中国ゴールデンコンビは永久に不滅・・・ですか?

2025.5.4

松浦悠士選手(以下、敬称略)を熱烈に応援している身として、松浦が勝った2023年競輪グランプリ翌年2024年5月にこの文章を書いたが、世に出してよいものか丸1年迷っていた。
webにアップすればいずれ松浦本人はもちろん、多くの競輪関係者の目にも留まるだろう。
ただの素人の私が勝手な推測、思い込みで書いてよいものだろうか。
何より松浦選手ご本人に「全然違うよ」と思われてしまわないか。

だが逆にこうも考えた。
我々競輪ファンが車券を購入する際に、選手のコメントは確実に推理の上位ファクターとなる。
検車場で選手の生の声を聞き、雰囲気も肌で感じて車券を買うことのできる記者が紙面に載せる情報は少なすぎないか?
例えば「ラインから優勝者が出るように」のコメントの「優勝者」の中に自分は入るのか、入らないのか?
この例の場合、自分は完全に残らない駆け方をする場合と自分も残れるように駆ける場合の両方を見るが、記者は事前に完全にこの二択をクリアしているのではないか?

そして、松浦ファンには周知の通り、松浦は現在の調子はもちろん、レース中の一瞬の判断、他の選手の体が一瞬固まったというような走っている選手にしかわからない機微を本当に詳しく発信している。
解説者の中にも何人かはコラムで元選手でなければわからない動き、気持ちについて詳しく言及して頂いている方がいらっしゃり非常にありがたい。
それでもある時から私が本当に胃が痛くなるほど気になっていることに関して、今のところ誰も明確に発信していない。
私がなにをモヤモヤしているのか、それを書くことにより私のモヤモヤが成仏されることを期待して世に問うてみようと思う。
一部私の見解も書いたが、基本的に実際にあった記事とツイートを元に構成している。

非常に前置きが長くなったが、所謂「中国ゴールデンコンビ」についてだ。

2018年防府記念
並び:清水−松浦
着順:清水1着、松浦3着
この頃はまだ「中国ゴールデンコンビ」という言葉は無かった。
清水も防府記念未制覇で、決勝で清水−松浦のラインを組んだものの清水−松浦のスジは3番人気の10.4倍、交わした松浦−清水は22.3倍
1・2番人気は三谷=村上の近畿ラインだった。
結果は清水が捲って1着、番手の4番車松浦はバックで離れてしまいかろうじて3着で確定板に載ったが着差は7車身以上・・・

選手名

着差

決まり手

1

 清水裕友 

 

捲り

2

 郡司浩平 

7車身

捲り

3

 松浦悠士 

 3/4車身 

 

4

 鈴木庸之 

 3/4車身 

HB

5

 杉森輝大 

 1/4車輪 

 

6

 諸橋愛 

 3/4車輪 

 

7

 山田英明 

1車輪

 

8

 村上義弘 

 3/4車輪 

 

9

 三谷竜生 

6車身

 


当時松浦はどちらかというと横多めの自在屋といった印象だったが、この時に清水に離れてしまったのを境に「まずは裕友に離れないようにしなければならない」と自力に磨きをかけて今の縦脚がある。
※正式な出典を探し切れなかったが、どこかで確かにそのコメントを見たので間違いない
この年の広島記念、三谷の番手から松浦も初優勝を果たし、以後広島記念は松浦、防府記念は清水で独占となる。

2019年競輪祭
並び:清水−松浦
着順:松浦1着、清水2着
関東が吉田拓矢−平原−諸橋で並び、ここが2段駆け想定で平原=諸橋が人気
レースは清水が吉田の番手でイン粘り、平原から番手を奪ってバックで清水−松浦がラインで抜け出し、最後に松浦が差してG1初優勝を果たした。
お恥ずかしながら私は関東ワンツーの方を買ってしまい、松浦のG1初優勝車券を獲れないという大失態を犯してしまった。
そして重要なのは、ゴール後に派手にガッツポーズをしまくる松浦に清水がポンポンと祝福をしていたことだ。
この時もまだ「中国ゴールデンコンビ」という言葉は無かったが、後から思えばこのレースが始まりと言えるだろう。



