2−14、再デビュー後の歌を楽しむ


森昌子は、二〇〇五年四月に森進一と離婚し、翌年二〇〇六年六月に再デビューを果たす。再デビュー曲はシングル「バラ色の未来」(二〇〇六年六月)で、昔からのファーンの支持も得て売上もかなり伸びたようだ。その後、年に一枚程度の割合でシングルCDを発売し、現在十枚目のシングル「惚れさせ上手」(二〇一五年三月)を発売中だ。この間にも、新しくレコーディングしたアルバムを三枚出しているが、カバー曲や若い時の持ち歌を吹き替えたもので、全くオリジナルなアルバムは出ていない。

 再デビュー後の森昌子の活躍は多岐にわたっている。テレビやラジオ出演を積極的にこなすと共に、コンサートを毎年、全国的に行っており、東日本大震災の時には被災地をめぐって慰問コンサートを行い、避難している人々を勇気づけたり、台湾へも義援金のお礼にコンサートを行っている。また、子宮頸がんを患い、手術によって快方したことから、自分の経験などをメディアへ積極的に伝えている。


ブログ81.森昌子の歌は長編の「純恋愛小説」の傑作だ


彼女の歌は恋の歌が多く、失恋や片思いが主流で、とても泣かせる。また、そこに先生や同級生、お父さん、お母さん、おばさんが出てきて彼女をもり立てる。彼女の歌はまるで長編の純恋愛小説を読むようで、聞くものを夢中にさせ、若者の切ない恋の世界へ聞くものをいざなう。これはまさしく恋愛小説の傑作だ。この小説は彼女が結婚を手に入れたことで、ハッピーエンドで終わる。だが人生は皮肉なもので、彼女の長編小説は第二部に続くのだ。せっかく第一部で自分の夢を手に入れたのに、第二部ではそれを捨てて青い鳥を追い求めることになる。彼女は果たしてどこへいこうとするのか。青い鳥は果たしているのか。森昌子の書く、第二部に目が離せない。


ブログ82.森昌子の新曲「人生に乾杯」を聞いて

この歌は離婚した女性がその立場を超えて、再び十代の甘酸っぱいロマンを求める女性に回帰し、そのことを自分で宣言し、謳歌している歌だ。離婚の話しはもういいし、子どものことも聞きたいとは思わないし、まして母親の立場の歌もいい。そうなると、やはりこの歌は、時機を得た歌なのかもしれない。

  歌を聴いていると、森昌子の心情がこういう心情なのだろうと思う。私が好きな十代の曲が、やはり片思いの曲なのだけれど、新曲は誰かを片思いするというより、皆に恋をしましょう、ロマンチックに生きましょうとけしかけている。と言うことは、森昌子自身がそうありたいという願望なのだろう。

これからは、こういう一般的な曲と同時に、もう少し人生の辛酸を内包した、心の傷を癒してくれる歌も歌ってほしい。

『きれいな服着て出かけましょう 赤・青・黄色、どの色も 心に花を咲かせてる』。軽いね。難しい言葉よりこういう軽めの言葉をわざと選んでいるのかもしれないけど。次は、軽くても深みのある言葉を使って欲しいね。仲宗根美樹の「川は流れる」の出だし、『わくらば(病葉)を今日も浮かべて…』と言うわくらばと言う言葉。歌全体の雰囲気を表わした、いつまでも記憶に残る言葉。

何かそういうところに大人の雰囲気を出して欲しいですね。十代とは違った言葉使い。それがつらい思いをした大人の歌の様な感じもします
YouTubeから「人生に乾杯」 https://youtu.be/wSQlJZRa5w4 


ブログ83.森昌子の歌「あなたから歩いて」を聞いて

人にはいろいろな理由で、好きな人や別れたくない人と別れなければならなくなる。また、本当に別れたくてどうしようもない人もいるだろう。その理由は、いろいろだろうけど、ある面似ていたりする。森昌子が離婚した理由など、特に興味はないけれど、歌にして歌えば、それはそれで面白く聞ける。

  森昌子が歌う「あなたから歩いて」(二〇一二年十二月、「人生に乾杯」のB面)は、現代の離婚理由の一つを言い当てているのではないかと思う。そして、森昌子自身の離婚理由の一つが、ここにあるのではないかと思うのだ。

  歌では、次のようなことを歌う。

 「私 話すことは何もなくなった 思い出なら街の灯りほどあるけれど」

 女ってきついなと思う。でも、これは偽らざる気持ちなのだろう。話したい気持ちがなくなれば、それは愛情が失せてきていることだし、愛情があれば、いくらでも話したいだろう。そして、思い出だけでは、夫婦はいつまでも夫婦でありつづけることができないということなのだろう。マンネリでは、森昌子のような女性は夫婦で有り続けることが出来ないのだろう。

 「私も探しましょう 私の道を」

そして、森昌子は自分の道を探し始めるのだ。あなたはあなたの道を、と言って。

でも、僕はこうした歌が好きだ。こうした歌を聴くことで、自分の過去を振り返り、反省するからなのか。あるいは反省しようと心のどこかに思うからなのか。
YouTube
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森昌子「あなたから歩いて」 http://youtu.be/nWp27_36SWQ


ブログ84.森昌子「時の過ぎ行くまま」を聞いて

森昌子の新しいアルバム「時の過ぎ行くまま」を聞いた。現在五十五歳。色々な思いをこめて自分の来(き)し方を振り返りながら、詩を作り、映画のテーマ曲を歌っている。このことは自分の過去を振り返り、再認識する上からも、必要なことだったのだろうと思う。森昌子が歌手生活の中で、何を思い、何を考えて歌ってきたのか、少し垣間見れる。詩と曲がセットになっている。でも、曲は曲でまとめて聞いたほうがすっきりしそう。詩はやはり恋愛の詩が多い。恋愛への思いは、若いときから変化なく、今も続いているようだ。離婚して後も、そう変化はなさそう。と言うのも、歌詞も同じようなテーマが多い。

 歌は宝塚歌劇の女性が歌うような歌い振りが二〜三曲あり、その他は少ししわがれた声だ。年を取れば致し方ない。十代の美声を望むべくもない。でも、その年齢に応じた味わいがあってもいいと思うのだが、それほど味わいがあるとも思えなかった。その中で、私がいいと思った曲は、「ブーベの恋人」と「太陽がいっぱい」。昌子らしい声の出し方をしていると思う。

こういうアルバムは森昌子の歌手生活の中で、あってもいいものだと思う。年齢を積み重ねたものが感じる人生の哀歓、切なさだ。コーヒーを飲みながら、過去のいろいろなことを振り返るのも、人生の楽しみだと思う。


YouTube
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森昌子 「時の過ぎゆくまま」 https://youtu.be/aPF49G9fHAM 


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