第19回農業機械学会学術賞受賞論文梗概  戻る

(昭和47年4月6日第31回総会にて受賞)


しろかき土壌の力学性に関する相似性研究

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Similitude Studies of the Soil Dynamic Properties in the puddling Field


三重大学農学部 小中俊雄  

 

 本研究は,田植機械化の研究の一環として行なわれたもので,しろかき土壌物理性の測定表示法を確立するために,次元解析にもとずく相似性理論を適用した要因実験により,しろかき士壌の力学性に関する各種の特性を明らかにしたものである。

 従来行なわれてきた測定法を検討した後,1965〜1969年に実験を行なった。測定項目としては,現場測定の容易なものをとりあげ,コーン貫入抵抗,さげふり貫入深,傾斜棒倒伏度,円筒落下式粘性測定,土壌密度,耕盤の深さ,水深などとした.

 コーン貫入抵抗など各々に関係する要因をとりあげ,それぞれの関係式について,次元解析による無次元π項を誘導して無次元項関係式を得,相似条件式から測定器の諸元および測定条件を設定した。本実験では,コーン貫入抵抗に底断面積10cm2のコーンを標準として9種類,さげふりとして底断面積10cm2, 頂角45度・重量115gを標準として11種類,傾斜棒倒伏度用に各種13本の棒を用いた。

 実験は,圃場4区,しろかき後日数各3水準の12ブロックで,各無次元π項について3〜9水準の完全配備計画で実施した。

実験結果は,分散分析などの統計処理計算がなされ,コーン指数は,コーン直径が大きいほど,頂角が小さいほど大きくなり,かつ貫入深さとともに増大し,耕盤に達すると急激に増大することが明らかにされた。普通水田における平均コーン指数(深さ0〜6cm)は,50〜120g/cm2であり,歪係教の導入や交互作用の無視できることを確かめた後,重回帰計算によってつぎのような実験式を得た。

 

   q = 25ρ (tanα/2)-1.4 D -2 x2.5 d0.5

 

  ここで,q=コーン指数,ρ=土壌密度,α=コーン頂角,D=耕盤の深さ,x=貫入深さ(ここでは,x>1.4d),d=コーン直径である.

 さげふり貫入深は,耕盤の深さが大きいほど,頂角が小さいほど,水深が浅いほど,落下高が高いほど大きくなるが.落下高が高すぎる(h>20qd/W)と耕盤の影響が大きく表われた。さげふりの落下エネルギーの55〜35%は,コーン指数で代表される土壌抵抗で吸収され,10〜20%は水の抵抗(水深4〜5cm)で吸収され,残りの35〜45%は動的貫入抵抗および境界面における抵抗によるものと考えられる。なお,さげふり貫入深は,普通水田では,9〜11cm(落下高100cm)であり,貫入初速度3.6〜5.5m/secの範囲では,貫入速度の影響はなかった。さげふり貫入深の実験式はつぎのとおりである。

 

   

y = (tanα/2)-0.2 D -0.4 (w * h)0.27 q-0.27 S-0.07 d-0.14

ここで,y=さげふり貫入深,α=頂角,D=耕盤深さ,w=コーン重量,h,落下高,q=平均コーン指数,s=水深,d=コーン直径である。

  傾斜棒倒伏度については,棒の傾斜角が大きいほど,棒が長いほど,さし込み長さが短いほど棒の倒伏角速度は大きく,棒支持力は,コーン指数で説明し得た。また,各特性値間の関係について,主成分分析が試みられ,異なる落下高におけるさげふり貫入深の差で粘性抵抗を表わし得るなど,多要因解析に役立った。以上総括して,コーン貫入抵抗測定は,土壌の深さ別の特性を表示できる特徴をもち,コーン指数の値で,しろかき土壌の力学性を総合的に表わし得る。さげふり貫入深測定は,測定が簡便で,単一の値で表示できる長所を有し、今後も,低い落下高の測定を加えることなどによって主要測定項目として用いたい。傾斜棒倒伏度測定は,しろかき土壌の苗支持力を推定できる特長をもち,測定法も簡便である。これらにもとずき,具体的測定法を提案した。

  このように,次元解析・相似モデル実験論は.土壌−機械系のように多要因の間題解析にきわめて有効であることがわかった。


*三重大学農学部学術報告 第40号(1970)p.177-303

農業機械学会誌:34-1、3p、1972


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