命日。    16,11,22

   私の母親が亡くなったのが平成8年(1996年)11月22日だから今年は21回目の
  命日になる。また4日後の11月26日は末娘の誕生日になるので、東京で新婚生活
  を送っている末娘が、珍しく1人で我が家に泊まりにやってきた。

   墓参りが名目だが、魂胆は親に甘えたいのと誕生日のおねだりに決まっている。
  家内は数日前から土産を用意したり、なにを食べさせようかと献立を考えたり、夜
  もおちおち眠れないとこぼしていたが、最後はとうとう父親に夕食と翌日の昼食を
  全部任せると言い出した。

   丸投げされたので仕方がなく、先頃北海道で土産に買っておいたホタテを料理し
  て夕食に供した。冷凍を解いて水気をよく拭き取り、フライパンに油をひいてよく
  炒め、塩コショウとバターを加え、白ワインで少々蒸し煮にしてからパセリの粉末
  を振っただけのホタテのムニエルである。付合せにはホタテと一緒に炒めたエリ
  ンギと油通しをしたチンゲン菜を添えた。

   流石に函館の朝市で買ったホタテは形も大きく味もよく見栄えも立派だった。
  もっとも、本当に北海道産かどうかは判らないが、スーパーのホタテとは比べ物
  にならない代物だった。娘が喜んだのは言うまでもない。


    


   翌日北鎌倉の光照寺と建長寺で命日の墓参りを済ませ、昼飯はあらかじめ
  予約しておいた鎌倉の老舗鰻屋の「つるや」でうな重を食べた。「つるや」は店
  は古いが鎌倉の文人達が足しげく通った鎌倉随一と言われる鰻屋だ。

   よく焼き上げた柔らかい厚手の鰻が、蓋に「つるや」と彫られた赤い鎌倉彫の
  お重に入っている。たれは少々甘口で年寄り向きの上品なうな重だった。

   鎌倉駅から若宮大路、小町通りは晴れ着に着飾った若い女性と子供が八幡
  宮目指して行列をなしていた。快晴の秋なので七五三のお祝いの参拝なのだろ
  う。そういえば30年前には晴れ着を着せた娘を連れて八幡宮に七五三の参拝
  をしたことがあり、その時を懐かしく思い出した。

   娘とは鎌倉駅で別れたが、別れ際に娘から「最近高齢者の自動車事故が多
  発しているから十分気を付けてね。」と有り難い忠告を貰った。とうとう私も世間
  の危険な高齢ドライバーの仲間入りをしたのかと暗然たる気持だったが、娘の
  心配は至極尤もなことである。いつ免許証を返上するか判らないが、少なくとも
  健康である限り安全運転に心掛けて運転を続けたいと思っている。なにせ新車
  にしてまだ1年だからね。