インド風土記 その2(全5回)
駐在員の基本的な生活パターン
仕事で駐在している人はほとんど同じ様な生活をしています。
高級アパート(3LDK以上)に住んで、通いのメイドを雇い、掃除、洗濯、食事を作らせます。御家族で来られている家でも週3日とか契約でメイドを雇います。
会社へは社用車か専用の車に運転手を付けて通勤しますが、たいへん交通事情が悪いので自分で運転する事はありません。在宅の奥様も公共機関での移動は安全上問題ですので、少なくとも借り上げタクシーを使います。
インドは土曜日も稼働しているので、月平均25日・年300日は出勤します。日本の様な長期連休はありませんが、インドの駐在は他国とは違って、休暇で年2回家族と日本に帰れるのが一般的です。
勤務時間は9時〜18時が普通ですが、家に帰るのは毎日20〜21時の間です。夜は飲みに行く店もありませんので、毎日健全な生活をしています。パキスタンのようにイスラム圏ではないので、お酒が飲めるのは助かります。
またゴルフ場もあり、18ホール 5,000〜8,000円でプレーできますが、夏は暑くてホールごとに水を飲んでいないと脱水症状になるのでたいへん過酷です。
昔から女性が男性にサービスする習慣がないので、ゴルフ場のキャデーも会社のお茶係も男性ですし、レストランでも基本はウエイターだけです。少しずつは開放的になってきて、日本or韓国レストランにはウエイトレスもいますが、まだまだ特別です。
日曜日も行く場所が限られてきますので、出かけると知り合いの日本人によくお会いします。今までは3年位が駐在期間の目安で、それ以上居ると古株になってきましたが、最近は4〜5年が標準です。全日制の日本人学校もあり、中学3年までは日本と同じ教育が受けられますので、家族連れでも問題なく生活できますが、私設学校なので授業料とスクールバス代で月9万円位かかります。生徒のレベルは親がそれなりの役職に居る人ばかりなので、都会の学校並みに高いですよ。
食材と物価
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露天で売っている鳥 |
ヒンズー教では牛は神様ですので、腫れ物に触るように大事にします。道路を歩いていても、クラクションを鳴らさずにじっと通り過ぎるのを待っています。以前メイドが日本の料理番組で牛肉を包丁で切る場面を見いて、目をそらしていました。当然食べませんし、普通は売っていませんが、日本食材店では冷凍肉として売っています。
韓国レストランでは焼肉もあります。長年インドに住んでいると美味しく感じますが、味はいま一歩です。豚肉は外国人の集まる店屋に、同じ様に冷凍肉でありますが、インド人は食べません。
肉を食べる場合は、鶏と羊(日本ではヤギと呼んでいる種類です)です。露店では、暑くても腐らないように鳥を生きたままで売っています。鶏肉は日本のようにブロイラーではないのでたいへん美味しく食べられ、ヤギは少し臭みもありますが、人気商品です。
ヒンズー教ではベジタリアンの人が多くて、食品には ベジ or ノンベジかのマークが付いています。ベジでも厳格な人とそうでない人もあり、鶏肉は食べない、卵もだめで、野菜でも根の部分はだめで葉はOKとか、火曜日は肉を食べない等々、宗教上いろいろあるようです。
基本の考えは、魂のあるものを殺して食べるのはだめなので、魚もエビも食べません。原材料を意味しているので、日本製ですとドレッシングもダシの素もダメなので要注意です。
お土産でいただいた高級えびせんべいも嫌がります。間違って一度食べた人が指を口に入れて吐き出していましたが、体に毒でも入ったような表情でした。ピーナッツやチョコレートは皆さん大好きです。
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ベジタリアン用のマーク |
生活レベルによって物価もだいぶ違い、野菜や果物も慣れてくると安くなってきます。
なかなか微妙な発言ですが、普通の露天で売っている品物は定価がなくて、お客さんの格好と懐具合によって価格が決まります。野菜を手に持ってお金を50円用意していると50円で、100円持っていると100円になります。
でも最近、ここ5年で外国人が多くなったので、日本のスーパーと同じような大きさの店舗で、定価で売るようになってきました。キャベツが50円、ホウレン草が1束20円、ジャガイモ7〜8円で、現地の生活必需品はたいへん安い値段です。
バナナは露天では1本1円位です。冬は野菜もありますが、夏は種類も少なく、並べてある野菜も直射日光で元気がありません。買う時は、下から取り出してきます。
