<市川との出会い>(1998年宮島グラチャン)

ちょっとバカコラ師としての血が騒いでこんなの作ってしまいましたが、気にせずコラムを始めましょう。
その前に、<はじめに>では1人称が「僕」でしたが、これ以降は「俺」にさせて下さい。本サイトでは
いつも「俺」で、そっちの方が筆がはかどるので。

俺が初めて競艇をやったのは1997年11月の宮島周年。
その1997年宮島周年、会社の同僚に誘われて初めて宮島に行ってみた。
当時の宮島競艇場は1Mのスタンドが水面から遠く、1番前の塀際で見ても初心者には迫力等
イマイチだった。もちろん俺は何を買えばいいのか全くわからないので友人に聞くと、
「植木ってのが最強だから植木から流せば当たるよ」とのこと。
で、素直に植木から流したら植木は飛び、人気薄が1着で2連単60倍ぐらいの大穴。更に俺に植木を
勧めた友人がそれを2000円買っていて12万円GETしたという恐るべき事件が発生。
「お前、俺に植木なんか買わせて、自分の買った組み合わせのオッズを上げる作戦だったのか!!」
「つむごんが買った3000円ぽっちでオッズなんか変わらないよ」
「とにかくその12万円から俺の3000円返せ!」
「博打場でお金なんかあげたら運が逃げる。後で奢るから次頑張れ」
とか何とかで結局1日ノーヒット。ビギナーズラックさえなかった俺は焼肉屋で友人に屈辱の奢りを受け、
当然のように以後当分競艇場に行くことはなかった。

今にして思えば、もしあの宮島周年でビギナーズラックが炸裂して競艇にハマってたら、同年の賞金王
決定戦で1号艇の西島に対して6号艇の今村豊が誰も予期しなかった前付けをかまして場内騒然!を
体験できたんだな。あーいう時の場内の何とも言えないざわめきが大好きな俺としては実に悔しい。
(後のコラムで書くけど、西島が勝った宮島オーシャンカップで小野信樹がインを突っ張った時も場内
凄い雰囲気だった)

そして競艇のことなんかすっかり忘れて半年後。広島駅前でキレイなお姉さん達とオーバーアクションの
着ぐるみモン太くんがなにやらパンフレットを配っていた。(このページの一番上の画像)
中を見ると、見開きで市川と西島のスペシャルトーク。これがまた、真っ黒なバックから市川と西島が
ボワーっと浮き出るようになっていて実にかっこいい。

トークを簡単に抜粋してみる。

■西島選手から見た市川選手とは・・・。
西島 ボクの若い頃と比べたら落ち着きがありますね。それにSがムチャクチャ早い。いや、早すぎる(笑)
Sが早いということは、どのコースからいっても自分でレースが作れるということですから、強力な武器に
なるし、有利だと思います。

(※)つむごんコメント:この(笑)はやはり、「早いのはいいが、Fは切るなよ!」という意味でしょうか。

■では、市川選手は西島選手をどう思っているんでしょう。
市川 ボクが選手になった当時既にバリバリやってた人なんで、雲の上の存在ですね。進入はきれいだし、
深い所からでも思い切りよくダッシュをつける。それにコーナーもレバーを握って全速でターンしますから、
選手の立場で見ていても気持ちがいい。尊敬できる先輩ですよ。(笑)

(※)つむごんコメント:なんでそこで(笑)が入るんだ・・・?

■最後に、ファンの人々にメッセージをお願いします。
西島 ボクの場合、不器用じゃないんですが、単純明快なレースしかしません。コースをしっかり取って
第1ターンマークを握って回り、逃げてくるだけ。スカッとした勝ち方を心がけますから、ぜひ応援して下さい。

市川 ボクに期待されているのは、Sだと思うんです。レースには展開というものがありますから、自分の
思い通りにはなりませんが、Sだけはビシッと決めて思い切りのよいターンをしたい。応援をよろしくお願い
します。

