動物園
インドにおいて動物園は、日本的感覚からすると、意外と非日常的な体験のできる場所である。大きな主要都市には必ずあるのだが、もちろん対象は地元の子供たちだから、日本の様に凝った作りにはなっていない。たくさんの動物達が無造作に檻に入れられているだけである。
が、しかし、それがどことなくおかしいので、なんともたまらない面白さがインドの動物園にはあるのだ。たとえば、鳥のコーナーがあるとする。もちろん孔雀などもいるが、何の変哲もない「ニワトリ」なども檻に入れられて並んでいる。そしてその檻の前にこぼれた餌をちょうだいしようと、赤や緑のものすごくきれいな見た事のないような野鳥が群がってくるのだ。「檻の外と中が逆ではないか?」と思えるのだ。
また、蛇のコーナーでは、どこでも見れるニシキヘビなどが檻の中でぐったりと寝ているが、その横の雑草の繁る空き地には看板が立っており「危険、コブラが出る」と書いてある。「おいおい、インドではコブラは日常的かも知れないけど、俺達外人には珍しい蛇だぞ。それに危険だぞ」と突っ込みをいれたくなる。
また、世界中で十数頭しかいないものすごく貴重な色の白いホワイトタイガーが熊の檻の横に、これまた無造作に普通の檻の中に数頭入れられている。日本で言えばパンダやコアラなどの、ガラス張りの空調付のりっはな飼育舎に入っていてもおかしくないインドを代表する貴重な動物のはずなのだが、雨が降ると雨にさらされる小汚い檻に入れられたりしているのだ。
まあ、たしかに象や猿やラクダやリスやコブラや色鮮やかな野鳥などはいたるところで見られるし、密林に入ればサイやトラやインド象もいる国だ。日本で熊が出たというニュースがあるが、そんな感覚でトラが出たりするのかもしれない。
キャメルウオーク・エレファントウオーク
ただ、もし動物園に行ったらぜひ尋ねてほしい「動物に乗れますか」と。と言うのはラクダや象に乗って園内を回るイベントをよくやっている。ほとんどこ乗客は子供たちだが、その子供たちと一緒になって、キャメルウオークやエレファントウオークを味わって欲しい。ラクダの背中に乗ると、けっこう地面から高いので、歩くたびにユッサユッサと前後に揺られるのだ。揺れるたびに子供たちはキャキャと悲鳴を上げて笑う。像にしてもしかりでこの体験はインド旅行において非常にユニークな思い出となるだろう。しかもとても料金が安い。ぜひ体験することをお勧めする。
カトマンズで会った医療のボランティアで来ている日本の女性が、地元の人に勧められて野生動物地区で象に乗ってサイ狩り(見るだけ)に連れて行ってもらったが、確かにサイは見れたが、象の背中にまたがって何時間も乗ったため、「その後数日、股関節脱臼でまともに歩けなかったわ」、と話してくれた時は笑ってしまった。象の背中に直接乗ると、背中がとても広いのだ。こんな事は実際体験しないとわからない。
個人的なおまけ
フォークソング界で有名だった西岡恭三さんという人がいた。ディランセカンドというグループの「プカプカ」という曲を聴いた人も多いだろう。またNHKの”みんなの歌”で「町行き村行き」という歌を聴いた人もいるだろう。そして矢沢栄吉さんの「トラベリングバンド」やいくつかの彼の曲を作っていたのも西岡恭三さんである。
彼は海外旅行に行くためよく私のいるTICを利用してくれた。彼は出身が私と同じ三重県なので親しくしてくれた。彼の奥さんのクロチャンは海外の動物園に行くのを楽しみにしている人で、私と動物園の話で盛り上がったものだ。そのクロチャンを病気で亡くされ、その後恭三さんも彼女の後を追って自殺されてしまった。子供のできなかった夫婦にとって最愛の奥さんを亡くされたことに耐え切れなかったのかもしれない。その葬儀には忙しいスケジュールをあけて矢沢栄吉さんも列席されたとニュースで見た。惜しい人達を亡くされた。ご冥福をお祈りします。