インド風土記 その3(全5回)

電 気

電気料金は割合高くて、日本と同じ位です。夏場はマンションも24時間・5ヶ月間クーラーをつけっぱなしなので、月3万円はかかります。停電は1日に10〜20回ありますが、日本人の住むようなマンションは停電時に自家発電をしてくれるので困ることはありません。一般家庭では復旧に20分、30分とかかりますが、じっと待つしかありませんので、一軒屋の富裕層は停電時に小さな自家発電機を使っています。

電圧は200V 60Hzですが、供給電圧が変動するので、日本から持ってきた電気製品は、たとえコンバーターで電圧を合わせて使ってもよく壊れます。
玄関に配電盤もありブレーカーも付いていますが、変動する電圧に対応するヒューズですので品質が悪いです。時々横のヒューズも同時に飛んでしまい、日本に帰国している間に冷蔵庫の電源が落ちて貯蔵品が全部腐ってしまった事もありました。インドで販売している電気製品は停電を想定しているので、自動的に復帰し、洗濯機も途中で止まってもちゃんとそこからスタートします。

日本で買った製品は考慮してないので、操作を最初からやり直す必要があります。日本のビデオデッキでテレビを見ていて、5分ごとに何度も停電すると、その都度見ていた場面に戻さなければならず、たいへん苦労しました。電気製品はその国で売っている物を使うのが一番便利です。サムソンやLGは現地事情を反映しているので、インドでもよく売れています。

蛇口を右手に持ち左手で洗う 多種類のコンセント

右の写真は部屋にあるコンセントですが、3種類あり、バラバラなので苦労します。3本足のプラグと、2本足のがあり、3本でも大きいのと、小さいのがあります。
日本の製品ですと、それにコンバーターも必要になり、たいへん面倒です。
電気代は毎月検針して請求書を置いていきますが、払わない人も多数います。マンション管理組合が電気会社に肩代わりして払っているので、2年に1度他人の未払い分を均等割りして請求してきます。払わないと電気を止められるので、結果的に払わされてしまいます。

水 道

水道水はたいへん品質が悪く、そのまま飲む事はできませんし、またお風呂もバスタブに湯を入れてゆっくり入るのはお勧めできません。駐在中はシャワーだけでしたので、帰国した時は、白塚の極楽湯に行って垢すりをして、幸せ気分を満喫します。

電気と同じ様に断水もあり、水圧が低いので、一度屋根のタンクに入れてから使います。少し泥も含んでいますし、バクテリアの宝庫ですので、直接飲むと2時間後にはトイレから出る事ができなくなります。出張者でじっと便座に座りながらTVゲームをしていた人や、入院点滴をして車椅子で成田まで帰った人もいました。

食器等は簡易浄水器を使います。飲み水はペットボトルを買ってきますが、飲んでも大丈夫なだけで、日本の水道基準はクリアーできてないみたいです。大好きなざるそばは、茹でたあとに冷やす必要があり、冷水を確保するのがたいへんなので、駐在中は作りませんでした。日本レストランでも状況は同じですので気をつけて下さい。生野菜は当然危険ですが、レストランの刺身に付いている大根のつまも要注意です。
赤痢は普通の病気ですので、日本のように隔離はせず、工場に出社して来て俺は赤痢だと言っている従業員も居ました。

デリーの水源ヤムナ川
タジマハールを通ってガンジス河に流れています
天井に設置された黒い水タンク

最初に書いたように気温50度の中で、水道水をタンクに貯めるとどんな状況になるか想像できますか。タンクの水が温まってシャワー温度が40度以上になりそれ以下にはできません。電気代の節約になるのでありがたいと前向きに考えるようにします。
あまり雨が降らないのに水が無くならないのは、聖なるガンジスがヒマラヤからたくさんの地下水を運んでいるのではないかと思いますので、神に感謝です。 

道 路

道路はあまり整備されていません。道の作り方が幹線を中心にアバラ骨の様に分かれてその先は行き止まりですので、常に幹線道路が渋滞しています。自宅マンションから会社までの距離は70km位ですので、朝の通勤は1時間10分で着きますが、時々渋滞があります。最悪記録は1度だけですが、3時間たっても20kmしか進まず、その日は出社をあきらめてマンションに戻りました。インドでは渋滞予想はできないので、お客さんのアポイントは午前、午後各1ヶ所にしています。

自分の都合で遅れる時もあり、その時は渋滞のせいだと嘘をつくこともあります。 信号もありますが、1年を通して1〜2ヶ月は故障していますので、それも渋滞の原因です。 日本のテレビニュースで道路が渋滞しているインドの映像がありますが、街中はいつも同じような状況です。

郊外では幹線道路から10m離れるとデコボコ道なので、成田に着いてリムジンバスに乗って高速道路を走っていると、あまりの静かさにびっくりします。道路にへこみと穴ボコが多いのは、砂地と土の上にアスファルトを設置するので、割れ目から雨が入り、土台の砂がなくなってすぐに陥没して穴になり、それが大きく拡大していくからです。日本の土木技術の高さには、改めて敬服します。

デコボコの道ですが、トレーラーも通ります 幹線道路の料金所
オレンジがETCレーンですが、なぜか現金も払えます

鉄 道

鉄道網はしっかり発達しています。線路幅は世界標準で(近鉄、新幹線と同じ)長距離はディーゼル機関車が引っ張っていますが、都会は電車です。遠くに行くときは個室を予約したりしますが、乗車してもどこの部屋なのか分かりません。号車指定はありますが、毎回車掌が部屋番号を決めるので、乗車後は車掌が来るまで20分程待ってからやっと座る事になります。

基本的に機関車が足りないので、なかなか貨物輸送まで廻らず、全体的に旅客を優先で時刻を決めています。
信号システムもあまり整備されていません。踏切では人が列車の来るのを見て遮断機を下ろしていますので、よく衝突事故が発生します。
昨年、野田総理大臣がインド政府と高速鉄道整備の約束をしましたが、もっともっと基本的な事から整備する必要があります。最初に書いたしっかり発達した鉄道網とは、「線路はインド中に広がっています」の意味で、質の面ではまだまだです。