2−1、声のすばらしさを楽しむ

森昌子の歌手としての特色を上げれば、それは声の綺麗さ・美しさだろう。綺麗さ・美しさとはどういう事かといえば、それは聴く者にとっての心地よさ、声の線の繊細さ、濁りのなさ、透明感そういうものだろうか。音楽に詳しい人ならもっと違った表現ができるのだが、残念ながらそういう知識は持ち合わせていない。その声はいつも綺麗だと言うわけではなく、強く心に響いてくるときもあれば、なんの感動もなく、通り過ぎる時もある。しかし、おしなべて綺麗だと思う。

 その声は、十代、二十代を通じて全て綺麗というわけではない。デビュー当時の「せんせい」を歌っている声は、綺麗とは言えないし、感動はしない。綺麗という感じを受けるのは高校一年生の「下町の青い空」や「おかあさん」の歌あたりから、十八歳の「なみだの桟橋」を歌う頃までだ。丁度高校生の期間と卒業後のしばらくの間だけだ。この期間は、デビュー当時の学園三部作と言われる「せんせい」、「中学三年生」、「同級生」ほど爆発的にシングルレコードは売れなかったものの、十万枚以上を連続して売り上げ、花の高校生トリオとして山口百恵ら共に最も活躍していた時期だ。また、森昌子が意欲的で、前進的で、その才能を開花させ、将来を嘱望された時でもある。一方で、超過密スケジュールから心の中では歌手であることの嫌悪感をつのらせ、歌手を辞める決意をさせる時期でもある。

この時期はアイドルとしてPOP調の歌をヒットさせているが、その一方、舞台やアルバムでは演歌を歌っている。そしてその演歌に森昌子を特徴づける「声の美しさ」が表現されている。
 
ここでは、まず十六歳の高校一年生の時に発売されたアルバム「十六歳の演歌」及び「おかあさんに捧げる詩(うた)」と十七歳の高校三年生に発売されたアルバム「十七歳の演歌」から取り上げよう。これらのアルバムの歌声はやや単調であり、趣に欠けるきらいがあるが、声そのものには透明感と哀愁感があり、昌子の特徴を最もよく表しているといえる。


ブログ1.森昌子について


 YouTubeで、森昌子の動画にはまってしまった。彼女のイメージは「せんせい」を歌っていた時のように、なんだかサルに似た髪形で、とても美人とはいいがたかった。しかし、今彼女の歌声を聞いているととても清らかで美しい。しかもとても日本的で「美人」である。これまでのイメージとYouTubeで見せるその美しさの差異の大きさ。実際本当か、目を疑いながら映し出される映像を凝視して、鼻の大きさやほくろの位置、髪の生え際、目の形、顔の輪郭などを比べました。YouTubeの動画には親切にも録画された年代が記載されていて、色々な年代の森昌子が映し出されていました。そして今もまだ引きずっているのですが、年代(年齢)ごとに、その歌声が変化し、顔つきも変化し、一人の女の子が娘から大人の女性に代わる変化を見事に映し出しているのです。ただ、顔の形だけなら、そんなに驚きもしないでしょうが、彼女の歌い手としての表情の豊かさ、やさしさ、声の美しさが女性らしさへの変化とあいまって美しいハーモニーをかもしている感じなのです。いわゆるアイドルであった女性の、テレビでは映し出すことができなかったYouTubeだけでみられる時々刻々の変化です。その中で一九八一年ごろの彼女の表情は、明るくさわやかである。それ以前の彼女は声に張りがあって、とてもすばらしい。一九八一年を過ぎてからはとてもやさしく、透き通るような声になった。倍賞千恵子の「北上夜曲」は一番上手い。森昌子の「北上夜曲」は「これは何だ」という感じで、とても不思議な感じを抱かせる歌い方である。


ブログ2.十代の森昌子の透き通るような歌声

今日は勤労感謝の日で休み。国土地理院の簡単地図サイトで地層断面図の区域図を作成していて、森昌子の「北上夜曲」と「川は流れる」を聞いていたら、涙があふれてきた。What beautiful voice! そう、美しすぎる。十五,六歳でこんな歌い方をされたら、中高年の男はどうすればいい。涙を流すしかないじゃないか。でも、私はなんと泣き虫になったことか。泣いてばかりいる。


ブログ3.10代の演歌ー機械のような声の森昌子

森昌子の歌の魅力って何だろう。彼女は国民的アイドルと言われながら、「せんせい」を歌う歌手、あるいは演歌歌手として、あるいはきれいな声の持ち主としてしか、認識されておらず、その隠された歌のすばらしさ、声のすばらしさをほとんどの人が知らないのではないだろうか。彼女の歌の領域がどれほど広大で、奥深いことか。誰が、森昌子に、十代でこれほどのすばらしいアルバムが出版されていたことを知っているだろう。誰が、演歌をこんな声で歌っていることを知っているだろう。