2020年全日本選抜競輪
並び:松浦−清水
着順:清水1着、松浦9着
昨年競輪祭のお返しとばかり松浦が清水を連れてカマシ先行、最終バックで番手から出る完全に2段駆け態勢で清水がG1初優勝、無論9着に沈んだ松浦は清水を祝福した
余談だがこの日は豊橋競輪場にゆきぽよが来ており、清水がスタンドの大勢のお客の前で賞金ボードを掲げた写真撮影タイムに
ゆきぽよ事務所の複数の強面の職員が「撮影禁止」のボードを掲げて威嚇しており、清水を撮りたい競輪ファン全員がアンチゆきぽよになったという事件があった。

ツイッターの期間指定検索で確認したところ、「中国ゴールデンコンビ」という呼称の初出はこの全日本選抜決勝の日、何故かボートレース専門誌公式のツイートだった。
https://x.com/kyotei1200/status/1227075567993778176



これ以降、徐々にこの呼称が競輪専門誌でも使われ始め、グレードレースを中国ゴールデンコンビが席巻することになる。
記念は割愛してG2だけ挙げても以下の通り。

2020年ウィナーズカップ
並び:清水−松浦
着順:松浦1着、清水9着
清水が鐘先行、最終バックで松浦が番手から出る完全に2段駆けで松浦優勝

2020年サマーナイトフェスティバル
並び:松浦−清水
着順:清水1着、松浦6着
松浦カマシ先行、新田が2人を捲ってしまうも、清水が無風の松浦番手から出て新田を交わし優勝

2021年ウィナーズカップ
並び:松浦−清水
着順:清水1着、松浦3着
最終ホームで松浦が高橋晋也の番手を奪いバックから捲り発進、清水がゴール前交わして優勝

グレードレースで前後を交代して常に番手が優勝するうちに、「中国ゴールデンコンビ」の呼称は完全に定着していた。
中国ゴールデンコンビがG1・G2を交代で獲っていた頃にコロナ禍になり、無観客で開催されたのが2021年京王閣ダービーだ。

2021年日本選手権競輪
並び:清水−松浦
着順:松浦1着、清水7着
中国ゴールデンコンビが前受け。郡司率いる南関ラインが眞杉−平原−武藤の関東ラインにフタをして周回が進み、鐘時点でまだ先頭の清水は誘導を残していた。
鐘まで待ったが後ろが来ず清水が腹を括って鐘先行、直線で松浦が抜け出し、外の郡司を張り内の慎太郎に肘を引っ掛ける縦横無尽のゴール前パフォーマンスでダービー制覇。
2019競輪祭の車券を獲り逃して以降、全ての中国ゴールデンコンビの決勝を当ててきた私はこのダービーでオビを抜き、勝手に中国ゴールデントリオを襲名して浮かれていた。
https://x.com/tmgntmtm/status/1391359982457610242



この後も中国ゴールデンコンビは順調にG2で結果を出す

2021年サマーナイトフェスティバル
並び:清水−松浦
着順:松浦1着、清水4着

2022年ウィナーズカップ
並び:太田竜馬−松浦−清水
着順:清水1着、松浦2着

前後を入れ替えて順調に番手がビッグを優勝してきたが、2022年秋に事件が起こってしまう・・・

2022年防府記念準決勝
並び:松浦−清水−桑原
着順:清水1着、桑原2着、松浦4着(決勝に残れず)

この準決勝、打鐘時点の隊列は以下の通り
打鐘隊列:渡邉雄太−内藤秀久−阿部拓真−青森伸也−伊藤颯馬−園田匠−(車間空いて)−松浦悠士−清水裕友−桑原大志
松浦は離れた7番手からロングカマシを敢行した。
一度この動画をご覧頂きたい

<ジエンド宮原さん文字起こし>
松浦、じっくりと見極めております。7番手から反撃に入った!5番手、4番手、3番手、更に迫ってくる、2番手、内藤の抵抗、その上を乗り越えていきます、松浦。
その上から、、、もう清水が、、、自分から踏み込んでいきます!(慌て気味)
松浦の上から清水、そして桑原、地元両者が出切った、その後、3番の園田!