(※)つむごんコメント:よそではどうかわからないけど、少なくとも宮島では西島がインコースをとっただけで
客はえらく盛り上がる。お盆・正月・GWのレースは、西島のイン取りを見に行くと言っても過言ではない。
その様子は例えるなら、プロレスファンが小橋健太の100連発水平チョップを見にノアの興業に行き、
おじいちゃん・おばあちゃんが黄門様の印籠を見る為にテレビにかじりつくのと本質は同じだろう。
即ち西島のイン戦はもはや芸術の域に達しており、我々の外れ舟券代はその芸の見物料なのだ。
そして市川のS。これもすばらしい。「3秒・2秒・1秒・今、スタート!!」の時に市川の艇だけ他より
いつも前にいるのも、これも見物料を払うに値する芸術だ。
ちなみに後のコラムで詳しく書くが、【西島のイン戦+市川のミクロスタート=1Mで両者ぶっ飛び】の
公式は、宮島の博打オヤジの間ではあまりにも有名である。

 

さて、今でこそこうしてしたり顔でコメントなど付け加えているが、当時ド素人の俺はこのパンフを読んでも
そもそもSとか逃げるとか握るとかの専門用語はさっぱり意味がわからなかった。でもパンフの市川と西島は
実にカッコよく、特に市川はまだかなり若いのに広島のスーパースターのような扱いだったことに興味をもつ。
翌日、例の友人にパンフを見せて色々聞き、「もうえぇじゃろ」と言われるまでしつこく競艇のルールや市川・
西島のことを根掘り葉掘り質問し、急激に競艇に興味がわいてきた。広島駅前でキャンペーンを行った
宮島競艇場は、そのおかげでこうして俺という大ガモを見事にGETした訳だ。あのキャンペーンの費用が
いくらかかったのかはわからないが、その後5年で俺が使ったお金だけでも充分元は取ったのではないか?

そうして迎えたグラチャンドリーム戦。「ドリームって何なの?」とか質問して友人にウザがられつつ、テレビ
中継を録画しておいて帰宅後に見る。まず開会式の様子が流れていたが、安岐・中道・黒明といった
いかにも勝負師といった風貌のいかついおっさんと共にずいぶん若くて優しそうな市川が出てきた。
広島県が県をあげてプッシュしているまだ若い市川選手がこうして恐そうなおっさん達に混じってレースを
しているのかと知っただけでも、日本人の判官贔屓精神をもって応援したくなるのは当然だろう。
その市川の挨拶。「おはようございます。すいません!こんな形で地元のSGに来てしまいました。」
後に競艇に詳しくなった後に知ったのだが、このグラチャンは宮島では20数年ぶりに開催されたSGで、
当然市川もこのグラチャンに向けて相当気合が入っていたのに、F2での参戦だったのね。おそらくF2に
なる前に作成されたパンフのインタビューで「ボクに期待されているのは、Sだと思うんです。」と言っていた
市川選手。さすがにF2では客もSを期待することはできまい。そこで出た「すいません!」。実に好青年で、
地元のファンとしては「いやいや、無理にゼロ台なんて狙うな。お前なら .20でも楽勝じゃけんのぉ」と応援
せざるを得まい。その後、選手代表挨拶も市川選手。ん?市川は前年度覇者なのか。じゃぁ判官贔屓
どころか、あのいかついおっさん達に胸を貸す立場の横綱なのか。こりゃ凄いじゃん。

「ファンの皆様、おはようございます。待ちに待ったSGが宮島にやってきました。ここのレース場は、
安芸の宮島が臨める、日本一景色のいいレース場だと思います。そして本日より、日本一のレースが
開催されると思います。どうかファンの皆様、本場に来て、この景色と素晴らしいレースを充分堪能して
帰って下さい。」

先ほどの「すいません!」の後で、内田アナ曰く「ミルキースマイル」で少しはにかみながら選手代表
挨拶をする市川選手を見てしまえば、これは地元民としてはもうゾッコン惚れこむしかないだろう。
競艇場において選手に「惚れる」とはもちろん、開会式に花束を持っていくことではなく、市川に賭けて
儲けることである。
(※)内田アナの市川紹介全文:「ミルキースマイルのグローリーコンバット、ゼロ・ファイター・市川!!」
ちなみに俺がパソコン買った当初に掲示板に書き込みをした際のHNは「ゼロ・ファイター」だった。

