2−4、女性らしさを楽しむ

森昌子がいつごろから女性らしくなったかということは、人それぞれ見方によると思うが、歌っている歌の雰囲気からするなら、それはレコード会社移籍直後のシングル「ため息橋」(二十一歳)あたりからではないだろうか。これのB面が「冬の部屋」で、これまでのアイドル的なやや子供っぽい片想いの歌から落ち着いた大人の恋愛を歌い始めている。このあとの「故郷ごころ」のB面「春日和」は、結婚を控えた女性が、結婚そのものへの自問を繰り返しながら、『初めての人だからこの愛を信じています』とつぶやく。二十一歳の昌子に合った、とても清純な歌だ。次の「信濃路 梓川」のB面「夕焼けの空」は、失恋した女性が母親からお見合いをして結婚してはどうかと勧められるが、まだその人が忘れられなくて悩んでいる歌だ。

こうした結婚という言葉を含んだ失恋の歌は新鮮だ。その次のB面「雨の港町」は失恋した女性がその悲しみを抱いて雨の降る港町を歩く光景を歌っているが、その軽快なリズムとやや重苦しい昌子の歌い方がマッチしている。その次のB面「翼」は結婚を約束した女性が、男性に対して「あなたを信頼してどこまでもついていきます」という、男性への信頼感を歌う、とても感動的な曲だ。これらの曲は全てB面だ。当時はB面のアルバムはなく、連続して聞くことはできなかっただろうが、今シングルABコレクション、あるいはパソコンにてB面のみ集めて連続して聴くことができるようになって、これらの曲が秀作ぞろいであるのに驚かされる。これらは森昌子が二十一〜二十二歳の時の曲だ。

このあと発売されるのがシングル「哀しみ本線日本海」で、久々のヒットとなる。

この発売以降にも、B面には個性的な曲が散見される。「ふるさと日和 」のB面「手紙」、及び「寒椿」のB面「古都の春」だ。「手紙」は、二十代女性の結婚がテーマだし、「古都の春」は、結婚を間近に控えた娘と父親の心情を歌っている。とても情感的に歌っている。このあたりの曲はA面を連続して聞くより、B面ばかり集めて聞いたほうが、よっぽど感動する。


ブログ28.20代、きれいな女になっていく森昌子

森昌子の歌を聴いていると、女が主題である歌が多いように感じる。あるいは、森昌子自身、女になろうと考え続けたようにも感じる。十代の歌は、それほど色気は感じないが、女であることをとても自覚している。そして女心を理解しようと努めている。

二十代になると、理解しようと言うのではなくて、女そのものになろうとしている。そして表情や歌声や動作などがほんと女らしくなっていく。女は自然に女になるのではなくて、自分の意思で女になるのだなと思う。その女の姿は、三十年の時が過ぎても、なお光彩を放っていて、私の心をつかむ。十代の『たわし頭』の娘が大人の女になっていく。それは時間の経過だけでなく、自分の意思として、歌手として、自覚して、声や表情、動作までも変えていく。その移り行く姿はとても鮮やかだ。女になっていく姿はとてもきれいだ。そして彼女が理想に思っているような女性になって引退し、結婚し、子どもを育て上げる。

  森昌子の魅力は色々あるのだろうけど、女になろうとする、あるいは女であろうとすることを歌手としてあるいはひとりの女性としてまざまざと見せ付け引退した人ではないのかなとも思う。だから、皆の心に「越冬つばめ」のきれいな声が森昌子の印象として残っているのではないだろうか。