日本のように冷凍トラックはなく、輸送手段が限られるので、農地で作った野菜の35%は腐って捨てられているそうです。ほうれん草でも、刈り取った周りの雑草や土も一緒に売られているので、調理の前に選別から始めなくてはいけません。
夏場は果物も豊富で、マンゴーは1個30円程度なので、毎朝食べていました。
でも、日本人が必要とする食材は基本的に輸入品で、日本の値段の3倍するので、日本から戻る時は、食材をいっぱい持って来ます。
参考ですが、工場内での作業者の日当は500円/日ですので、現地物価から見ると無茶高いです。お米もネパール産を売っていますが、水の品質が悪いので、無洗米を日本から持って来ます。東京で買うと種類も多いのですが、津ではなぜか限定されてしまいます。
インド人は本当にカレーが好きで、日本人の味噌汁のような存在です。北部はカレーとナン、南部はカレーと米を手で食べるのですが、米に粘り気が少ないので指の間からこぼれてしまい、たいへん食べ難いです。
日本に帰って豆腐とサラダと漬物を食べた時は、本当に美味しく感じます。幸せは案外足元にあるのですが、あまり気がつかないものですね。
住 宅
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住んでいたマンション |
マンションからの風景、高架の地下鉄が見えます |
住んでいたマンションは外国人とか高額所得者向けなので、4LDKで月額10万円くらいします。シャワーとトイレは各部屋に付いていますし、床は大理石で入り口には警備員も配置され外観は良くみえます。
地下は駐車場で、19階建ての8階に住んでいました。インドは数字のゼロを発見した国ですので、イギリス式に地上がゼロ階で1,2,3となります。大理石の床は夏でもひんやりしているので、暑さ対策にはいいのですが、冬は足元から底冷えがするのでちょっと問題です。またガラス類を落とすと必ず割れてしまうので気をつけなければいけません。一度メガネを落としたら、割れてしまい帰国時に作り直しましたが、予備も含めて2セット作り余分なお金がかかりました。
室内は建てつけが悪く、隙間から細かい砂が入ってきて1日に2回掃除をします。各部屋エアコンをつけて夏を過ごすのですが、台所は狭くて暑苦しい場所です。普通はメイドが食事を作るので、間取りも風通しも悪い所にあり、これもカーストの影響かと思います。築9年程度でしたが、築40年の雰囲気がします。
作りの悪い例ですが、ベランダに水をまいて掃除をしたら排水口が一番高い場所にあるので、水が流れていきません。この国はあまり機能を考えて物を作らないようです。
デリー近郊の商業住宅地でしたので、ここ数年で見た目にはすばらしく発展しました。東京で例えれば、赤坂、六本木,新宿を集めた様な場所でしたので、スーパー、地下鉄(高架です)ビル、歩道(横断歩道はありません)、映画館があり休日には人が集まってきます。隣のビルには日本食レストランも2軒でき、マクドナルド(チキンバーガーで当然ビーフはありません)も近くにあります。
一方工場作業者レベルですと、田舎の集落に住んでいます。結婚式とか赤ちゃんのお披露目式に招待されて行きますが、牛と一緒に住んでいたり、土間に寝たりして、チョットびっくりします。
下の写真は郊外の商店街で室内の大きさは2畳くらいで、商店でカンバンもありますが夜は寝室になりここで寝ます。
テレビの普及率は55%位ですが、トイレはテレビより5%くらい低くて基本的には道端で行います。たとえ設置しても水洗ではなく当然くみ取り式です。
依然としてカースト制度が強く残っているので、汲み取る時に身分の低い人が家の中に入って来るのを嫌がってトイレは作らないそうです。
またペーパーは使わずに左手を使って水で洗い流します。その為にトイレットペーパーは日常品ではないので値段も高くて、スーパーでは1ロール100円の時もあり、紙も少し固めで量も少ないです。
外注さんの工場に行くと、たとえ水洗トイレでもペーパーはなく洗う為にシャワーの蛇口形式の物がありますが、我々は使わないので鞄の中にはティッシュを入れておきます。
通勤車のダッシュボードに緊急用トイレットペーパーは必需品です。場所によっては、超シンプルなウオッシュレットもありますが、水に雑菌が多いので使うのはチョットネ。鞄の中には他に扇子、本(渋滞時に車内で読みます)、パソコンを入れておきます。
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田舎の店で夜はここで寝ます | 値段の高いペーパー |