←旭道山 (砂かぶりより撮影) |
10年ほど前に両国国技館に行った。朝8時から並んで2階席の一番後ろの席を
やっとこさゲットしたのだが、序の口・序二段の頃は、マス席はガラガラ。
問題なかろうと、マス席に陣取る。
この時間、マス席にはよほどの相撲好きがいるのだろうと思っていたのだが、
見渡す限り、朝一緒に並んで2階席の切符を買っていた顔しか見えない。まぁ、
朝8時から並んだ段階で既に我々も「よほどの相撲好き」に登録されているのかも
しれないのだが、正規にマス席を買っている人が全く見られないのは意外だった。
序の口・序二段は、テレビで見る限り「俺でも勝てるぜ」と思いがちだが、
とんでもない。いっちょ前に頭で当たってるもんな。でも、このクラスの行司は、
「俺でもできるぜ」という感じだ。幕下クラスになれば、マス席から見る立ち会いの
迫力は凄い。こんな立ち会いができる力士が未だ幕下に甘んじているだから、
俺にはこの世界は無理だ、と、アホな感想を持つ俺(65Kg)だった。
十両になる頃には、マス席に「いかにも重役」「いかにもお大臣」・そして
「いかにもお水」な方々が登場し始め、いつまでもここに座っていると
ヤバそうな雰囲気を感じ、早朝行列組は誰からともなくマス席から去って行った。
で、俺も十両・幕内前半戦と、2階席の一番後ろで見ていたのだが、砂かぶりの
席が一つ空いているのである。これは何とももったいない。そして勝負審判交代の
隙に、前を失礼、前を失礼と、その砂かぶりの席に座ることに成功。ここは凄い!
国技の迫力を十分に堪能した。これは間違いなく立ち技最強だ。
だが、しかし。堪能できたのもわずかの時間だった。何せ、砂かぶりに本来座る
人ってのは、モノホンのお偉いさんな訳で、俺なんかが物珍しそうにキョロキョロ
したり、旭道山の写真をパシャパシャ撮ったりしていたら、明らかに挙動不審
なのである。案の定、まだ3〜4番しか見ていないのに、土俵上をほうきで掃いてる
下っぱ呼び出し(序二段の頃に見かけたヤツ)がやって来た。
「あなた、切符は?」こ、こいつ、角界では下っぱのくせに、かつては力士を目指して
いただけあって、俺のような素人から見たら、かなり迫力ある。おもむろに
立ち上がり、前を失礼、前を失礼と、砂かぶりから脱出して2階席に逃げ帰った俺
(当時18才・大学入試の1ヶ月前)だった。(もちろん、この年は浪人)