ブログ29.森昌子の演歌は結婚適齢期の女性心理の表現

二日前、森昌子の歌BEST二十を書きましたが、これはどうも片手落ちな感じがしました。というのは、やはり演歌を触れずに森昌子を語れないと思うからです。取り上げた曲は十代の恋心を歌った曲が多く、こればかり聞いていると辟易(へきえき)としてくるからです。かといって、彼女の演歌ばかり聞いていると、これも辟易としてきます。彼女の最大のヒット曲である「越冬つばめ」や「哀しみ本線日本海」は過去において聞いた記憶があるからか、潜在意識として残っているからなのでしょうが、聞いても新鮮味が無いですね。僕が彼女の演歌として好きな曲は、ポニーキャニオン移籍後のシングルコレクションABに含まれるB面の曲です。僕は特に、パソコンでB面のみ集めて聞くことが多いのですが、最初の曲からして、すばらしい曲が並んでいます。これらの曲は、演歌と言えるか言えないかの中間的な曲です。二代前半から半ばにかけての結婚適齢期の女性の心理を歌った曲に、秀逸なものが多くあります。例えば、「夕焼けの空」は失恋した娘に母親がお見合いを勧める話です。とても綺麗な歌です。「手紙」は一年前に旅行した友人が突然婚約したという手紙を貰い、取り残されたような寂しさを感じながらも、これからも変わらず一緒に過ごしていきたいという気持ちを手紙に託した曲です。女性の綺麗な心理を丁寧に表現しています。「古都の春」は結婚を控えた女性が、父親と鎌倉を歩きながら、昔父親に背負われた記憶を懐かしんでいる曲です。このほか、YouTubeで見る「季節(とき)を抱いて」も同じような結婚まじかの父と娘のいい曲ですね。
 演歌というのは恨み・つらみの歌が多いようですが、B面はかなりさわやかです。「春日和」はその典型で清潔感のある、伸びやかな曲です。
 彼女の映像もそうなのですが、歌も、特徴的なのは清潔感ではないでしょうか。二代後半の映像を見ていますと、本当にいい娘さんって言う感じですね。結婚と言うものに憧れ、家庭というものに憧れ、恋愛と言うものにあこがれている、典型的な純朴な女性がそこにいると言う感じです。レコードも映像も三十年も前のものですが。

YouTubeから

     シングルB面   (シングルA面)

1、冬の部屋(ためいき橋)

2、春日和 http://youtu.be/rX_t669jKOI(故郷ごころ)

3、夕焼けの空 YouTubeになし(信濃路 梓川) 

4、雨の港町 http://youtu.be/hHXpfw-m1T0( 波止場通り港町

5、翼 http://youtu.be/EfJfrbEcpjQ(北寒港)

6、妹 YouTubeになし(哀しみ本線日本海)

7、花暦 (シクラメン)https://youtu.be/1P1yzUHkbK8(鴎歌)              

8、手紙(B面) http://youtu.be/vwIZkd3-whY(ふるさと日和)

9、紅花になりたい http://youtu.be/2HfkmoM4Jjw(越冬ツバメ )

10、古都の春 http://youtu.be/jpd_udrrt-8(寒椿)

11、涙雪 https://youtu.be/RCB42uUoCtg (紅白) https://youtu.be/CR9l6WZPsRQ(ほお紅)

12、駅 https://youtu.be/1O9TkOggpB8(恋は女の命の華よ)

13、恋きずな https://youtu.be/LEtDqlUOZUg (愛傷歌)

14、二人づれ  https://youtu.be/fb-mAUmyq8k (孤愁人)

15、幸せありがとう YouTubeになし (いつまでも〜愛彩川〜)

16、雁来紅 YouTubeになし(ありがとう〜雛ものがたり〜  

17、涙暦 https://youtu.be/vmpD-5PoB1c  (そして、今…哀しみの終着駅)

18、初秋 https://youtu.be/uS3tnxkwZew (〜さようなら〜)



ブログ30.異性への信頼感を歌う、「翼」

この歌は若い女性の男性への信頼感を歌っている。現実はどうだかわからない。でも、女性と言う性は、異性に対してこういう信頼感を抱いているとすれば、それはすばらしいことだし、それこそ人間性の発露だろう。曲がやや単調だが、歌詞がとても良くて感動する。こういう信頼感に根ざした愛こそが、若いときの愛かもしれない。
 「翼」(一九八一年、二三歳)は「北寒港」のB面。作詞、橋本淳、作曲、中村泰士。次の曲が「悲しみ本線日本海」。レコード会社を変わり、なんとかヒット曲を飛ばそうと奮闘している時の曲だ。この時代は、まだ歌に力強さを感じる。


 YouTubeから
森昌子 翼(つばさ)   https://youtu.be/OWTA_wG2FPE

ブログ31.「手紙」について

森昌子の「手紙」を聴いていると、連れ合いとその友人の二十代後半のことが思い浮かばれる。
 女同士の穏やかな付き合い。信頼の深い友情。結婚と言う目標に向かって、それぞれが結婚相手を探しながらも友情を続ける二人。
 そして同じ頃に、それぞれが恋愛し、結婚し、家庭を持つ。
 そして、それぞれが、家庭のこと、だんなのこと、子どものことを話しながら、年を重ねていく。ゆったりとした、穏やかな幸せな頃の日々だ。
 この歌は、そういう、結婚前の穏やかな、女性の日々を感じさせてくれる、いい歌だ。
(
「手紙」は「ふるさと日和」のB面に入っています)

YouTubeから

手紙(B面) https://youtu.be/vwIZkd3-whY 

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