このグラチャン、初日から市川:533S1・西島:643646 で2人とも予選落ちをしている。今の俺だったら
予選道中で相当な金額を負けていると思われるが、当時はもちろん電投などしておらず、というか予選の
何たるかも理解してなかったな。そして優勝戦の6/28、この日が俺の実質的な競艇デビューの日となる。

6/28、雨の中、例の友人と一緒に宮島競艇場へ。俺も友人も寝ぼすけなので、多分競艇場に着いたのは
第7Rの頃だったと思う。そして迎えた第8R。
(オフィシャルからそのままコピペしているのでズレているけど、直すのも面倒なのでこのまま貼り付けます)

8R 宮島選抜   H1800m 電話投票締切予定時刻13:39 連単
-------------------------------------------------------------------------------
艇 選手 選手 年 出 体級 全国 当地 モーター ボート 今節成績 早
番 登番 名 齢 身 重別 勝率 複率 勝率 複率 NO 複率 NO 複率 123456見
-------------------------------------------------------------------------------
1 3245池上裕次33埼玉53A1 6.76 42.96 3.75 12.50 19 37.35 25 44.53 6 4 153 13 4
2 3622山崎智也24群馬51A1 8.21 65.69 6.90 56.67 48 25.14 74 33.99 645 1 3236
3 3312新美進司33愛知49A1 6.46 47.96 7.43 71.43 65 36.07 41 42.76 462 252 23
4 3499市川哲也29広島52A1 7.61 57.38 8.10 70.15 23 36.84 21 33.33 5 3 3S1 53 1
5 3257田頭 実31福岡53A1 7.41 53.09 5.33 33.33 34 37.80 33 32.93 2 511 5 12 5
6 2785水野 要43兵庫51A1 6.86 56.00 6.00 34.38 67 32.54 19 40.69 144 445 1 2

当時の俺はそもそも予選という概念すら理解しておらず、まして市川がF2だということや予選道中の
「S」にも全く気付いていなかった。単に地元意識のみで市川を頭にして流す。

8R 宮島選抜   H1800m 雨  風 南   3m波 3cm
スタート レース
着 艇 登番 選 手 名 モータ ボート 展示 進入 タイミング タイム
--------------------------------------------------------------------
01 4 3499 市 川 哲 也  23 21 6.71 5 0.24 1.48.1
02 5 3257 田 頭   実  34 33 6.70 4 0.18 1.50.9
03 3 3312 新 美 進 司  65 41 6.76 6 0.27 1.51.8
04 1 3245 池 上 裕 次  19 25 6.65 1 0.23 . .
05 2 3622 山 崎 智 也  48 74 6.71 3 0.23 . .
06 6 2785 水 野   要  67 19 6.70 2 0.25 . .

単勝 4 780
複勝 4 210 5 160
連単 4-5 2820 人気 16 決まり手 まくり差し

市川から総流し各2000円買っていたので、56400円の払い戻し。去年の周年の負け分を一気に取り返して
お釣りがきてしまった。この頃はまだ当たり舟券をコピーして保存するなどしていなかったので証拠が
ないのが申し訳ないが、俺が今もなおこうして市川を追いかけまくってる事実を以て証拠として頂きたい。
そしてこの時俺は、56400円という当時の俺としては大金をGETした喜びよりもむしろ、市川が勝ったことに
よる宮島のお客さんの大歓声の中に身をおいていることに鳥肌がたつほど興奮した。オヤジもアンちゃんも
お姉ちゃんもおばちゃんも皆「市川、よくやった!」「市川!お前が最強じゃ!」と声を掛けてたもんな。
俺今でも、色んな競艇場に旅打ちに行った時は地元のエースを買って数万人の地元ファンと一緒に興奮を
分かち合うのが大好き。下関周年優勝戦でバリバリ1番人気の今村がF切った時も現場で今村を買って
いたのだが、あれぐらい数万人が心を1つにして絶叫悲鳴をあげる経験なんて、他では絶対にできないよ。
あの時は涙が出るぐらい興奮かつ感動したな。