私が初めて森昌子の声に触れたのは、二年余り前、「川は流れる」と「北上夜曲」だ。彼女が歌う「川は流れる」は彼女の歌い方を端的に表わしている。それは坦々と歌う歌い方、情感をこめない歌い方。こうも言えるだろう。楽器のような歌い方。機械のような歌い方。それは演歌であって、演歌でない。なぜなら、そこには十六歳の少女には、そういう人の世の中が実感として理解していないから。

でも、不思議なのだ。彼女の場合、情感ではなしに、声で歌うのだ。ヴァイオリンが奏でるように。その声は、機械に近いかもしれない。人の声ではなくて、機械のような声。機械がガナリ立てるような声。その機械音が、これまでの人の声にはない心を揺り動かす声に聞こえるのだ。もしかして、LPレコードの製作技術なのかもしれない。でも、これ以前にも、これ以降、いままでこういう声は聞いたことがない。

時折、きれいな声の持ち主が、テレビ番組に出ているが、そういうきれいさではない。ガナリ立てるきれいさだ。

でも、この声は続かない。十九歳前後に消え去ってしまう幻の歌声なのだ。今歌っている森昌子は、この声が消え去った後の、森昌子だ。

私は、第二、第三の森昌子が出て来て欲しいと思う。機械のような声を出せる人。情感ではなしに、声で歌える人。そういう人が出てき来て欲しい、と森昌子の十代の演歌を聴いていて思う。

YouTubeから

「あの丘越えて、潮来の花嫁さん、この世の花」 http://youtu.be/k5hpG07wKvc 

 アルバム「十七歳の演歌」より

「哀愁海峡」 http://youtu.be/S02DJNzd2Do 「月よりの使者」 https://youtu.be/Qisg2O_t8O4 

「お月さん今晩わ」https://youtu.be/Hh351kp9Z_k 



ブログ4.子供から少女への過渡期のアルバム「おかあさんに捧げる詩(うた)

森昌子の十六歳のアルバム「おかあさんに捧げる詩(うた)」(一九七四年十二月)を聞いた。母をテーマにした一つの物語風の構成で、田舎や下町を舞台に子供やお父さん、おかあさん、赤ちゃんが出てきて、歌の合間におしゃべりする。シングルレコード「下町の青い空」の歌の中に電車が走る音や店屋のおじさん、おばさんの声が出てくるのと同じだ。それの拡大版のようなアルバムだ。

このアルバムに含まれる「下町の青い空」の歌い方は、今のCD版の歌声とは少し違っている。歌い方や音楽がとても素朴で、優しくて、少し舌足らずで、子供っぽさが残っている。

一方、「時には母のない子のように」や「島原地方の子守歌」はもう子供を抜け出して少女あるいは大人の歌い方になっている。

 「ママに捧げる詩」はきれいな、のびやかな声と哀感漂う歌い方で、説得力がある。「愛する人に歌わせないで」は森山良子のカバー曲で、戦争で父親を亡くした母娘の歌だ。この歌い方もきれいだ。十六歳の少女が歌える、最大の気持ちをこめた歌い方だろう。こうした反戦歌や社会的な歌をもっと歌ってほしかったな。

これらの歌は、この二ヵ月後に発売される「十六歳の演歌」の歌を彷彿とさせるものだし、子供から少女への過渡期の特徴的なアルバムともいえるものだろう。

YouTubeから

1、下町の青い空(CD版、レコード版なし)http://youtu.be/7KoWSRGwfjs https://youtu.be/9haFT_1qlj0 

 https://youtu.be/A66IkNr8SPU     

2、島原地方の子守歌 https://youtu.be/q7_hd17Vnz8 https://youtu.be/7evY6JUcVF0 

3、時には母のない子のように(森昌子なし) カルメン・マキ https://youtu.be/kqi6jpRljjI 

4、ママに捧げる詩 http://youtu.be/LV6IPYJ-D58 ヘイリー http://youtu.be/tIyO2NP_4yM

5、愛する人に歌わせないで  http://youtu.be/IwXwWKpKBC0 森山良子https://youtu.be/xY-KOVibEGE

6、おかあさん   https://youtu.be/6d9UlIc8t9o  https://youtu.be/UICbG2u2gGA 

YouTubeから

7、りんごの花が咲いていた http://youtu.be/1GVX9ZZv12k  



ブログ5.森昌子、高校1年生の歌声(演歌編)

私が森昌子の歌を聴いて、大人でも聞ける、と思えるのが高校生になってからの歌だろう。やはり、中学生時代の歌は、子供っぽい感じがする。高校一年生のアルバム「お母さんに捧げる詩」(一九七四年十二月)は聞き応えのある少女から大人の歌だ。

このアルバムの中で、「りんごの花が咲いていた」と言う演歌調の歌をとてもすばらしく歌っていた。だから、出るべくして出たといえるのが二ヵ月後のアルバム「十六歳の演歌 他人船他」(一九七五年二月)なのだろう。このアルバムはまさしく遠藤実によって育てられた森昌子の演歌の基盤をなすものだろう。一方では、シングルではPOP調の歌を歌っている。

