廿七年度東大教養学部 理二 六B 1953.5.28           戻る

追思  30p          復刻 by 林尚孝

茫洋
光武 顕

  閉ざされた、もやの中、
 すかしても、目をこらしても、
  何も、何物も見えなかった。
 無限の反撥の力を誇示して、
  乳色の薄膜が、灰色の乾坤が、
 漠々、漠々と埋めつくしているのだった。
  とそんな時、どこかで、
 それも奥底の底の奥から、
  こんな音を、皮膚にひびかして来る。
    茫洋--------。