そうこうするうちに優勝戦。

12R 優  勝   H1800m 電話投票締切予定時刻16:27 連単
-------------------------------------------------------------------------------
艇 選手 選手 年 出 体級 全国 当地 モーター ボート 今節成績 早
番 登番 名 齢 身 重別 勝率 複率 勝率 複率 NO 複率 NO 複率 123456見
-------------------------------------------------------------------------------
1 3064山崎昭生38香川51A1 6.60 40.31 5.97 34.48 57 38.50 26 31.21 221 2 141
2 3307上瀧和則30佐賀53A1 7.59 57.95 7.08 50.00 30 33.12 50 36.75 1 512 2 1
3 3233小畑実成31岡山55A1 6.92 34.65 4.79 21.05 13 25.48 72 30.95 3 4 122 1
4 2833荘林幸輝43熊本53A1 7.02 45.22 6.09 43.75 29 36.42 11 39.24 2 331 1 2
5 3285植木通彦30福岡53A1 8.88 70.00 7.93 66.67 58 27.22 14 30.50 2 314 132
6 3054北川幸典35広島56A1 7.06 51.75 6.59 47.71 25 38.27 56 40.24 5 142 2 2

このレース、2号艇だが前日の準優のように物凄いピット離れでイン奪取確実と見られた上瀧が1番人気。
そして俺は上瀧から総流ししても儲からないので、去年の周年で苦い思い出のある植木と新聞の予想で
あまりパッとしていなかった小畑を外し、地元・北川、節1モーターと書かれていた山崎、SG十何回だか
二十何回だかの優出ということで新聞紙上で応援されていた荘林の3人に流す。植木を外しているので
3人の誰がきてもそこそこの配当がつく。あとは地元・北川頭の大穴を総流し。

12R 優  勝   H1800m 曇り 風 南   2m波 2cm
スタート レース
着 艇 登番 選 手 名 モータ ボート 展示 進入 タイミング タイム
--------------------------------------------------------------------
01 2 3307 上 瀧 和 則  30 50 6.69 1 0.22 1.49.0
02 6 3054 北 川 幸 典  25 56 6.56 6 0.13 1.49.7
03 5 3285 植 木 通 彦  58 14 6.62 5 0.11 1.51.4
04 3 3233 小 畑 実 成  13 72 6.64 3 0.07 . .
05 1 3064 山 崎 昭 生  57 26 6.63 2 0.13 . .
06 4 2833 荘 林 幸 輝  29 11 6.65 4 0.09 . .

単勝 2 320
複勝 2 200 6 230
連単 2-6 1850 人気 10 決まり手 逃げ

このレース、素人の俺が見てもはっきりわかる上瀧のドカ遅れで「上瀧、何しょんじゃ!!」と(心の中で)
叫んだものの、何故か山崎は捲らずに差しに構えて差せずに上瀧が逃げ、そして2着は俺が買った北川!
(※)後日どこかで読んだが、山崎選手はここで捲らずに差しに構えてしまったことについて
  「上瀧より1艇身近く前に出て逆にビビってしまい、中途半端な攻めになってしまった」と悔やんでいた。
この舟券も証拠コピーがないので申し訳ないが、2−6を5000円買っていて払い戻しは92500円。
8Rと優勝戦の勝ち分から7・9・10・11Rの負け分を差し引いても10万円以上儲ける事が出来た。
儲け金額で言えば上瀧と北川に感謝すべきだが、この優勝戦で2−6を5000円買ってたっていうのも、
8Rに市川で儲けたからこそできたこと。その事をよく認識していた俺は、この日ボロ負けした友人を
去年奢ってもらった焼肉屋に連れてって「我等が市川に乾杯!!」と終始上機嫌だった。

後に市川でオビをGETすることになる日本一の市川ファン・つむごん誕生の瞬間である。

戻る