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    環境アセスメント(環境事前調査・影響評価 Environmental Assessment)

 大規模工業地帯開発や都市計画などの開発行為を行う場合,自然環境にどのような影響を与えるかを調査することをいう.環境庁の案は,1974(昭和49)年六月に中央公害対策審議会の環境影響評価小委員会がまとめた「運用指針」の中で,「開発行為が大気,水,土,生物等の環境に及ぼす影響の程度と範囲,その防止策などについて,代替案の比較検討を含め,事前に予測と評価を行う」から後退し,第三者による評価,公開,住民参加の原則すら取り入れず,対象から都市計画事業をはずすなど,住民の期待を裏切ったものになった.それでもアセスメントは「開発にブレーキをかける」とする財界,通産省の反対が強く,政府内部の統一が得られずに,ついに五度にわたって国会提出が見送られた.81年にやっと提出されたものの,七回にわたる国会を順送りされ,結局廃案になってしまった.国の姿勢にあきたらない地方自治体のうち,川崎市 (77年から) 北海道 (79年から) は,独自のアセスメント条例を施行した.次いで,81年に東京都,神奈川県が条例化し,現在まで全国で42の自治体が制度化した.わが国ではアセスメントが「開発のための資料」として使われているのが現状だが,計画段階でしっかりしたチェックも入れられるアセスメントが法律化すれば,今後の環境保護のための柱となるため,期待は大きい.93年に成立した環境基本法では推進をうたっているにすぎず,法制化まではまだ道は遠い.   (現代用語の基礎知識1995,自由国民社,846ページ,1995)