apx.1222a. 水質汚染についてシステムモデル,目的関数,システム解析,その最適化などについて論ぜよ.目次(第5章)へ

 解答例 まず,河川への排水の流出による水質汚染問題を例に,システムモデルを作り,それを解析,最適化するため考慮するべきことについて述べたいと思う.
 最終目的として,河川が最終的に流れ着く海の生態系が乱れない濃度まで汚染濃度を下げなければならない.実際には汚水は0の方が良いのであるが,それでは人間が活動できない.そこで,海の自浄能力を考慮した濃度を設定する.しかし,これは非常に難しいことである.人間が海の生態系を完全に把握することは,殆ど不可能であるからだ.そこで,現在考えられうる自浄能力から,ゆとりを持ってこの数値は決定されなければならない.
 このようにして河口での濃度が決定されたなら,次に河川の自浄能力について考える.河口に近いところに排水口があるならば,浄化時間が短いので排水量を減らしてやらなければならない.また,河川の上流,中流,下流でも自浄能力は異なってくるだろうから,それによっても排水量は考慮してやらなければならない.さらに,排水成分についても考慮する必要がある.そして,これらの排水量によって変化するだろう河川の自浄能力についても考慮しなければならない.
 このように,様々な要因を考慮してシステムモデルを考え,解析しなければならない.しかし,現在,環境汚染は早い速度で進行していっているので,このように悠長なことは言っていられない.そこで,現在分かっている情報の中だけでも,システム解析を行ない,最適化し,人類が長く生きていくための道を捜さなければならない.
 目的関数:海の生態系が乱れない汚水濃度
 この汚水の中には金属,有機物,無機物など多種あるが,これら全てについて考慮することは不可能であるため,現在はBOD,CODなどの数値にする場合が多い.    (徳楽満孝)