出店が並び、金魚すくい、焼きソバ、お好み焼きなどの定番の出店、かき氷、生ビールなども 出店する。人気があるのはハッピ姿の威勢にいい若者がつく餅つきで、あんこ、大根おろし、きな粉の3種類が並ぶ。 示し合わせて娘と孫二人と落ち合い、暫しの夏のひと時を日陰茶屋で愉しんだ。孫達は焼きとうもろこし、あんこ餅、 お好み焼き、イチゴのかき氷を美味そうに食べ、私はお目当ての生ビールと樽酒を味わった。なかなか楽しかった外 出先での孫達とのスキンシップだったが、先日の「熱中症事件」以来、ほとんど外出せずにエアコンの部屋に閉じこも っていたので、帰宅後はまたまた体調が優れず変調をきたし早々に床につく始末となってしまった。 |
ジジと孫がそれぞれ勝手に自分の好きなものを味わって いる。はるはあんこ餅のかすを舐め、すずは焼きとうもろ こしの食べ残りから手を離さず、ジジは樽酒でのどを潤し ている。天下泰平の夏の風物詩である。 |