XYZ 1986年発表





ポップス・シーンに殴り込みをかけるべく自らヴォーカルを担当した意欲作

44歳にして取り組んだ初リーダー作ではあるが世紀の失敗作と称される事になる。
彼のヴォーカルの技量に問題が有ったとの指摘もずいぶんとされたが、
私個人としてはあまりにも過小評価されすぎたアルバムの様に思えてならない。
彼の玄人好みのヴォーカルをサポートするかの様に、
バック・コーラスにも重点が置かれキャッチィーにまとめられていた。
ポリス以上の商業的成功を狙いとてもシンプルなポップスに仕上げ過ぎた点が、
キラリと光る歪んだセンスを期待していたオーディエンスにとっては単調に思えたのであろう。

アンディーのソロ作品発表に際してファンが思い描いていたアルバム像が、
彼特異の上手下手ギターを全面にフューチャーした作品であった点も影響が大きかったのでは?
巧みなヴォイシングやエフェクト、ピッキングとカッティングの絶妙な対比、
ジャズ・ベースの代用コードが鏤められている音像を期待したのであろう。
私は個人的にロバート・フィリップとのコラボレーション作品である『心象表現』『擬制の映像』の、
延長線上にあるプログレ的なアプローチに満ち溢れている音を期待していた。
(『Synchronicity』に収録されていたアバンギャルドな作風の「マザー」も秀逸の出来であった)
一癖も二癖も有ってほしいと願うポリス・ファン達の思惑が生んだ世紀の失敗作か・・・。
再評価すべきアルバムの様に思います。


アルバム・セールスの伸び悩みはすなわち、
アルバム・プロデュース及びサウンド・アレンジが凡庸であった点
(当時流行のサウンドに固執した点)が最大の原因と成っていると言えるだろう。
良く言えば80年代の特徴的なアレンジ、プロデュースが施されていたと言えるのだろうが・・・。
しかしながら楽曲的には素晴らしい仕上がりになっている点を強調しよう!
メロディー・メーカーとしてのアンディー側面が全面に打ち出されている。
ポリス・ファンの方ならば、
シングル「Love Is The Strangest Way」、「Nowhere」などにポリスを感じ取るだろう。
ポリス時代には癖のある楽曲を多く書いているが、
「Murder By Numbers」「Once Upon A Daydream」「Someone To Talk To」等の、
メロディー主体の名曲も数多く書いているアンディーの一面がアルバムを満たしている。


今作の魅力はやはりブリティッシュ色の強いポップな作風、辿々しいが玄人好みの渋々ヴォーカル、
そしてメロディアスなリードを奏でるギター・プレイがさりげなく添えられている点でしょう。
つまり『XYZ』はメロディー・メーカーとしてのアンディーの魅力が発揮されている作品です。
彼の本領はやはりギターであろうが、
ソロ・デビューに際してソング・ライティング(メロディー主体)、ヴォーカルをメインに据えて、
自らの存在を世界に向けて発信した意欲作と言えるでしょう。


収録曲
・ Love Is The Strangest Way
・ How Many Days
・ Almost There
・ Eyes Of A Stranger
・ The Change
・ Scary Voices
・ Nowhere
・ XYZ
・ The Only Road
・ Hold Me

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