どうだろう。
宮原節の行間を読むと、実況も松浦は捲り切る勢いと感じたのは疑いの余地がない。
実際、先頭を走る渡邉雄太まで松浦は交わしたが、その前に清水が番手捲りを行ったことにより園田が3着に連れ込まれて松浦は4着に沈んだ・・・
清水が「あ、ヤバいかも」と感じて番手から出た気持ちも、それはそれでわかる。
私が最も言いたいのは、清水も松浦も中国地区のスターであり、両者とも自力で決勝進出できるのだから、準決勝で同じ番組に入れた防府の番組屋がA級戦犯なのではないか。

このレースは競輪界に相当な衝撃を与え、SNSだけでなく複数の記事でも検車場での不穏な空気について取り上げていた。
その中で決勝当日のヤマコウさんのコラムに、そもそも予選からの伏線も含めて、準決勝レース中の心理も含めた詳細な分析が記してあったので紹介したい。

【周防国府杯争奪戦予想】地元記念で松浦を失った清水…暗雲垂れ込める二人の仲も考察/ヤマコウ展望

<以下、引用>
清水の5連覇に暗雲が垂れ込めて来ました。2次予選、地元防府記念なのに10Rに番組が組まれ、メインの12Rは松浦が任されました。
清水の心境は「100歩譲って松浦さんなら受け入れる。それなら11Rでいいのではないか…」だったと思います。そこで少し苛立ち、準決勝はなんと松浦と一緒。準決勝が終わった後はお互い苛立っていました。
ここからは私が準決勝後の2人の様子を見て感じたことを綴ります。「レース前に何らかの意思疎通があったが、思った通りの展開にならずバックからの解釈が分かれた」のだと思います。
それは「清水が5連覇も懸かってるし賞金を上積みしたい気持ちも分かる。緩んだところを一気に仕掛けるけど併されたら自力で行ってくれ」それに対して清水は「分かりました、お願いします」程度の意思疎通だったと思います。
そして最終2角、3番手まで進んだ松浦の内側で、先行渡邉雄太の番手を回っていた内藤秀久の内を阿部拓真がすくいます。
清水から見た場合、バックで松浦さんのスピードが緩んだ上に、内からすごいスピードで誰かが来た。松浦さん飛ぶかも…」と一瞬思ったはずです。そこで自力を発動させたけども、松浦は意外にも捲り切ってしまった…が真実かなと思います。
レースはナマモノである以上自分たちの思い通りにはならない。人間である以上どこでも起こることだと思います。
会社仲間や友達や彼女に対しても最初は「いろいろ教えてくれる、面白い、好きだ」などが先行するが、時間が経つと違う面も見えてくる。そこをどう乗り越えるかだと思います。2人の今後も見守っていきたいと思います。
<引用ここまで>

ファンにはなかなかわからないことだが、言われてみればなるほど、至極もっともだ。
清水はここ防府記念は絶対に獲りたい中、準決勝で宮原さんが「内藤の抵抗、その上を乗り越えていきます、松浦」と実況していたその瞬間、内藤秀久の内を阿部拓真がすくっていた。
それでやむ無く番手発進してしまったのであり、致し方ないとも見える。
ただ、netkeirinのこのコラムではなく、日刊スポーツの「ヤマコウの時は来た!!」の方では「検車場でもは異様な雰囲気で声を掛けられなかった」とも書いてあった。
上記netkeirinのコラムにも「感じたこと」「思います」と、断言は避けているように、とても取材できる雰囲気ではなかったようだ。
ヤマコウさんですらそうなのだから、そこいらの新聞記者にはお手上げだっただろう。
それにつけても、予選から清水を10Rに回して遺恨の種を蒔いた防府の番組屋の罪は重いのではないか。

翌2023年は中国ゴールデンコンビ揃ってのビッグ決勝はなく、年末のグランプリで「清水−松浦」で並ぶこととなった。
このレース、私はもちろん松浦からしこたま買い、大勝ちすることに成功した。
ただ生でレースを見ている際、正直言って私は、清水が行ききれなかった時点で「あー清水不発、松浦も終わった」と諦めかけた。
諦めかけたところから松浦が深谷に切り替えて見事優勝したものだから、その直後にこんなツイートをした。

