農業における省エネルギー ! ver. 2002/5/12


 近年、地球的規模の温暖化現象に世界的な関心が集まっています。この温暖化現象は、石炭や石油などの化石燃料の燃焼によって排出される二酸化炭素が主な原因とされています。この機会にエネルギーについて考えてみましょう。

 わが国では1990年10月に「地球温暖化防止行動計画」を定め、2000年以降の1人当たりの二酸化炭素排出量を1990年水準で安定化をさせることを目標としました。しかしながら、この目標の達成は非常に難しい状況にあり、より一層省エネルギーへの取り組みを充実させていく必要があります。また、地球的規模での環境問題に対応するため、1992年「気候変動に関する国際連合枠組み条約」が採択され、1997年12月には「第3回締約国会議」が京都で開催され、わが国は、6%エネルギー削減に向けての取り組みを決定しております。

 さて、農林水産業のエネルギー消費の実態はどのようなものでしょうか。農林水産業のエネルギー消費量は全体の消費量の3〜4%に過ぎませんが、80年代後半から増加の傾向にあります。また、石油への依存度は約97%となっており、産業部門全体の石油への依存度が約50%であるのと比較すると、その生産活動のかなりの部分を石油に頼っているといえます。

 しかし一方で、2度にわたる石油ショックを契機に、農林水産業においても石油に代わるエネルギーの活用やエネルギーの有効利用のための様々な取り組みが各地で行われるようになりました。これらの取り組みは、大きく分けて4つに分類されます。

 

方法

種類

利用法

利用例

第1

自然エネルギー

地熱

地熱発電、熱温水

ハウス暖房

太陽熱

直接利用、蓄熱

太陽熱利用穀物乾燥

太陽光

発電

温室、堆肥化設備、害虫誘殺灯

小水力

発電:100-200kW

揚水ポンプ

風力

発電

牧場 af9902h2*

地下水、雪

冷地下水、雪むろ

畜舎冷房、農産物貯蔵

第2

省エネルギー化

断熱性向上

被覆材改善等による暖房効率の向上

ハウス栽培

複合環境制御

温度、湿度、炭酸ガス濃度等の複数の環境要因

ハウス栽培

効率的作業

エンジン燃料消費効率の向上

トラクタ

共同化、稼働率向上

農業施設の運営管理システムの改善

共同乾燥施設

第3

農林廃棄物の活用

籾殻、バガス(さとうきびの絞りかす)、廃木材

燃焼熱の利用、木質バイオマス発電

ハウス暖房、農産物の乾燥

家畜ふん尿

メタン発酵、堆肥の発酵熱

暖房等

第4

バイオマスの利用

稲わら、森林資源

太陽エネルギーを持続的に供給できるバイオマス資源を積極的に活用

メタノール利用等研究開発中

 以上のように、農林水産分野においても、各地域の特性を活かし、身近な工夫により、石油に代わるエネルギーの活用やエネルギーの効率的な利用を図ることができます。また、省エネルギー機器等の導入に対しては、補助・融資・税の軽減などの助成措置の利用が可能です。

 以上、省エネルギーについてお話ししてきましたが、石油への過度の依存をおさえるとともに、限りあるエネルギー資源を有効に利用することは、ひいてはコストの低減と経営の安定につながることです。また、エネルギーを日々大量に消費している私たちは、地球環境保全へのより一層の積極的な取り組みが求められています。


 参考文献:平成12年度エネルギー管理型農業生産システム開発調査報告書、農林水産技術情報協会,2001


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