  なぜ、基盤なのか。それは大人が聞ける歌であり、大人の情感に近いものであり、大人の琴線に触れるものを、十五、六歳の少女が初めて歌っているからだ。そして、少女らしくとてもきれいに純粋に歌っている。私は前に、アルバム「十七歳の演歌」を含めて、彼女の歌声を機械音、あるいはヴァイオリンの音と表現したことがある。

  それはその当時そう思っただけで、気分は色々移り変わる。この一年間、ほとんど出張続きで車の中で聞くことが多かった。今は家の中やその周囲だ。多分聞く場所によりいろいろに聞こえるだろう。


YouTube
から

T、アルバム「十六歳の演歌 他人船他」

A面

1、他人船 http://youtu.be/JdeLXUmEpeE  http://youtu.be/5lg6ruieEN0  (高校二年生)

2、白い花の咲く頃  https://youtu.be/osCfNA8Bwfg https://youtu.be/BPinvBdSFXk 

3、川は流れる YouTubeになし(仲宗根美樹 https://youtu.be/3O5zNfaC7kI )

4、東京シューシャイボーイ http://youtu.be/pLmOu-C8fPY 

5、月がとっても青いから http://youtu.be/O6HsUhY4Yxo 

http://youtu.be/OnCoxWrV8-Y (二一歳頃?の動画) 

6、下町育ち  https://youtu.be/Dfjj1O__j3s 

 B面

7、潮来の花嫁さん https://youtu.be/LV5Za8MxPig  (高校三年)

http://youtu.be/PYntSt8gliI (高校三年卒業時のライブ録音、とても綺麗な声)  

8、江の島悲歌(エレジー) http://youtu.be/CjDIDIuh-jM  

9、北上夜曲 https://youtu.be/0oSP0flaig8 

10、あの娘が泣いている波止場 http://youtu.be/bVAuPtf9Azk (高校三年生位?)

11、東京見物 YouTubeなし https://youtu.be/KkCDG_5EzDc(三橋美智也)  

12、涙を抱いた渡り鳥 http://youtu.be/2gYio_o2kus  https://youtu.be/prlXsog83Ls (水前寺清子)


ブログ6.森昌子が歌う「17歳の演歌」の世界

歌手森昌子にとって、高校二、三年生は最も充実したときではないだろうか。その時代を演歌を中心に振り返ってみたいと思う。

「十六歳の演歌」は高校一年のときのアルバム。だから、「十七歳の演歌」は高校二年生の時だと思っていたのだが、実は高校三年生の七月発売だ。だから満十七歳には間違いないが、「十六歳の演歌」の発表後、一年半が経っている。

私は「十六歳の演歌」を森昌子の基盤をなすものと言ったが、「十七歳の演歌」も同じ位置づけだ。それはそれほど歌の気持ちに入り込んでいないようではあるけれど、声が魅力的で声により歌の雰囲気を歌っている。それは無機質な機械音であったり、また、ヴァイオリンの音色のように心に響く。二十代の演歌に食傷気味になると、これらの演歌に戻ってくる。それはどうしてだろう。やや無味乾燥ながら、これらの歌が演歌と呼ばれる前の歌であり、歌謡曲の原点のような、日本的な哀調を含んだ雰囲気を持っているからだろうか。それを森昌子がそれほどの感情をこめず淡々と歌いならも、彼女の持つ優しさのようなものと共振するからだろうか。

もし、十六、十七歳の演歌がなければ、森昌子と言う歌手の魅力もかなり減少するだろう。これらは一つの独立した「演歌の世界」を歌っていると思う。
YouTube
から

アルバム「十七歳の演歌」(一九七六年七月)より 

A面

1、連絡船の唄 https://youtu.be/8rnxaJb9Fe4  (代の歌がありませんでした)

2、親子船唄 http://youtu.be/8RW_NNcOEDI 

3、別れの一本杉 http://youtu.be/lrHHmtUxzUo(動画)http://youtu.be/AMl9ywY3g0A(レコードの録音)

4、あざみの歌 http://youtu.be/T-51tQXaKNk 

5、月よりの使者 http://youtu.be/kEdCsqG1OmM 

6、哀愁海峡 http://youtu.be/wSjNsq5wf2s (動画)

https://youtu.be/x7gXT3Nmi_Q (この歌のイントロがとても印象的)

B面

7、ああ上野駅 http://youtu.be/mgH59RUmaKY https://youtu.be/9ZOvaYYFD48(動画)

8、お月さん今晩は http://youtu.be/Hh351kp9Z_k(レコードの歌声はさらに素晴らしい)

9、アンコなぜ泣くhttps://youtu.be/8Hz7fnxBtm4 (アンコって何なのでしょうか)

10、田舎のバスで YouTubeになし 11、だから言ったじゃないの  YouTubeになし

11、高原の駅よさようなら https://youtu.be/Lu_pVc3icIQ  


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