2023年12月30日グランプリ 当日
https://x.com/tmgntmtm/status/1741001868279771330



実際私は清水が行ききれなかった時に半ば諦めかけたのが、そこから瞬時の判断で深谷に切り替えた時には再度大興奮、
最終4角に入る時に内を突かず外から伸びて優勝した時には家族がいる居間で拳を突き上げ絶叫していた。
だから決定放送の直後に「素晴らしいレースだった!!」と、その時の私の本心を書いた。
しかしその日の夜、いつものように振り返りyoutubeを見ていて心配になってきた・・・
ゴール後、何度もガッツポーズをする中で、松浦は一度チラっと清水を探した。
再度拳を握りしめて喜びを嚙み締めた後、今度は明らかにバンクの中で清水を待った。
しかし清水は一言ぐらいは何か言ったかもしれないが所謂祝福は無し。
レース直後の検車場に向かう通路でも清水と松浦のツーショットは見られなかった。
続々と配信される敗者コメント記事と動画を見ても明らかに清水は不服に感じており、それらを見るにつけ、私の気持ちはどんより落ち込んでいった。

ずっと応援している松浦がグランプリを獲り、私は特大車券を獲ったものの、上記により私の正月は冴えなかった。
それで、2024年最初のG3、大宮記念を清水が優勝した後にこんなツイートをした。

2024年1月11日
https://x.com/tmgntmtm/status/1745437665040974142



実際、あの切り替えに関して競輪有識者はほぼ「仕方ない」「あれしかない」の見解だったが、
とはいえ切り替えられた清水自身が納得いってなさそうな様子に見えて、しかし本心は言っていない。
以前小嶋敬二がG1の準決勝で加藤慎平にイン捲りをされた時にはカメラに向かって相当に怒っていたが清水はどうなのか。
諸々の状況を見る限りでは怒っていそうだが、それは一過性のものなのか将来に禍根を残すのか。

松浦が「ヒロト」に感謝するコメント、また切り替えの瞬間に「ヒロト、ゴメン!」と思ったという記事は何回も見た。
清水が松浦に関して何か言っている記事・動画はGPレース直後のインタビューを除き見ていないが、
考えてみれば清水はもともとあまり喋らない印象だしツイッターもさいならっきょしたので、ファンは想像するしかない。
ファンが色々に想像するものだから、川崎記念決勝でちょっとした出来事があった。

2024年1月21日、川崎記念決勝
南関は深谷−郡司−松谷−堀内の4車連携で中国は清水−松浦の並び。
2車単では松浦−清水:25.2倍、清水−松浦:42.6倍
郡司を1着にした3連単では郡司−松浦−清水:32.2倍、郡司−清水−松浦:65.3倍
従来の法則に従い松浦が清水を交わした方が倍近く売れていたのだが、結果は1着:郡司、2着:清水、3着:松浦となった。
補足するとこの川崎記念1・2・3日目の松浦はいずれも厳しい展開で普通の選手であれば着外に沈むところ、美しいハンドル投げで確定板に載っていた。
それで色々な憶測が書かれたようで、その晩に松浦選手はこんなツイートを出すことになる。

https://x.com/yuji14681/status/1749047051772723286



GPで清水がすかさず脇本を追い上げたおかげで優勝できたのは、それはそれ。
切り替える時に「ヒロト、ごめん!」と思いながら踏んだのも、それはそれ。
ゴール前は全力で抜きに行くのがプロ選手。
借りを返すなら自分が前を回って連れていくのがゴールデンコンビだ。
今までだってそうしてきたではないか。
ただこれを書いている2025年5月時点で、2023GP以降、松浦が清水の前を回ったレースは無い。

2024年1月にSNSで書いたことを再度ここに書きたい。



新聞記者の皆さん、あるいは競輪OBの方々、中国ゴールデンコンビは永久に不滅なのかどうか、是非取材してください!
「以前は武田−平原の鉄板コンビもあったし、今は眞杉と吉田が新ゴールデンコンビだ。
中四国は太田海也や犬伏も出てきているので、いつまでも清水・松浦のコンビにこだわりなさんな」
という意見もあるかもしれないが、私が気にしているのは2人の間にぎくしゃくがあるのかないのかなのです。
中四国の若手が出稽古に行って「清水さんと松浦さんがいて刺激になった」という記事にいちいち反応しているのです。
その記事を書く際にもう少し2人の関係について深堀りして頂きたい!

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