apx.1221c. 地球温暖化について,システムモデル,目的関数,システム解析,その最適化などについて論ぜよ.目次(第5章)へ

 解答例 現在,地球環境をとりまく問題として,温暖化現象が上げられる.この地球の温暖化により,急速な砂漠化や海水面の上昇など種々の問題が生じてくる.その原因の一つとして考えられているものは,温室ガス濃度の上昇であり,具体的には,二酸化炭素(CO2),メタン(CH4),亜酸化窒素(N2O),対流圏オゾン(O3),フロンが上げられる.特に,二酸化炭素(CO2)に関しては,産業革命以前はCO2濃度が約280 ppmであったのに対して,現在では約350 ppmに達している.この濃度上昇は,人間の生活,生産活動から多量にCO2が排出されるためであり,このままのペースで増加を続ければ,CO2濃度は2030年代には産業革命以前の2倍に達し,気温は2倍前後上昇して生態系が適応できなくなるといわれている.

 「温暖化現象の阻止」のためには「二酸化炭素の一人当たりの排出量について,これから2000年までとそれ以降1990年のレベルで安定化される」(日本では,318炭素換算百万トン)のような目標値が国際的に設定されている.

 このような現状に直面して,我々は何らかの対策を行わなければならない.まず,それぞれの温室効果ガスには,地球規模的な対流システムが存在するので,このシステムをモデル化し,分析・解析することにより,どのような対策を行うと,どのように変化をするか知る必要がある.そして,それぞれのガスの相互作用などを考慮に入れてシミュレーションを行なうなどして,最終的な目的である温暖化現象の阻止,すなわち,地球システムの最適化を進める必要がある.

 いままでにこのようなシミュレートにより,大きな効果が期待される技術分野は以下の通りである.

@自然エネルギを中心とする分散型電力源の導入

 ・太陽光発電,ごみ廃熱発電,風力発電 等

A産業部門における普及途上の省エネルギー技術の導入

 ・素材産業における省エネルギー技術

 ・ボイラー等の空気比適正化 等

Bエネルギー利用機器等の効率向上

 ・自動車燃費の向上

 ・低公害車の導入

 ・家電製品,照明器具の効率向上 等

C建築物における省エネルギー対策の強化

 ・住宅の保温構造強化

 ・業務ビルの省エネルギー化 等

Dリユース,リサイクルによる素材製造時のCO2排出削減

 ・鉄スクラップの再利用

 ・生活廃棄物のリユース,リサイクル 等

 しかし,これらの対策すべてを実施することは,とうてい不可能であろう.もちろん,これらのことすべての実施を目標にするのだが,出来ないことも多少考慮に入れたシステムも場合,場合に応じて作成する必要があると思われる.                     (木村裕一)